アテネスにて その3
普段は小説を読む側のド素人が暇つぶしに書いてみた作品ですので、読者の皆様も暇つぶし感覚で気ままに読んでいただけたら幸いです。また、本業の方が忙しいときがありますので、感想や評価を読むことはあまりできないかかもしれません。ご理解のほどよろしくお願いします。
魔石を買った後、俺は店主に自分の剣に関して聞いた。店主によると、今俺が持っている剣は初心者にしては相当良いらしい。そりゃあボロボロだったとはいえ3本の剣を合成させたんだから、そのくらいの価値がなきゃこっちが困る、という愚痴は置いといて。
今の俺の剣よりも少し価値が高いものがどれか尋ねると、店主は1本の剣を持ってきてくれた。自分の剣よりややキラキラしている。『鍛冶師』でこっそり調べさせてもらうと...
≪金剛の輝きを秘めた剣≫ C+
ダイヤモンドが全体の5%含まれている剣。通常の鉄でできた剣よりも何倍も丈夫。
いかんせん剣の耐久値が分からないのがネックだが、この剣が優れているのは分かる。あとどうやら剣が輝いていたのはダイヤモンドが含まれているからみたいだ。値段は大銀貨1枚。この武器でさえこんなにかかるのかと嘆くが背に腹は代えられない。仕方なく小袋から取り出した。
「あと、この店に目を防ぐような防具って置いてませんか? アイガードっていうんですかね。それが欲しいんですけど。」
「それなら防具売り場の端っこにあるぜ。バリエーションは少ないけど偶に買う冒険者がいるから取り揃えているんだ。大銅貨5枚で値段が高めに感じるかもしれないけど、その分割れない&曇らない素材で出来てるんだ。」
確かに、魔石と剣を買った後だから安く思うかもしれないが、普通に考えれば大事な器官とはいえ目だけを守る防具に大銅貨5枚は結構高い。それでも良質な素材を使っているからある程度売れているのだろう。『鑑定』効果を得るためにも俺はお金の出し惜しみはしない。
(所持金:金貨9枚、大銀貨9枚、大銅貨10枚、銅貨5枚)
「いろいろと教えてくださりありがとうございました。」
「おうおう、気にすんな。お礼を言うのはこっちの方だぜ。初来店でいっぱい買ってくれたんだからよ。...そうだ、そんなありがたい少年にはこれをあげよう。」
手渡されたものは木札にこの店の看板のロゴが手書きで書かれたものだった。
「...これは何ですか?」
「それは、買ってくれた少年に記念としてこの店のお得意様を証明するものだ。ただの木札じゃないぜ。その中には小さな魔石が含まれていてな、それを俺が付けてるこのリングにかざすと...こんな感じで俺のリングが緑に光るんだ。魔石が小さいから用途が限られていたんだが、こんな風に有効活用も出来るんだ。」
「へぇ~、すごいですね。...って、そうじゃなくて! 一回しか来ていない俺にこんなものを渡しちゃって良いんですか!?」
「まぁ、本来だったらこんなことはしないんだけど、君はなんか大物になる気がするんだよね! 直感ってやつ? だからこれは俺から少年の未来への投資だと思ってくれればいいよ。」
順調に行けば、このままレベルを上げていって大きな危機を止める存在になるだろうから、あながち彼の直感は間違っていない。いないが...これは「絶対にまた来いよ」と圧をかけられている感じだ。有名になった際には俺の店を宣伝してくれとでも言いたげな、満面の笑みで俺を見ている。どうか気のせいであってほしいが、めちゃくちゃ期待の目を向けている。正直すぐに返したいが彼の優しさを無下にするのはちょっとアレだ、うん...
「ちなみにこれを提示すると、全品が四割引きになるよ。」
「ありがたく受け取らせていただきます。」
よしもらった。もう、期待だろうが圧だろうが知るか。それよりあのショーケースに入っていた武器を破格の大安値で買えるのなら構わん。
その後、店主に感謝の意を示して店を出ると、そのままアテネスの街を出た。時刻は朝の6時半だ。ここからは時間との、いや追っ手との勝負になる。いつもの俺だったらこの時間帯はまだ寝ているが、カルロスの昨日の話では早めに俺を連れ出そうとしていた。だからすでに俺がいないことはバレているのかもしれない。まだ俺の部屋に来ていない可能性もあるが、油断は禁物。追っ手を送り出しているという前提で動いた方が良い。
俺はそう思いながら、東に続く大きな道を走り続ける。周辺は辺り一面草原で木も建物も存在しない。そのまま走って10分くらい経っただろうか、少し道から逸れた草原の中に俺は座る。周りに人も魔物もいないことを確かめると、2本の剣を地面に置いて手元にハンマーを出現させる。
そう、なるべく距離を取っておきたいところではあるが、先に装備を強化したかったのだ。俺は想像してハンマーを重なっている2本の剣に向けて叩くと両者ともに光り始めた。そのあと俺がイメージした通りに、もともと持っていた剣が形を失って購入した剣のほうに溶け込んでいった。そして2本の剣が1本の剣の形へと変わると光は少しずつ収まっていった。
≪金剛の煌めきを秘めるショートソード≫ C+
ダイヤモンドが5%含まれている剣。刀身はイオ(グラン)にとって丁度いい長さになっている。
「よし、合成成功だ!」
『鍛冶師』がレベルMaxの時点で失敗しないのだが、どこか不安に思っていた自分もいたので、こうやって成功例を見るのはホッとする。
「さて、本題はここからだ。」
俺は先ほど店で買った魔石とアイガードを重ねて置き、「合成」と心で唱えながらハンマーをあてる。するとさっきと同様に光り始め、魔石がアイガードの中に溶け込んでいった。光が消えて再度姿を見せたそれは先ほどと見た目は全く一緒だった。
「え、もしかして失敗した!?」
すぐに『鍛冶師』で調べてみると、
≪魔鷲のアイガード≫
魔石を大好物とするワシを一羽余すことなく利用した、目の防具。レンズが割れにくく、かつ曇りにくい。
付属効果『鑑定』:所有者が指定した対象のステータス・スキル・職業を読み取ることができる。(※魔力量が一定に達していないので、それらの詳細を見ることは出来ない。)また、対象の核となる箇所を読み取ることもできる。
「よっしゃー!成功だー! ...っていうか、『鍛冶師』やべぇ! 特殊スキルであるはずの鑑定スキルを生み出せるなんてチートすぎんだろ! 鍛冶師バンザーイ!!」
周りに誰もいないのをいいことに、めっちゃ喜んだ。1分くらい舞い上がっていたが、さすがにこうしちゃいられないと気づいた。いつ向こうが動き出すか分からないからな。それよりも一つ気になることがあった。
「そうか、装備品にも所有者という概念は存在するのか。というか、所有者を誰か決めとかないと何かあったときにヤバそうじゃね?」
どうやらこの世界には武器や防具になどの装備品に所有者というシステムがあるらしい。そして詳しく調べると誰でも彼でもこのシステムに干渉できるわけではないらしいが、『鍛冶師』は装備品に「所有者権限」を設定することができることが分かった。しかも、所有者ではない者がその装備品を持っていた時のペナルティを設定することもできるらしい。
......というわけで、俺はすぐさまその権限と罰を作り、今俺が装備しているもの全てにこれを付けた。
≪所有者権限≫
所有者以外が所持している間、その装備品の効果は一切発動しない。また、所有者以外の者が所持する時間が1分を経過した場合、その者は呪縛状態になる。※この呪縛の解除は所有者にのみ行うことができ、他のどんなスキルや魔法によっても解除することが出来ない。
「これでよしっと。そろそろ出発するか。」
今やるべきことが終わったので俺は道に戻り再度東進する。目指すは10キルト先にある、ケルベル山脈だ。高さは3000メルト級で全長は100キルトにも及ぶ。最初の難所ではあるが、ここを超えるとヘレクレス領の外に出ることになるから追っ手も素通りで行くことは出来ない。
手段としては3つあり、一つ目は山脈を文字通り超える方法、二つ目は山脈のど真ん中を通る洞窟を突っ切る方法、三つめは山脈を迂回する方法。だが俺は2つ目の方法を取ると決めてある。
もちろん、初心者の森とは違ってレベルの低いものから強力なものまで多種多様な魔物が跋扈している空間であり、山脈の中心に近づくほど強い魔物が出る傾向にあるが例外的にその魔物がエサを求めて徘徊することもあるので、運が悪ければ一撃で命を落とすだろう。(ちなみにこの情報は過去にギザイナ帝国を訪れる際にこの山脈を迂回した時に護衛の兵士から教えてもらったものだ。)
だけど一つ目や三つ目の方法を取った場合、一気に追っ手との距離が縮まってしまう。だから選択肢は三つのように見えて最初から一つだ。
――――――
朝7時25分。ようやく、山脈の麓にたどり着いた。10歳の体にとっては10キルトを走るのはきついのではと思っていたのだが、レベルが上がってたおかげかそれほど苦ではなかった。といっても、50分くらいかかってしまったのだが。俺がいないことに皆が気づいているのは確実な時間帯となってしまった。
一度カバンを下ろしてタオルで汗を拭きながら、俺は自分の能力を確認する。
イオ=ウォルク(グラン=ヘレクレス)
<ステータス> レベル6
体力 44(+2)
筋力 44(+2)
敏捷力 44(+2)
耐久力 40
魔力 40
<特殊スキル>
『貫通』(レベルMax)
<通常スキル> BP 7
『偽装』(レベル5)
<職業>
『鍛冶師』(レベルMax)
10キルトも走ったおかげか、体力・筋力・敏捷力が2ずつ上昇していた。息を整え、休憩をしっかりとったところで、再度カバンを背負う。
「さて、この山脈の洞窟を出るころにはどれだけレベルが上がっているかな?」
さっきの戦いとは比にならないくらいの魔物が出るかもしれないのに、自分でも意外なほどに落ち着いていた。おそらくこれがあるからだろう。
「力を貸してくれよ。」
俺はアイガードで目を覆いながら、洞窟の中に入っていった。
こんなド素人の作品を読んでいただいた読者の皆様、誠にありがとうございます。これを伝えるのは二度目になりますが、筆者自身は暇つぶしとして頭の中で思いついた世界を文章にしてみただけですので、投稿頻度は不定期になります。ご理解いただけるとありがたいです。




