グラン、覚醒 その2
普段は小説を読む側のド素人が暇つぶしに書いてみた作品ですので、読者の皆様も暇つぶし感覚で気ままに読んでいただけたら幸いです。また、本業の方が忙しいときがありますので、感想や評価を読むことはあまりできないかかもしれません。ご理解いただけますとありがたいです。
「ようこそいらっしゃいました、武本伊織さん。」
目の前に立つ女性の背中から翼が生えていることに驚いていた俺は、その女性から話しかけられていることに気づかなかった。
「...はっ!、すいません。...えっと、どちら様ですか?」
「私はあなたたちの世界の秩序を維持し管理するもの、あなたたちの世界の言葉で言いかえると『神』という存在になりますね。」
「...え、神?...えええ!? ほんとに神様なんですか!?」
「お、落ち着いてください!」
「落ち着けるわけないじゃないですか!神話や小説にしか出てこないような存在が今、目の前にいるんですよ!す、すごい!...いや待てよ。今まで神様に会ったことがないから、ほんとに神様かどうか判断しようにもできないじゃないか!に、偽物じゃないですよね!?ここまで期待させておいて『実は神じゃありませ~ん(テヘッ)」っていうのはナシですよ!あなたが神様だというのなら、なにか神様にしかできないこととか証拠を見せてくださっ...ゲホゲホゲホッ!...オエ~!」
む...むせた。どうやら飛び込んでから今までの状況に自分の頭の思考は追いついていないらしく、逆にむせたことで俺は落ち着きを取り戻せたようだ。目の前の女性は少し引きながらも心配そうな目で見つめてくれている。
「す、すみません。どうやら俺はパニックになっていたようです。」
「落ち着けたのなら問題ありません。改めて自己紹介させてください。私は俗に言う『女神』として活動しています。」
「...なんとお呼びすればよいのですか?名前はないのですか?」
「私たちには名前は必要ありません。頭の中で意思疎通ができていますから。ただそうですね...私のことは好きに呼んでもらって構いませんよ。」
「え、俺が決めてもいいんですか!?」
「はい、今後同じような活動をする際に必要になるかもしれませんから、付けていただけると仕事がスムーズに進むかもしれませんからね。」
女神さまの名前を付けることができるとはびっくりだが、まさか自分が名前を付けることになるとは当たり前だが考えてもいなかったので、今から目の前にいる女神の名前を決めることになる。
んー、どうしたもんか。世界の秩序を維持・管理する神で、つまり世界の根幹にかかわる神だから...
「...ルシラ、ルシラなんてどうでしょうか?」
「ルシラですか...いい響きですね。それでは私はこれからルシラと呼ばせてもらいます。」
...ふう、気に入ってもらえてよかった。世界樹の名前ユグドラシルをもじって付けたんだけど、嫌だっていわれたらどうしようかと思ってたよ。
「それでは私の名前を決めていただいたところで話を続けさせてもらいますね。先ほどあなたは私が本当の神なのかと言いましたが、確かに翼という点だけで考えるとあなたにとってはどちらかというと『天使』に近いのかもしれませんね。しかし、私が自信をもって言える根拠が2つあります。まず1つ目を見せますね。」
そう言うとルシラさんは目を閉じる。なにをするんだろうと思った数秒後、彼女の周りが光で覆われ始めた。驚いているのも束の間、その光は彼女を侵食するかのように、いやどちらかというと彼女の容姿が剥がれ落ちるかのように光が大きくなりはじめ、最終的に先ほどの姿形は一切無くなり、明るく大きな光だけが残った。例えるならまるで地平線から昇ってくる朝日のようだ。
「これが本来の私の姿です。先ほどの姿はあなたが混乱しないようにするための仮初めに過ぎません。わたしたちは実体などなく、ただ存在がそこにあるだけなのです。」
確かにここに来た時に目の前の輝く大きな光から話しかけられたら頭がパンクすることは間違いないだろう。転生モノの小説やファンタジー小説を読んでいた俺でもIQ3くらいになっていたかもしれない。それにしても凄いな。彼女は存在だけしかないと言っているが、それだけでこの光や圧を出せるのだから凄いと言う以外の何物でもない。
そう心の中で感嘆していると次第に光が小さくなっていき、その光が消えた時には彼女はさっきの姿に戻っていた。
「すごいオーラですね。人間の俺でも分かります。」
「褒めて頂いてありがたいですが、わからない人も多いのですよ?伊織さんはご謙遜なさる人のようですね。」
確かに高校時の挫折で自分を卑下するようになってしまったのかもしれないな。まあでも、傲慢になるよりはるかにマシだろう。
「次に2つ目の根拠を見せたいと思っているのですが、これは伊織さんの今後の話にも繋がってきますので、他の質問があるのでしたら先にお答えしますよ。」
俺の今後の話って何? と思ったものの、今考えても答えは出ないので1つ疑問に思っていたことを聞く。
「ちなみに、ここはどこなのですか?」
「ここは魂の転換場所、いわゆる『天国』のような場所ですね。正確にはあなた達が思っているような雲の上で人間たちが寝ころぶような場所ではなく、魂を別の星の人間として生まれ変わらせる準備をする場所です。名前は『アストラル・コンバーター』。まあ、この名前はあなたがいた世界のある人が付けた名前なんですけどね。私たちは名づけのセンスがあまり良くなくて、もっと言うと一部の神は長い名前で呼ぶのが嫌いなので、私たちのほとんどは『魂のトコ』と呼んだりしていますが。」
そんな感じで神様の威厳は保たれるのだろうかと心配になったが、この話を俺に聞かせるくらいだから大丈夫なのだろう。それよりも俺は今の話で気づいてしまったのだ。
「あぁそうか、やっぱり俺は死んでいたのだな。」
なんとなくはわかっていたが、さっきの内容で俺は死んで別の星の人間として生まれ変わるところなのだと気づいてしまった。その現実に直面した途端、後悔の念が湧き上がってくる。飛び込む前に会社を辞めて好きなように生きようかなと冗談交じりな考えをしていただけに尚更だ。結局、仲間が集まるゲームの世界に戻ることはできなかったし、それに親に恩返しをせずに死んだ親不孝者になってしまった。......悔しい。
そう思っていると頬に何か触れる感覚があった。その正体に気づくとそれがあふれそうになるが、ここは俺だけの空間じゃない、目の前にいる女神様に迷惑をかけるわけにはいかないと思いこらえていると、急に視界がぼんやりと暗くなった。 すぐに気づいた、宙に浮かぶ女神が俺を抱き寄せているのだと。そう思った途端、理性による歯止めは利かなくなってしまい、俺は女神様の胸の下で嗚咽するように泣いた。
もう少し続きを書こうかなと思ったのですが、これ以上書いてしまうとキリが悪くなってしまうので泣く泣く次話にさせていただきます。
こんなド素人の作品を読んでいただいた読者の皆様、誠にありがとうございます。これを伝えるのは二度目になりますが、筆者自身は暇つぶしとして頭の中で思いついた世界を文章にしてみただけですので、投稿頻度は不定期になります。ご理解いただけるとありがたいです。