私は走る
私は走っている。
どうしてそんなことになってるかと言うと、一本のメールからだった。
今日は大学が午前中だけだったので、昼から買い物に出かけた。
大根とキャベツを買った。大根とキャベツは素晴らしい。
煮ても、焼いても、生でも何でもできる万能野菜。
焼き魚は大根おろしがないと食べる気がしない。
キャベツがないとお好み焼きが食べれない。帰ったら収穫祭をしよう。祭りだ。
「ふふん、ふふん」超ご機嫌な私。大根とキャベツの重さも気にならない。
そんな時、友達のさっちゃんからメールが。
「走って、お願い」
?なんだこれは。
「3時までに、モールに」
えっ何時って30分もない。って考えてる暇ない。
とにかく走ろう。
あ〜スニーカーでよかった、ヒールだったら目も当てられない。
こっちのが近いかな?
あれ、ここどこだろう。
「すみません、モールってどっちですか?」
とりあえず優しそうなお姉さんに、聞いてみた。
「え、反対…あ ありがとうございました」
反対に走ってどうするんだ。
んもうこんな時に限って。
それにしても、さっちゃんなんだろう、何かあったのかな。
心配だ。
ああ、早く信号変われ。
右に行ったほうが早いよね。
バン
あ、何。
段ボール箱を蹴飛ばしてしまった。
「お姉ちゃんちゃんと拾ってよ」
「すみません、ちょっと今急いでるんで」
「そんなこと関係ない、自分のした事は自分でする」
「はい」
もうなんでこんな時に。
「急いでいるんだろうけどもう少し丁寧にやってくれ」
「あ、はい」
怒らなくてもいいじゃない。
「どうもすみませんでした」
「あーこっちも言い過ぎた」
そうなら最初から言え。
とにかく、絶望的な時間
どうする。
んー
あ、自転車屋さん。
「すみませんが自転車貸してもらえませんか?」
「は、ここは自転車貸しじゃなくて売ってるんだけど」
「あ、はいわかってはいるんですけど、ちょっと急ぎじゃないといけないことがあって」
「その顔じゃワケアリみたいだな、ちょっと待ってな」
はぁ〜優しい人でよかった。
奥からいかにも古そうな自転車を持ってきた。
「これ、返さなくてもいいから、でも捨てるときはちゃんとするんだぞ」
「はい、ありがとうございます」
やったこれで間に合う。
でも。
こういう時。
絶対おきる。
テンプレ。
ぷしゅぅ〜
やっぱり。
お約束。
ガタガタいわせながら、走る。
走りにくいのも、もちろんあるが。
恥ずかし過ぎる。
「あの子なんで、パンクしたまま走っているんだ」
言ってないけど。
そう聞こえてくる。
全国民から言われている気がする。
でも仕方ない。
さっちゃんのためだ。
頑張れ私。
負けるな私。
泣くのはあとだ。
歯をくいしばり。
見えてきた。
あれはゴールだ。
人生のゴール。
「ついた」
さっちゃんにメールだ。
「間に合ったのね、よかった。オレンジの目立つ店があるでしょうわかる?」
えっと、あ、あれね。
とりあえずわかるってメールする。
いつのまにか、大根とキャベツも無くなっていた。
「限定の新作シュークリーム買って、今日の3時までなの、一人二つまでだから一個あげるね。あたし補習で行けなかったんだ てへ」
絶対しばく。
暑いので真似しないようにしてください
誤字報告ありがとうございました