主の正体 その2
普段は小説を読む側のド素人が暇つぶしに書いてみた作品ですので、読者の皆様も暇つぶし感覚で気ままに読んでいただけたら幸いです。また、本業の方が忙しいときがありますので、感想や評価を読むことはあまりできないかかもしれません。ご理解のほどよろしくお願いします。
~5分後~
「ちょっと時間がかかったけど、外に出られたな。...おっ、目の前のデカめの街が確かペレセレス侯爵領だったな。領主とは何度か会ったけど領には行ったことはなかったから、どんな感じかちょっと楽しみだな。」
俺はここからテレポートで街の近くまで移動しようと思ったのだが、
「...遠いな。」
ここから、どれくらい離れているのだろうか。街の外に立っているであろう門番が余裕で視えないほどではあるから、結構離れているのは確かだ。
「こういう時のために、どれだけBPを貯めてたと思ってるんだ。...あったあった、スキル『千里眼』!」
『千里眼』
使用者がいる位置から遠くのものが見えるようになる。具体的にはxメルトの200倍の位置にいる人間の容姿がハッキリと見える程度。
「よし、これをレベルMaxまで上げてっと...おおっ! 結構先まで見えるな!2キルトという数字じゃいまいちピンとこないけど、街に向かってるっぽい馬車の御者までも見えるぞ!...よし。」
俺は馬車の真上まで転移した。まぁ御者にバレたらめんどくさそうなので、馬車全体がこぶしくらいの大きさに見える高さで留まっている。靴の効果のおかげで、空中が地面と同じ感覚になるのは改めてすごい。
「うーん、さっきは遠かったがゆえに『千里眼』なしでもぼんやりと街全体が見えていたけど、流石にここからだと一望するのは難しいな。」
さっきよりも相当高い位置からでないと見下ろせない。逆に言うと、『千里眼』を使えば街の中に入る門がはっきりと視認できる距離にまでは近づいたため、楽に目の前まで転移できる。まぁ、しないけど...
「ここに来るまでに結構時間食っちゃったからなぁ。一応冒険者として通ろうと思えばできなくはなさそうだけど、俺に関して情報の共有とかされてたら、見つかった時にロクなことにならなそう...」
俺は、正面から通って素性がバレるリスクと無断でこっそり入ってバレるリスクを天秤にかける。正面から通った場合、冒険者と名乗るからすぐにはバレないとは思う。後々、俺だったって気づく可能性はあるが、今のところここにもう一度戻ってくるつもりはないから、問題ないと言えばそれまで。
つまり、一言で説明するなら、通過する際にその場でバレなければいけるという状況だ。ただ、時刻は11時。俺がこっそり外に出てから相当経っている。仮に俺がいないのに気づいたのが7~8時だとしたら、3時間前後は経過していることになる。侯爵領から各地に馬を走らせているとすれば、ここにはすでに通達が届いている可能性が高い。
対する後者の場合は、俺がこの街に侵入したことは気づかれないが、この街の衛兵に見つかったら全速力で逃げるしかない。でもそれは、前者のほうにも言えること。つまり...
「...最初から選択肢は一つしかなかったってことか。」
俺は壁上でそう呟く。ここに転移して分かったが、この壁、結構な高さがある。近くに4階建ての大きな宿屋が見えるのだが、それ3こ分といった感じだ。幅も測ってみたら3メルトくらいあったので、強固で頑丈な造りの壁であるのは明らかだ。
「いやー、それにしてもめっちゃきれいだなぁ!」
ヘレクレス領とは違い、区画がきっちり整備されており、碁盤の目のように建物が並んでいる。ペレセレス侯爵に一度会ったから分かるが、彼の几帳面さが全面に表れている。
「すぐ街の中に入りたいけど、人にバレたら厄介なことこの上ないから、ひとまず人影が一切ない場所に転移するか。」
いわゆるメインストリートと言われる場所とは真逆の位置にある、住宅街の人気が少ない道に転移して、そこからメインのところへと歩いていく。その近くまで寄ったところで、旅人のふりをして住民っぽい人に場所を教えてもらい、数分かけて教会のもとへたどり着いた。
「ここか...」
俺が能力を与えられた時の教会とは違い、横に長い建造物で真ん中には半球上のドームらしきものが乗っかっており、さらにその上には時計塔のようなものが付いていた。外壁まではいかないが、教会にしては相当な高さだと思う。あの侯爵さんは宗教に力を入れているのだろうか、と半ば関係ないことを考えてしまうほどだったが、すぐに頭から雑念を払い、半開きになっている教会の扉を通る。
「...外側も凄かったけど、内側の装飾もヤバいな。」
大理石であろう床には、少なくとも視界にはホコリが一つも落ちておらず、しかも等間隔で設置されている柱には一つ一つ異なる彫刻が施されている。極めつけに、全ての窓のガラスに神話に出てきそうな、神や人, 動物たちの絵が描かれていた。
「これだけ『神を崇拝していますよ』感を見ると、娘の能力に落胆して地下に軟禁する侯爵の姿が簡単に想像できてしまうな...『神の言うことは絶対だ!!』とか言って。」
そんな独り言を呟きながら長い廊下を真っ直ぐ歩いていると、二体の女神らしき存在が描かれたガラス張りの絵を背にした、10メルト以上はある、こちらも二体の女神像が並び立っていた。どちらも全体的な構造は似ているのだが、俺から見て右の像は長髪で首元にネックレス(?)を付けている。反対に左の像は短髪で頭の上からティアラ(?)を乗っけている。その二体を見比べたことで俺は気づいた。
「...あ、右の女神像、なんか既視感あるなぁと思ったら、あのクソ女神じゃん。」
ネックレスを抜きにして見てみると、アイツ ― 女神ルシラとそっくりだった。というか、あれで神だからこの像は間違いなくアイツを模したものだ。俺の考えが間違いでなければ、おそらくこの像に向かって祈ると、俺の意識は例の世界に飛ばされるだろう...不本意だが。
「っていうか、この時間帯って教会の関係者は誰もいないのか? 相当物騒だな、おい。」
前の世界では、貴重な建造物をぶっ壊すようなヤベェやつらがいたけど、この世界はそうでもないのか?見た感じ宗教観は結構強そうだから、そんなことしてるやつはすぐにお命頂戴されそうだけど。にしても、一人もいないっていうのは、教会の人らは像に何かするやつはいないっていう相当な自信があるようだな。
「...うーん、俺も何か傷つけるわけじゃないけど、祈ったら前みたいに光り出して大騒ぎになるのは嫌だなぁ。でもここまで来て何もしないわけにはいかないし。」
とりあえず目に見える範囲には人がいないことを確認し、俺は二対の像に向かって片膝を地面につき、両手を合わせ目を閉じ祈った。すると、しゃがんでいるはずなのにフワフワと浮かぶ錯覚を感じ始めた。その朦朧とした意識は俺感覚で十秒ほどでハッキリとなり、次に目を開けた時には、
「やっぱりここに戻ってきたか。」
あの女神と会話した場所に着いていた。のだが、例のヤツはそこにはおらず、なんなら一向に姿を見せない。
「おかしいな。何の連絡もなくいきなり来たからかなぁ。でも連絡を取る手段なんか持ってないし...ん?」
どこかにあの女神を呼ぶものがないか探し回っていると、結構上のほうに長方形の穴が違和感マシマシで空中に浮いていた。
「...そういえば、アイツに翼が生えてたな。あそこから自由に行き来できるのかな。」
俺はブーツの効果で空を蹴りながらその穴に入った。実際に前まで来てみると目測で10メルトほどあり、しかも穴に何か仕掛けが施してあるというわけでもなかった。意外と天界ってガバい?
「ここがいわゆる天界...管理者たちの住処か。」
目に入ってきたのは、あちこちに浮いている無数の陸地だった。各々の陸地にはさまざまな家が建っており、しかもその一部はまるで重力なんかありませんと言うかのごとく、家含む土地は俺から見て真横に傾いてたり上下逆さまに浮いている。
「何でもありだな。これが意識の中の世界だからできることなのか、それとも...いや、それよりも先にあの女神を探さないと。」
そう、早く見つけてあのクワガタの呪いを解いてもらわないと、祈ってる俺の姿が見つかる可能性がある。だからさっさと彼女のもとへ向かいたいのだが...
「こんなに多いとどこにいるのか分かんねぇぇえええ!!」
視界内だけでもざっと100以上の陸地が浮いている。奥に進めば進むほど新たな陸地が見えてくるだろう。探すだけで一週間が経ちそうな途方もない行為をしないといけないのかと思うと、一気にやる気が失せてくる。戻って別の方法を探そうかなと穴に向かおうとした瞬間、
アハハハハハハハハハハ!!
鼓膜が破れるかと思うほど馬鹿でかい笑い声が聞こえてきた。
「これが神の大声なのか? 人を殺す気か!?」
...いやそれよりも、この笑い声って、
「この近くにアイツがいる!」
よくよく考えてみれば簡単な話だった。彼女はこの穴を頻繁に出入りする存在なのだから、穴に近いところにいたいはずなのだ。
― クソッ、どこだ。どこにいる!!
まだまだ笑い声が収まる様子はないので、俺は耳を手で塞ぎながら、それでも耳の中に入ってくる声を頼りに音源地を探して空中を走り始める。二つほど見てハズレだと気づいた後、アタリの場所を特定した。そこの家は、言葉で表すなら、幼い少女らが模型として持っていそうな、某うさぎファミリーにそっくりな家がピンクと黄色で塗りたくられている感じだった。
...あとちなみに、笑い声はまだ収まっていない。
― チッ、性格といい笑い声といい家の雰囲気といい、こいつの精神年齢低すぎだろ!!
さっさとドアを開けて蹴り入れたいのだが、いかんせん両手を耳から離せない。なので、
ドンドンドン!!
と、行儀は悪いが足でドアを蹴ってみる。が、
アハハハハハハハハハハ!!
「なんとなく予想してはいたが、反応なしだな。」
これだけ無反応だと、何がここまでアイツを笑わせているのか気になるが、優先事項はアイツの笑いを止めること。何度もドアを足で蹴って、こっちに意識を向けさせようと試みる。ときには、回し蹴りや助走をつけたジャンプキックをしてみる。
のだが、
「クソッ、アイツ鈍感すぎるだろ。いや、もはや鈍感という言葉で収まるような性格じゃねぇ...」
一旦蹴りをやめて少し熟考する。どれだけ蹴りを放っても、その音は全く相手に届いていない。ということは音で反応を促すのは得策じゃない。ということは...
「...いや、本当に出来るのか?」
打開策がひとつ思いついたものの、上手くいくかどうか。ただ、俺の憶測では可能性は高い。なぜなら...
「ここは意識の中の世界だから! ハアッ!」
気合いを入れながら俺は...
ドアを蹴破った。
「ハハハ『ドガアアァァァァンン!!』ああぁぁ!! 私が500年以上も大事にしてるモニターがぁぁ!! だ、誰ですか!? こんな卑劣なことをする輩は!!」
「ゲホゲホッ、いやー勢い余って蹴破ってしまったぜー(棒)。よっ、10年ぶりかな?まぁ、俺にとったら昨日ぶりなんだがな。」
「な、なぜあなたがここに!? 天使としての役割はまだ終わってないはずですよ! そ、それよりも、この惨状どうしてくれるんですか!!」
「いや知らねぇよ。俺がドア叩いてるのに、お前がでっかい声で笑ってガン無視してたからだろぉが。」
「それにしても限度っていうものがあるでしょーが!!」
「あー、すまんすまん。...でもお前、神様なんだからモニターもドアも、ちょちょいっと直せるだろ?」
「そういう問題じゃないですし! じゃあ、電機メーカーの人にも同じことを言うんですか!?」
「分かった分かった、俺が悪かったから。...って、しれっと直してるじゃねぇか。いやそれよりもだ、そんな話をしに来たんじゃねぇんだよ。あんたに頼み…というよりアドバイスを求めに来たんだ。」
「へぇ、私に聞きたいことがあるんですか。まぁ聞くくらいならいいですよ...って、なに驚いた顔してるんですか! そんなに私が相談に乗ることが意外ですか!?」
「いや、別にそういうわけではないけど。」
ー ここで『意外でした』って言ったら、またギャーギャー騒ぎそうだからやめとこ。
「言っときますけど、内容を聞くだけでアドバイスするとはまだ言ってませんからね!」
「え、なんで? 天使(部下)の悩みを解決するのが、神様(上司)の仕事でしょ?」
「なんか途中、言葉に含みを持たせてたような気がしたんですが、まぁそれは置いときましょう。それより、あなたは知らないでしょうけど、神様は簡単に動いちゃいけないって決まってるんです。私が干渉してしまうと、世界が元に戻そうという反動を起こしてしまうんです。しかもその反動が当事者に必ず返ってくるわけではないっていうのが問題なんです。想像してみてください、全く関係ない人があなたのせいで『不幸』という名の反動を被ってしまう状況を。」
「まぁ、そういうシステムなのは分かったけど、でもアドバイスくらいなら...」
「アドバイスすらもです! 私からのアドバイスっていうことは、人間の意思に基づく行動ではないですよね!?」
「まぁ、確かに...」
「もちろん、私自身が行動を起こすよりも影響力は小さいですが、世界のシステム的にそれがイレギュラーなものであるのには変わりません。」
「...待てよ。その反動は無作為に発生するんだろ?」
「ええ、そうですが。...まさか、その反動すらも私に操作させるつもりじゃありませんよね?」
「あぁ、そのまさかだ。しかも、その反動を特定の人ではなく、全体的に振り分けるっていう風にすればいい。出来るか?」
「出来る出来ないの問題ではないですよ!! 通常の状態でも介入しちゃいけないのに、反動すら弄っちゃったら何が起こるか私にも分からないんですから!」
「へぇ、そりゃ好都合だ。今後のためにも、一度試しとこうぜ。」
「嫌ですよ! 世界がおかしくなったら、私の責任になるんですから! そんなことに私を巻き込まないでください!」
「ええー、いいじゃねぇか。アドバイスは影響度が小さいんだろ? その反動をうすーくひろーくするだけだから。」
「...はぁ、とりあえず内容を話してください。」
アドバイスの確約は取れなかったが、ひとまず俺は女神ルシラに概要を話すことにした。
主人公と女神の会話、もうちょっと延ばそうとしましたが、さすがに脱線しすぎかもと思って途中で戻しました。
こんなド素人の作品を読んでいただいた読者の皆様、誠にありがとうございます。これを伝えるのは二度目になりますが、筆者自身は暇つぶしとして頭の中で思いついた世界を文章にしてみただけですので、投稿頻度は不定期になります。ご理解いただけるとありがたいです。




