アテネスにて その2
普段は小説を読む側のド素人が暇つぶしに書いてみた作品ですので、読者の皆様も暇つぶし感覚で気ままに読んでいただけたら幸いです。また、本業の方が忙しいときがありますので、感想や評価を読むことはあまりできないかかもしれません。ご理解のほどよろしくお願いします。
午前5時50分。
俺は受付嬢にいろいろと質問をした後、ギルドの建物から出た。
外に出るとすでに日は上がっているものの、例のロングコートを着ていてもまだ少し肌寒さが残っていた。
今日は3月28日。ちなみにこの世界の時間の仕組みは地球とあまり変わらないのだが、全部の月が30日で終わるというところだけは唯一異なる。あのルシラがこの世界を作る際にそうしたのかは知らないが、このシステムはとても分かりやすかった。当然だが地球みたいにうるう年が存在することはなく、1年=12×30=360日がこの世界では不変の事実となっている。
もう3月も終わりになろうとしているのに、まだこんなに寒いのかと愚痴を言いたくなるがそれを飲み込んで我慢する俺は、とある場所へ向かっていた。
「それにしても、ゴブリンとウルフだけでこんなにもらえるとは思わなかったな。」
俺は歩きながら、右手に持っている小さい革袋を確認する。
ゴブリンは1体につき銅貨5枚の報酬で、ウルフは1匹につき大銅貨1枚の報酬らしい。ちなみにウルフに関しては、綺麗なままで討伐すれば2倍の値段で売れるらしい。ウルフの肉は需要があるため、俺が尖った石で倒したウルフ2匹は大銅貨2枚で買い取ってくれた。
というわけで俺は合計で大銅貨15枚と銅貨5枚という予想以上の額をもらった。どうやら一般民衆の平均月収を1日で超えてしまったようだ。これはこぞって多くの人が冒険者になることに納得がいくな。
さらにありがたいことに、単独でゴブリンの群れとウルフの群れを討伐できたという実績が認められ、早速ランクがGからFに昇格したのだ。受付嬢が言うには、本当ならEランクまで上げたいところらしいのだが、飛び級はどこの国のギルドでも禁止されているとのこと。飛び級したことで浮き足立った冒険者が自滅したという例が多数出たことから...だそうだ。まったくもって迷惑極まりない。
倒した魔物を買い取ってもらった後、俺は例の女性にこの街のことやギルド依頼について質問した。なるべく早く東の方に移動したいので、商人などの馬車の護衛依頼はどのランクから受注できるのか聞いたところ、「Dランクから」と言われた。まだまだ先だったので、自分の足で行くしかないようだ。
話を変えて俺が今からどこに向かおうとしているのかというと、受付嬢に教えてもらったおすすめの武具屋だ。なぜ武器屋なんかに向かっているのか、この剣じゃ心もとないからだ。今後は自分よりも強いヤツと戦っていくことになるだろうから、今の武器が刃こぼれしない効果を備わっているとしても、相手に折られてしまったら意味がない。だったら耐久値を無限にして壊れないようにすれば良いのではと考えたのだが、調べたところこの剣の質ではそんな強力な効果を付与することができないらしい。
「職業のレベルが最大だからなんでもできると思ってたから、付与可能な効果は武器の質に依存するというのはちょっと面倒だなぁ。」
どうにかして強固な剣を手に入れなければこの不安は解消されないだろう。というわけでギルドに向かう途中に、この剣をどうにかできないのかと思って色々と調べていたら選択画面に『合成』という欄があったため、それを確かめるべく今から武具屋に向かっているのだ。
あと武器屋に向かう理由としてもう一つある。初心者の森でも少し実感したのだが、戦闘時における相手の情報量が圧倒的に少なすぎる。ゲーム大好きマンな俺からしたら、対魔物戦でも対人戦においても武力戦ではなく情報戦だと考えている。
具体例を出すと、なにか戦闘系のファンタジーゲームをプレイする際に何も知らないで挑むのと、攻略本や攻略サイトを見ながら挑むのとでは全然違う。前世の俺は、「ゲームを攻略サイト見ながらプレイするのは面白くねぇ」って言ってたけど、この世界では魔物に対する無知は命取りになる可能性が高いだろう。
さっきまで相手していたのが初心者の森の魔物だったし、なんならどのゲームにもしょっちゅいる存在だったから攻撃のモーションをある程度予想は出来ていたけど、強い魔物になるほどその考えは通用しなくなる。だから鑑定系統のスキルが欲しいのだが、いかんせん俺のスキルは『貫通』という鑑定とは全く縁のないものだし、『鍛冶師』も装備品の鑑定ができるだけで人物・魔物自身の情報を見ることは出来ない。だから鑑定できるような品が店に置いていないかを確認するために行こうと思っていたのだが...
「今思えば、それ『鍛冶師』で出来るんじゃね?」
完全にその可能性を見落としていた。俺はすぐに能力開示画面から『鍛冶師』の詳細を開く。相手の情報を見れるものについて頭でイメージすると、画面にそれが出てきた。
付与効果:「鑑定」
自分が指定した対象の情報を読み取ることができる。目を覆う装備品に対して付与可能な効果。この効果を付与した装備品に含まれる魔力量に応じて効果が強力になり、より詳細な情報を読み取れる。
「俺の職業でどうにかできるというのは分かったが、装備品に含まれる魔力量というのがよく分からないな。自然と魔力を含んでいるのか?」
一つ疑問が解決したと思ったら、また別の疑問が浮かび上がってくる。この疑問に関しては俺の頭では無理だ。武具屋の店主に聞いてみるか。
「......それにしても、空属性かぁ。」
まぁた「ハズレ」って言われたよ。まぁ職業にしても今回の属性にしてもハズレと呼ばれる理由は理屈としては間違っていないんだが。
「でもゲームだとよく見る聖属性は使い手が少ないはずなのにハズレではないんだよなぁ。やっぱり需要の有無が原因か?...でも逆に言えば空属性にも需要が求められる可能性があるってことだよな。みんなが気づいていないだけで。」
空属性が風属性とは区別されていることからして、なにか空属性にも特異的なものがあるはずだ。それにおそらくだが、
「俺のあの攻撃は空属性のアーツかもしれない...」
俺の空属性の適性が抜群に高いこと。俺が放った斬撃波がマジックアーツなこと。そしてその技をどれだけ放っても何も体の変化は起こらないこと。これらを考慮すれば必然的にあのアーツが空属性のものだという結論にたどり着く。
「ああ~、さっきのギルドで聞いとけば良かったぁ。」
受付の人から聞いたときにもしやと思っていたのだが、「空属性の持ち主がほとんど存在しないからそのマジックアーツを見つけたなんて言ったら何されるか分かったもんじゃない」と考えてしまって言わずじまいになったのだが、こんなにモヤモヤとするなら言えばよかったと後悔してる。
そんな若干の不快感を抱いていたら、例の武具屋の前に着いた。見た目は一般的によくある一軒家と変わらないものの、扉にかかっている看板には『ラドゥス武具店』と書かれてある。多分、店主の名前がラドゥスなんだろう。
俺は中に入ろうとしたが、一つ忘れていたことを思いだした。
「あぶねっ、念のためにあのスキルを取っておかないと。」
俺が所得しようとしているスキルは『偽装』である。
通常スキル『偽装』:自分のステータス内容を書き換えることができる。ただし、レベルとステータスは実際の数値よりも高くすることは出来ない。偽装した内容が看破される確率は、
氏名 →10x%(最大95%)
レベル&ステータス→5x%
スキル →3x%
先ほどのギルドでの出来事で、俺は完全に忘れていた。「グラン=ヘレクレス」という名前を捨てて別人として生きていこうと決めたのに、前提になる偽名を考えるのをすっかり忘れていた。今後また名前を聞かれることは必ずあるだろうし、なんなら聞いてきた相手が鑑定できるヤツだったら嘘だってことは一瞬でバレる。
なので自分はもうグランではないと意識するため、そして他の人にバレないようにするため、このスキルを取得しようと思ったのだが、
「必要なポイント多すぎるだろぉ...」
スキルを取得するのに10BPを消費し、レベルを2,3...と上げるたびに20,30と消費されていくため、俺は最終的にスキルレベル5までしか上げることができず、のこったポイントはたったの7になってしまった。最低でもレベル9まで上げたいのだがそこまでに必要なBPは300。森で得た分のおよそ2倍だ。さっさとレベルを上げて強い魔物を倒せるようにならないとなぁ...
イオ=ウォルク(グラン=ヘレクレス)
<ステータス> レベル6
体力 42
筋力 42
敏捷力 42
耐久力 40
魔力 40
<特殊スキル>
『貫通』(レベルMax)
<通常スキル> BP 7
『偽装』(レベル5/10)
<職業>
『鍛冶師』(レベルMax)
「ごめんくださ~い。」
「あいよー! ん? 少年、初めて見る顔だな。どこから来たんだ?」
奥から出てきたのは、まだ早朝で寒いのに黒のタンクトップを着た筋骨隆々の、顔からして20代後半だろう男性だった。
「はじめまして。隣のカムルから来ました、グ...イオと言います。昨日、儀式を受けて今さっきアテネスに来ました。受付の人が『武具を買うならここがいいですよ』と言っていたのでやってきました。」
「おぉ! そうかそうか! にしても朝早い入店だな。一応店は開いているが、こんな時間帯に来る客はそうそういねぇぞ。そんなに早く冒険者になりたかったのか! 俺も10歳の儀式が終わったらすぐにギルドに向かったからその気持ちはよ~く分かる! よし、遠慮なく見て行ってくれ!」
受付嬢がおすすめしていたのが納得できるほど気さくな若者だった。逆に胡散臭く感じてしまうのは絶対に言わないが。
扉から離れて中に入ると、いろんな種類の武器が置かれていた。剣や刀,杖,弓,鎌などなど、豊富な品揃えがウリですとでも言わんばかりに配置されている。中には貴重なものなのかショーケースに入っている武器もあった。ちなみに値段を聞いてみたら最低でも大金貨10枚はするという。国家予算とまではいかないにしろ、一般的な貴族でさえも簡単には手を出せない代物だった。
武器の売り場を抜けると今度は防具のコーナーだ。鎧はもちろんのこと、籠手や兜,ブーツなど一見防具に見えなさそうなものまで売っている。武器よりは少ないがショーケースの中に飾られている防具もあった。
「これは...すごい数ですね。何を買おうか迷ってしまいます。」
「ハハ、当然だ! この店はアテネス一人気の武具屋だからな!...それで、何が欲しいんだ? そもそも何の武器を使いたいんだ?」
「えーっとですね、その前に聞きたいことがあるんですが...武器に魔力が備わっていることってあるんですか?」
「ん? おお、あるよ。だいたいの武器は魔力が含まれていないが、稀に魔力持ちの武器が出現することがあるんだ。なんでそんなことが起こるのかはまだはっきりとは分かってないんだが、とある仮説が有力なんだ。それは武器自体が魔素を大量に吸収することで誕生するという説だ。
検証はまだ行われていないけど、ほとんどの研究者はその仮説を前提としているんだ。彼らはこぞって魔石の存在をその根拠としている。魔石は鉱物が周辺の魔素を吸収することで出来あがるからな、その現象がが武器に起こってもおかしくないと考えているんだ。...ところでよくそんなこと知ってたな。何で知ったんだ?」
「え、えーっと本に書いてあったんです。でもほんとのことなのか疑問に思ってたので、ご主人なら知ってるかなと思って...」
「へぇー、よく勉強してるんだね。俺が君くらいの歳のころは勉強とか憶えるのが嫌いだったからずっと剣を振ってたよ。ハハハッ」
あぶねぇ~、なんとか誤魔化せた。まぁ、馬鹿正直に『鍛治師』のことを話したとしても冗談だと思われてたかもしれないが。
とりあえず気になっていたことは解決した。魔力持ちの武器は、魔石と同じように発生することが可能らしい。つまり、俺がその装備品を作るためには魔石を材料とした合成という過程が必要になってくるのではないだろうか。
「あっ、さっきの言葉で気になったんですが、魔石ってどういった見た目をしているんですか? 俺、実物を見たことがなくて。」
「それなら、防具の売り場よりもさらに奥に置いてあるぜ。魔石は主に魔導士の持つ杖にはめたりして使うからこの店にも置いてあるんだ。他にも使い道はあるけどね。」
店主の言葉に従ってさらに奥に進むと、自分の目と同じくらいの高さの棚に大小さまざまな鉱物が置かれていた。完全な球形のものもあれば、言葉で表現できないくらい歪なもの、ゲームでよく見る四角柱が組み合わさったものもあった。その中で、内側から輝いている鉱物が置かれている場所があった。
「これが...魔石ですか?」
「その通り。通常の鉱物は表面がキラキラしているのだけど、魔石はその逆で内側に溜まっている魔力によって中心が輝くんだ。あと、内側に秘めている魔力の属性によって発する光の色が変わるんだ。赤色に光っている魔石は火属性、という風にね。ちなみに属性が無い魔石は白色だよ。」
「ということは、適正ではない属性の魔法でもこれを使えば発動させることができるんですか?」
「出来ないことはないけど、魔力の消費量は半端じゃないからやめといたほうがいいね。魔石がそもそも高価だからそんなことをするのは、めちゃくちゃお金に余裕がある人だけだ。なんせ、属性ナシの魔石でさえ直径1セルトにつき大銀貨1枚かかるし、属性アリの方になると直径1セルトにつき大銀貨5枚もするんだ。自分に適性がない魔法ばかり使っているとお金がいくらあっても足りないよ。」
なるほど、理論上出来なくはないけどそんなことをするのは現実的に無理というわけか。まぁ、俺の魔石の使い道は別に魔法のためではないから関係ないが。
「じゃあ...この魔石を買ってもいいですか?」
俺は自分の手より若干大きめの魔石を手に取った。『鑑定』効果を付与するためならこのくらいは必要な出費だ。
「俺はいいけど...それ属性ナシのほうだよ? 時間をかければ自分の魔力属性に変えることもできるけど、それまではほとんど使い道がないよ。大丈夫?」
「全然構いませんよ。俺、冒険者兼旅人としてこれから生きていくので時間はたくさんあります。」
「お、おお、そうか...今の段階で何がしたいのか決まっているとは。...よしオッケーだ。今測って直径10セルトだったから金貨1枚分必要だけど持ってる?」
「はい、大丈夫です! お金ならある程度は持ってますから!」
俺は小袋から金貨を取り出して店主に渡し、同時に店主から魔石を受け取った。一番重要な買い物はこれで済んだが、やるべきことはまだ残っている。
「あと他に聞きたいことがあるんですが...」
俺は腰の左側にかけているあるものに触れながら店主に尋ねた。
大まかな流れはとっくの前にできていたのに細かい部分を書く気にならず、ずるずると書いていたら1週間以上経過していました。しかもいつもより文章量が2倍。もうちょっと頑張ろ...
こんなド素人の作品を読んでいただいた読者の皆様、誠にありがとうございます。これを伝えるのは二度目になりますが、筆者自身は暇つぶしとして頭の中で思いついた世界を文章にしてみただけですので、投稿頻度は不定期になります。ご理解いただけるとありがたいです。




