主の正体 その1
前回、最初の二話を大幅修正するって言いましたけど、結果的に全然大幅じゃなかったです。でも、いい入りを思いついた時は、どんどん修正していこうかなと思っています。(他の人の作品を参考にしようかなぁ...どうしよう...)
普段は小説を読む側のド素人が暇つぶしに書いてみた作品ですので、読者の皆様も暇つぶし感覚で気ままに読んでいただけたら幸いです。また、本業の方が忙しいときがありますので、感想や評価を読むことはあまりできないかかもしれません。ご理解のほどよろしくお願いします。
ドスン!! ドスン!!
重く、鈍い足音がだんだんとこっちに近づいてきている。
...っていうか今思ったけど主、絶対人間じゃないよね!? 人間がこんな足音起こせるわけないよね!? 魔物を使役する魔物って相当ヤバいんじゃないの? ゲームで言うとボスモンスターの立ち位置だし。
― と、とりあえず姿とステータスを見るまでは何とも言えないから、ここは我慢するか。もしかしたら害のない存在かもしれないし、ステータスもそこまで強くないかもしれないしね。
ドスン!! ドスン!!
自分を落ち着かせているうちに、俺が立ってる地面が少しずつ揺れ始めた。おそらく、もうすぐ洞窟から出てくるだろう。
「ふぅ~、さて鬼が出るか蛇が出るか。って言っても蜘蛛が出るんだけどさ。なんにしても、意思疎通ができる相手だったら嬉しいなぁ。」
ドスン!! ドスン!!!
― 見えてきた! 緑がかった黒光りしている綺麗な甲殻、左右の前両足に生えた細かい毛。そう、そこから出てきたのは...
でっかいクワガタだった。
― ...いや、なんで?
どう考えてもおかしいでしょ。なんで蜘蛛の軍団を率いてる親分がクワガタなわけ? あれだよ? 例えて言うなら、カラスがスズメの群れのリーダーになっているようなもんだよ? この場合、女王グモとか「キングスパイダー」みたいな名前の魔物が出てくるって相場が決まってるもんじゃないの?
やばい、いろいろツッコんでいるうちに、主のクワガタが二つの刃をジャキンジャキン言わせて近づいてきている。こういう時こそ落ち着くんだ、イオ氏。相手のことを決めつけるのは時期尚早だ。もしかしたら、こんな外見だけど案外互角のステータスかもしれない...
ミスリルノコギリクワガタ【呪縛状態】
〈ステータス〉レベル93
体力 984
筋力 1053
敏捷力 952
耐久力 811
魔力 1354
〈特殊スキル〉
『虫型魔物使い』『賢者』
〈通常スキル〉BP 2238
『視覚共有』(レベルMax)、『思念伝達』(レベル5/10)
そんなわけないですよね!! 俺の4倍以上の数値じゃねぇか! しかも賢者持ちって魔物が取得していいスキルじゃねぇだろ! どう対策を練っても勝てるビジョンが見えねぇ!! マジかよ、ここで俺は死ぬのか...いや、待てよ?
― ワガアルジハ、『ヤットミツケタ』ト、イッテイタゾ。
そうだ! このクワガタさんは俺のことを必死で探していたらしい。理由は知らないけど、ここで変に相手をカッとさせなければ、この状況を切り抜けられる可能性が高い!! そうと決まれば、相手をイラつかせず、かといってなめられないような立ち回りをするんだ。やったことはないけど、出来るはずだ! ...多分。
そう覚悟を決めた時にはもうクワガタさんは俺の数メルト前まで来ており、そこで立ち止まる。昆虫の中でもクワガタはそれほど高さは無いはずなのに、俺の身長の1.5倍ほどはある。2メルト前後といったところか。そんな魔物が目の前にいれば、普通は尻もちを着いてしまうのだが、そんななか俺は懸命に圧に耐えて立ち続けていた。
第三者がこの状況を見ていたら、「ゴゴゴゴゴゴゴ!!」というオノマトペを想像してしまうだろう。それぐらい俺にとってはピンチなのだ。
クワガタさんが立ち止まってから何秒が過ぎただろう。数える余裕がないほど、俺は相手とにらみ合っていたのだが、急に相手の体がゆっくりと動いた。
攻撃か何か仕掛けようとしているのか? そう頭では考えているのに体は動かない。なんで動けないんだ! そう自問自答している間にも、相手は何かアクションを起こそうとしている。俺はどうすることもできず、ただ自分の視界はぼやけることなく、くっきりと相手の行動を捉えている。そして、クワガタさんは前両足と後ろ両足をさっきよりも広げて、
腹全体を地面につけてツノの先も地面に下ろしていた。
― ...えーっと、どういうこと?
何が何だかさっぱり分からない。とりあえず、このポーズは何を表しているんだ? 特別な意味でもあるのか? ひょっとしてあれか? この世界では、このポーズが「自分のハンカチを相手に投げる」的な意味合いを持っているというのか!? よく見るとツノを下ろしているこの状態は剣を交わす前に近い。「配下を殺した恨みだー!」という意味でこの体勢をとっているのか!? だとしたら、俺は潔く殺されるしか...
「タ、助ケテ。」
......へ?
「い、今なんて言いました?」
「...助ケテ...クダサイ。」
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さっき倒した黒グモが喋ったことで耐性がついたのか、クワガタが喋っても驚くことなく返事をしてしまった......
ちなみにあの後、詳しく話を聞いてどう助けて欲しいのかを尋ねたところ、やや無機質な声で答えてくれた。それによると...
〇 クワガタさんは、もともと隣街の貴族の娘だったこと。
〇 彼女の『職業』が原因で、父親から屋敷の檻に軟禁されていた(病死として扱われた)こと。
〇 それが嫌になってこっそり屋敷を抜け出し、この洞窟に逃れたこと。
〇 洞窟内にあったお宝(?)に触れたら、クワガタになったこと。
という彼女の経緯が分かった。
......うん、言葉にしても理解できない。いや、文章としては成立するが意味が分かんない。
なぜ『賢者』という凄いスキルがあるにもかかわらず、彼女の親は屋敷に閉じ込めたのか。貴族の屋敷はなぜそんなにガバガバなのか(脱走した俺が言えることではないが)、などいろいろ言いたいことはあるが、一番は彼女をクワガタに変えたその道具だ。
王都から比較的近くにある洞窟なのに、その中に特別っぽい道具?お宝?が放置されており、しかもそれが呪いを与えるものなのだ。通常なら放っておいて良い存在ではない。この国の捜査能力はどうなっているんだ?ザル過ぎるにも程があるぞ…
「はぁ...、今いろいろ考えても仕方ないか。とりあえず、その道具があった場所まで案内してくれないか?」
「......分カリマシタ。」
というわけで、そのお宝(?)がある場所まで俺を乗せて連れていってもらうことにした。
「そういえば、隣の貴族の娘だって言ってたけど...」
「ハイ、私ハ、ペレセレス侯爵家ニ生マレマシタ。」
「え、マジで!? ペレセレスさんとこに子供がいたんだ。」
記憶が戻る前に一回だけ、ペレセレス侯爵と会ったことがある。俺の父親と違って、気さくな人だったのは覚えている。ただ、あの時は自分の子供に関して何も言ってなかったな。どういうことだ? その時にはもう、娘がいることを隠していたのか?
「アナタ様モ、貴族ノ子供デスカ?」
「ん? お、おぉ。俺はヘラクレス家の次男のグランだ。今はイオという名前で旅をしているから、イオって呼んでくれ。っていうか、敬語はやめてくれ。なんかむずがゆい。」
「...デスガ、アナタ様カラハ、オーラヲ強ク感ジマス。神サマト似タヨウナ。」
「え!? そんなオーラが俺から出ているのか!?」
「ハイ、アナタ様ノ周リハ光ノ層デ覆ワレテイマス。モシカシテ、神サマナノデショウカ。」
「...それについては後で話す。まずはあんたのことを治す方法を探すのが最優先だ。」
「ハイ、分カリマシタ。」
道中、何度も枝分かれしていた道を彼女は迷うことなく歩き続け、数分後「宮殿」と彼女らが呼んでいる場所の前に到着した。初めて宮殿というものを見たのだが、これはどっちかというと…
「駅に近いな...」
「エキ? ソレハ何デスカ?」
「ん? あ、あぁ! 別になんでもない。それよりこれはあんたらが作ったのか?」
「イイエ。私ガ、コノ洞窟ニ逃ゲテキタ時ニハ既ニアリマシタ。」
「ふーん、そうか...」
これはどう見ても、あのレンガ造りの駅に見た目が似すぎている。材質はレンガではなく鉄なのだが、わざわざ表面が赤茶色で塗られている。おそらく、この自称「宮殿」を建てたのは転生者、もしくは転移者だろう。
「はぁ、異世界だと著作権も減ったくれもないなぁ。分かり切ってたことだけど......よし、それでその道具はどこにあるのか言ってくれ、...えーっと、そういえば名前を聞いてなかったな。名前は?」
「...言イタクナイデス。」
「は? どういうことだよ?」
「モウ、アノ家デ与エラレタ名前デ生キタクハナイノデス...ダカラ、アナタ様ニ名前ヲ付ケテ頂キタイノデス。」
「...あんたの気持ちは分かった。名前、考えておくよ。その代わり、さっさと俺の呼び方と敬語を止めてくれ。」
「!! アリガトウゴザ...アリガトウ、イオ。」
そう言いながら、体をもじもじさせているのだが、見た目が見た目だから全然惚れないんだが。あと、そんなに体を揺らすな。乗っていて気分が悪くなるから...
そんなことがありながら、宮殿の奥深くまで入っていき、クワガタさんは5メルトほどある棺に似た箱の前で立ち止まった。
「この箱の中に例の道具が入っているのか?」
「ハイ、ソウデ...ソウダヨ。」
― うーん、この世界の人ってタメ口で話すことがあまりないのか? めっちゃ喋りづらそう...
と思いながら、俺は箱に触れてみる。金属製で出来ているためか、錆びている部分が至る所にあり、半分以上が茶色くなっている。触っても特に害はないと判断し、箱を開けてみることにした。
「...よっと。大きさの割には意外と簡単に開けられるな。...ん?」
中に入っていたのは、子供が抱えられるほどの大きさの、いかにも「宝箱」という見た目の箱が入っていた。
「箱の中にさらに箱? なんかマトリョーシカみたいだな。この中にさらに例の道具が入っているのか?」
「...ウウン。ソノ箱ヲ開ケタラ、箱ノ中ガ光ッテイテ、眩シクテ目ヲ閉ジテイタノ。チョット経ッテ変ナ感ジガシタカラ目ヲ開ケテミタラ、コノ姿ニナッテイタノ。」
「...つまり、この箱そのものが例の道具ってことかな?」
そう考え、首にかけていたアイガードを付けて鑑定してみる。
《願いと呪いの宝箱》
これを開けた者に対して、その者の願いを呪いの形で付与する。なお、呪いを解くと真なる形としてその願いが具現化される。(ただし、使用回数は一人一回まで)
「なるほど...どうやら、これが例のもので間違いなさそうだ。」
俺は箱を両手で持ちながら、効果をクワガタに教える。そして、気になったことがあったので尋ねた。
「これを開けた時に何か願ったか?」
「...特ニ何モ。箱ソノモノニ効果ガアルトハ思ッテナカッタカラ。」
「まぁ、そうだよなぁ...」
普通は『鑑定』スキルを持っていないとこの箱自体に何かあることは分からないし、なんなら「箱は中に物を入れる道具」っていう固定観念があるから、この宝箱に鑑定するという行為自体思いつかない可能性がある。俺も一人でここに来てたら何も考えずに開けてただろうし。
「しょうがない。先に呪いを解く方法を探すか...とはいえ、手掛かりが何一つないんだよなぁ。」
「アノー」
「ん? 何か知っているのか?」
「ハイ。 屋敷ニイタ時、呪イヲ受ケテシマッタ兵士サンガ、教会ニ行ッテタ所ヲ見マシタ。」
「なるほど... つまり、神父さん、もしくは教会に備わる道具が呪いを消してくれているのかもな。知っていたらでいいんだけど、詳しいことって覚えてたりする?」
「......ゴメンナサイ。アンマリ、覚エテナイ。聖属性デ打チ消スコトガデキル、トイウコトダケ。」
「聖属性ねぇ...」
出ました、王道属性。ゲームやアニメとかではヒロインが所持していることが多く、自身のエネルギーを使って邪悪なものを浄化することができる属性だ。場合によっては物質だけでなく精神にまで影響して、心を清める効果もあるという。
「ただなぁ、俺は聖属性を持ってないから、今この場で治すことは出来なそうだ。」
「エ? 神デモ浄化ッテ出来ナイノ?」
「うっ、痛いところを突いてくるなぁ。あと、言ってなかったからしょうがないけど、俺は神じゃなくてそのパシリだ。一言で言うなら天使だな。まぁ、こんな姿だから威厳なんかは全くないけど。」
「ナルホド...パシリ、トイウ言葉ノ意味ハ分カラナイケド、イオカラハ青白イオーラガ出テイルヨ。ダカラ、天使ッテイウノハ、本当ダト私ハ思ウナ...... モシカシタラ、神様ガ、イオニ聖属性ヲ付ケ忘レタノカモ。」
「君の神に対するイメージはどうなってるんだ? ...まぁ、確かにあの女神ならやりかねないが。」
「チナミニ、コノ世界ノ神様ハ、ドジナ性格ナノガ玉ニ瑕デ有名ダヨ。」
「そ、そうか。過去に何かやらかしたんだろうな......まぁ、それは置いといて、今後どう動くかについてだけど、俺は今からこの先にある教会に行こうと思ってるんだけど、お前はどうする?」
「ジャア、私ハココデイオガ戻ッテクルノヲ待ッテル。」
「...俺が騙してそのままどっか行くことは考えないのか?」
「イオハ嘘ヲ言ワナイッテ、ナゼカ分カルノ。ソレニ...イオ以外ニ私ヲ助ケテクレル人ハ出テコナイカラ。」
― ...こいつ、どんだけ俺のこと信じてるんだよ。
「分かった。とにかく、教会に行ってみるよ。何か良いものが見つかるかもだし。」
「デモ大丈夫? 早ク洞窟カラ抜ケタイッテ言ッテナカッタ? ナニカ事情ガアルンジャナイノ?」
「さっき『待ってる』って言ってたやつが心配なんかすんじゃねぇよ。大丈夫だ。ちょっといいこと思いついたから後で試すつもりだ。それよりも、ここから出口までの行き方を教えてくれないか?」
~3分後~
「よし、地図もできたし行くか! ここでちゃんと待っとけよ。すぐ戻ってくるから!」
そう言った直後、俺は一気に駆け出した。さっきまで休憩してたおかげか、疲労は消えて全力で走ることができる。
「体が軽い! よし、かっ飛ばすぞ!」
こんなド素人の作品を読んでいただいた読者の皆様、誠にありがとうございます。これを伝えるのは二度目になりますが、筆者自身は暇つぶしとして頭の中で思いついた世界を文章にしてみただけですので、投稿頻度は不定期になります。ご理解いただけるとありがたいです。




