アテネスにて その1
普段は小説を読む側のド素人が暇つぶしに書いてみた作品ですので、読者の皆様も暇つぶし感覚で気ままに読んでいただけたら幸いです。また、本業の方が忙しいときがありますので、感想や評価を読むことはあまりできないかかもしれません。ご理解のほどよろしくお願いします。
外壁が見えてから2分後、俺は門の前にたどり着いた。のだが、
「む、誰だ!? 止まれ!」
いきなり門番に止められた。まぁ当然の対応か。今の俺は黒のロングコートに加えてさっき倒したウルフをひもで括った状態にして引きずって歩いているからな。初見だとヤバいヤツが来たようにしか見えない。ここは子供らしい振る舞いを見せておかなくては。
「おはようございます。冒険者になりたくて隣のカムルからやってきました。」
嘘をついてしまった。だけど、素直に公爵直轄地から来たって言ったら、俺がここにいたと追っ手にすぐに気づかれてしまう。
「な、なるほど...ここに来た事情は分かったが、担いでいるものは何だ? 見せてくれ。」
「これですか? あそこの森で倒してきたウルフです。はい。」
俺はそう言って足をひもで結んだ5匹のウルフを見せる。
「なんだ魔物か。この時間帯は暗くてよく見えないから、てっきりその歳にして、もう犯罪に手を染めてしまったのかと思っちゃったよ~。」
いやいや、おかしいだろ! 暗くてよく見えにくいからって、そんなすぐに犯罪容疑の目を向けるのかよ!? こいつがおかしいのか、それともそういう規則なのか分かんねぇな。俺としては前者であってほしいけど。
「あはは、とりあえず疑いが晴れてよかったです。えっと...冒険者ギルドに行きたいので、中に入っても良いですか?」
「ああ、大丈夫だ。この通りの途中にひと際でっかい建物が右手にある。そこが冒険者ギルドだ。その左奥に受付嬢がいると思うからそこで手続ができるぞ。あとちなみに、今後はあそこにある台車を使うといいよ。大量の魔物を狩りたいときにあれは便利だからね。」
門をギギギと開けながら、門番の兵士はそう教えてくれた。確かに魔物を倒した後のことを今から考えないといけないな。やるべきことが一つ増えてしまった。
「教えてくれてありがとうございます。それでは行ってきます!」
「おう、凄腕の冒険者になってこいよ!」
意外と気さくな人だったな。門の前に立ってる兵士ってめっちゃ頑固なイメージがあったけど、あの人が特殊なのかな。他の街もそうであってくれるとありがたいんだが。
俺はさっきの兵士に言われたとおりに真っすぐ大通りを歩く。2分ほど歩いただろうか。
「確かにこれはデカいな...」
2階建ての一軒家が立ち並んでるなかに、ドォォォンという擬音語が似合いそうな5,6階建ての建物が立っている。扉を開けて中に入ってみると、冒険者らしき人は手で数えられるほどしかいなかった。朝の5時半だからか、夜型にあたる冒険者はまだ寝ているのだろう。周りの目を気にする必要がないと分かった俺は堂々と歩いていく。左奥のカウンターに行くと、確かに上の看板に『入会・相談窓口』と書かれてあり、そこで何やら書類を書いている女性がいた。受付の人だろうか。
「すいません。冒険者になるための手続きはここで出来るのですか?」
「あっ、はい。こちらで承っております...あら、こんにちは。どこから来たの?」
肩に当たるか否かぐらいの髪型で、緑のワンピースを着ている目の前の女性は、俺の背が彼女よりも低いからか、俺の子供と話す口調で話しかけてきた。前世で社会人だった俺にとって少しむずがゆい感覚ではあるが、見た目がこんなんだからな。割り切るしかない。
「隣のカムルからやってきました。昨日天授の儀式を終えたので、冒険者になりたくてここにやってきました。」
「あらそうなの。冒険者になるのが楽しみだったのね。分かったわ、今から登録しましょう。ちょっとここで待っててね。」
そう言うと受付の女性は奥に行った。数秒後、『ガサゴソ、ゴツン!...痛った~!』という音(?)が聞こえてきた。どうやら登録に必要なものを探しているらしい。奥で何が起こっているか分からないのだが、彼女は大丈夫なのだろうか。
それから少し待っていると『あったー!!』という声が聞こえ、その後すぐ彼女が奥から戻ってきた。1枚の小さめの書類とサッカーボールくらい大きな水晶玉を手に持っていた。
「さっきすごい音がしましたけど...。」
「ああ、大丈夫大丈夫、気にしないで! これを探していただけだから!」
本当に大丈夫なのか心配だが、子供に心配をかけたくない思いがあったのか、それ以上は教えてくれなかった。
「まず、登録するのにお金がいるんだけど、持ってるかな? 銀貨3枚が必要なんだけど。」
この世界の貨幣制度は基本的に硬貨を主としている。一応紙幣もあるにはあるのだが日本とは真逆で価値が一番低い。大金貨が通常の貨幣で一番価値があり、次に金貨,大銀貨,銀貨,大銅貨,銅貨となっている。全て1:10の換金制度を取っており、例えば金貨10枚で大金貨1枚に変えられる。
ちなみに、どの国でも硬貨は同じ価値なのかというとそうではなく、さっき言った紙幣が関わってくる。例えば、リーゼウス王国では銅貨1枚とリーゼウス王国紙幣10枚が同価値なっているのだが、俺が行こうとしているギザイナ帝国の紙幣は20枚が必要になっている。ギザイナは貿易国であるため、他の国よりもインフレが起きやすいらしい。そこで5年に1回、国同士の会談で為替の取り決めを行っている。公爵であるカルロスもそれに関与しており、過去に俺がカルロスに連れられて帝国に行ったというのもこの件だったのだ。
細かく言うと、国内でも地域によって価値は若干変わってくるのだが、俺が参考にしているデータとして、ヘレクレス公爵領に住む一般民衆の平均月収が大銀貨1枚(=銀貨10枚)というのがある。
そして俺は公爵家の息子だったため、毎月小遣いでもらっていた金貨と大銀貨10枚ずつが今手元にある。前世の俺からしたら、子供に渡す金額ではねぇだろと文句を言いたくなるが、今後一人で暮らすにあたっては重要な資金だ。使うタイミングを間違えてはいけない。
「大銀貨でもいいですか?」
「へぇ、結構持ってるのね。両親からもらったのかしら。はい、登録料を差し引いて銀貨7枚をお返しするわね。それじゃあ、最初はこれに名前を記入してくれる?終わったら次に魔力登録をしてもらうから。」
...しまった。一番重要なことを忘れていた。親の手から無理やり逃れてやってきた身だ。ここでそのまま「グラン=ヘラクレス」と名乗ってしまったら一瞬であの家に戻されてしまう。それだけは避けなければ。
とりあえず名前は前世の名前をもじって「イオ」にしよう。問題は苗字のほうだ。この世界でそれっぽいものが思いつかない。なにがある!?
「ん、どうしたの?」
「あぁいえ、大丈夫です! 字は習いましたから!」
とにかく何か書かないと! ええっと、俺の前世の苗字は「武本」だから...。武、武士、兵士...。あった!
『イオ・ウォルク』 俺は紙にそう書いた。「武」つまり武士と「本」をそれぞれ英語に訳すと、「ウォリアー」と「ブック」だ。それを組み合わせると良い感じに苗字っぽくなった。
「えっと、イオ君って言うのね。それじゃあ次に、こっちに手をかざしてくれる?」
「...これって。」
「これは魔力結晶っていう魔道具なんだけど、人の魔力を登録する機能があるの。これを使って、起きた犯罪の当事者や被害者を見つけたり、冒険者ランクを変動させることができるんだ。」
「...冒険者のランクの仕組みはどうなっているのですか?」
俺は結晶に手をかざしながらそう尋ねる。
「基本的には一番下のGランクから始めるの。そこから討伐した魔物や達成した依頼の内容によって一つずつF,Eという感じで、Bランクまではそうやって上がっていくんだけど、それより上のAランクと一番上のSランクは定期で行われる昇格試験を通過しなければなれないの。でも、Bランクになれるだけでも凄いことだから、まずはそこを目指して頑張ってね。
っと、そろそろ魔力が登録されそうね。どれどれ......へ?」
「どうかしましたか?」
今の反応、儀式後の鑑定士の時と同じだけど、まさか魔力登録で氏名がバレてしまうのか!?
「いや、珍しい魔力だったからびっくりしただけ。君、空の属性なんだね。」
「くう? くうって何ですか?」
「そのまんまの意味よ。空の属性の魔力の持ち主は空気を操ることに長けているのよ。空属性と似たようなものに風属性っていうのがあるんだけど、そっちは空気の流れを操る属性。まぁ、魔法の効果はあまり変わらないけどね。ただ...イオ君には悪いけど、空属性は『ハズレ』って言われているの。」
出た! またしてもハズレ! でもこの世界のハズレの基準はあてにならないからな。
「なぜそう言われているんですか?」
「さっき言っちゃったけど、空属性はとても珍しいのよ。単一属性魔力持ちの8割が四大属性,火・水・土・風で、そして2割弱を光属性と闇属性、残りがその他っていう感じなの。だから、あなたは特殊ではあるけど、その一方でほとんど研究が進んでいないという現状があるのよ。
もちろん空属性は風と似ているから、使えないというわけではないんだけどね。ただ空属性の固有の力を引き出した魔法が生まれてないから、もったいない属性という意味合いで『ハズレ』という言葉が使われているの。」
なるほど、つまり珍しすぎてメジャーな属性に比べて全然研究の歴史が浅いのか。まぁ、需要の少ない属性の魔法に研究費を使うよりかはさっき言ってた四大属性に費やした方が絶対得だもんな。
「空属性の魔法がなくても、頑張れば風属性の魔法を習得することは出来るんですか?」
「うーん、私は魔法学校の先生じゃないからはっきりとは言えないけど...でも君の魔力の色はとても濃いから多分大丈夫じゃないかな?」
「色の濃さが関係してくるんですか?」
「そうだよ。濃さによってその属性への適正度合いがある程度分かるんだ。色の濃さっていう言い方だとちょっと勘違いしちゃうところはあるけど、色自体の濃さはみんな一緒なの。分かりやすく言うと、絵具から出したそのままの色はその属性に対する適性が高い。逆に、その色に水を加えれば加えるほど適性は低いと判断できるのよ。...ほら、イオ君の魔力は水を一切入れてない絵具みたいに濃いでしょ?」
結晶の中を確認すると、確かに前世の小学生の時に見た、水で一切薄めていない水色の絵具のような色をしている。
「空属性は水色なんですね。」
「そう、よく水色だからそのまま水属性だって勘違いする人がいるんだけど、水属性の場合はどっちかっていうと群青色に近いわね。『念のため、水色も覚えておいてね』とギルドマスターに言われたけど、まさか本当に見る日が来るなんてね。10年ここで受付嬢をやっているけど初めて会ったわ。」
「じ、じゅうねん......受付のプロですね。」
俺だったらもって2年だな。
「あら、ありがと。確かに私はベテランの方に入るかもしれないけど、もっと長くやってらっしゃる人もいるわよ。...コホン、とにかくハズレだからといって魔法の習得を諦めるのは早いというのは知っておいてね。」
「分かりました。ありがとうございます!」
「少し長くなっちゃったけど、とりあえず登録の手続きは完了したわよ。手の甲を確認してごらん。」
見るとそこには水色で「G」となぞられていた。
「ギルドで魔物の買取をしたり、依頼の達成が確認されたらさっきのように手をかざしてランクを昇格させることができるから。ちなみにどこのギルドでも同じ仕組みだからね。あと他に何か質問はある?」
「えーっと...」
俺は床に置いてたウルフをパッと確認する。
「聞きたいことがあるんですが...」
思いついたことをポンポン書いていたらいつもより長くなりました。
こんなド素人の作品を読んでいただいた読者の皆様、誠にありがとうございます。これを伝えるのは二度目になりますが、筆者自身は暇つぶしとして頭の中で思いついた世界を文章にしてみただけですので、投稿頻度は不定期になります。ご理解いただけるとありがたいです。




