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6話

 三人でひたすら木の皮と枝をすり潰し、どうにかいい感じに繊維を細かくできたので皮と枝を別々の鍋に入れて煮込んでいく。

 二時間程煮込んだ物を布で濾して新しく鍋に水を入れて濾した物をを鍋に入れ蓋をしたら今日はここまでだ。はぁー疲れた。


 夕食の席でアイク兄さんとアイラ姉さんが紙の話をしないか心配だったけど約束通り喋りはしなかった。





 翌日、いつも通りの午前中を過ごして昼食を済ませた。

 アイク兄さんとアイラ姉さんは午後も剣の鍛錬をしてるのでその間に必要な物を準備して紙漉きも作った。

 紙漉きは目の細い網は無いのでベットシーツを代用にした。


 水浴び用のタライに昨日作った物を入れ更に水と糊を足す。

 試しに手で掬ってみると糊を入れた為か少しとろみがある。


 準備が終わりニ人を待ってるあいだ暇なので、最近魔力切れまで魔力を減らせてないので今のうちに魔力を消費しておく。

 ひたすら両手で同時発動、いい感じに減ってきた。そして残り魔力が3桁を切った辺りてアイク兄さんとアイラ姉さんがやって来た。


「アレンどんだけ魔力あるんだよ。気になって集中できなかったよ」


「ホントね、昔はしょっちゅう魔力切れで倒れてのに」


「あはは、······まぁ今は少し多くなったかな」


「普通あれを少し多いとは言わないけどな」


「ま、アレンだしね」


「あー、······うん」


「なぁ、それでこれが昨日作ったやつか?」


「そうだよ。昨日のに糊も混ぜてある。あとはこれをこの紙漉きでいい感じにしたらいい感じに紙が出来るかも?」


「何で疑問形?しかも説明雑だな」


「みんな初めてなんだからとりあえずいい感じにやってみましょうよ」


「まぁ、そうだな。いい感じにやるか」


「一応最初は僕がやってみるね」


 さて、上手くいくか。紙漉き沈めて水を掬ったら紙漉きを傾けてやる。

 う〜ん、結構難しいな、ま、何回かやれば慣れるっしょ。

 よし、とりあえずこんなもんだろか。あとはこれを日陰で乾かせば完成?かな。


「えーと、こんな感じでいいと思うんだ、たぶん、きっと、乾けば」


「まぁ、何となくやり方は分かった。それにしてもこれが乾けば紙になるのかぁ」


「まだ、期待しないでね。失敗するかもしれないから」


「きっと大丈夫よ。次は私がやってみるわね」


「表面が凹凸しない様にできるだけ薄くね」


「分かったわー」


 用意した紙漉きは十セット、僕が三つ、アイク兄さんが三つ、アイラ姉さんが四つ使い十枚の紙を試作した。


 一番いい感じはアイラ姉さんだった。





 紙の試作品を乾かし始めて二日経った。この二日間は午前中にランニングと鍛錬、午後に紙漉きを作ったり巣箱を見に林に行ったりした。毎日巣箱を見るが蜂はまだ入ってない。まぁ、巣箱を置いてまだ数日だしね。


 そして、とうとう紙の試作品が完成?したが見た目は地球の紙の様に白くはない。うーん、漂白剤とかで白くしないといけないのかな?何かあったかな確かアルカリ系のが必要だったはず、洗たくで白い物を洗う時ってどうしてるか後でケーラさんに聞いてみよう。


 まぁ、何にしても紙だよ見た目は、どう見ても紙。初めて作ったから紙の表面にばらつきはあるけど、触った感じもそんな悪くない、と思う。三人で試し書きしてみたけどそこまで悪くはなかった、あとは試行錯誤で良くなりそうだ。


 三人でハイタッチ。ここまできたら報告しようと三人で父さんの書斎に突撃した。


「······すごいな紙だ、色も羊皮紙とあまり変わらないな。これが本当に木から出来ているのか?」


「ええ、そうです。最初アレンが木を茹で始めた時は驚きましたけど」


「そうか、これが木から·····」


 ああ、父さんも貴族だな。思考の海に潜ってしまったか。たぶん植物紙の利用方法を考えているな?

 まぁ、利用して貰うつもりで作ったからね、父さん達には上手に利用して欲しいと思う。


 待つこと数分どうにか思考の海から父さんが浮上した。


「あー、すまなかったね。えーっと、紙だとあれだね、この紙の事は何といったっけ?」


「私たちは植物紙と呼んでいます」


「植物紙ね。分かりやすくて良いね。じゃあ、この植物紙は父さん達に任せてくれないかな?」


「私はアレンが良いなら構いません」


「オレもアレンがそれでいいなら構いません」


「僕は元々この男爵領の特産になれば良いなと思い作った物なのでもちろんお任せします」


「そうか、助かるよ。じゃあ、また呼ぶと思うけど一旦下がっていいよ。それとアイラ、ケーラに母さんとギルバートをここ来るようにと伝えてくれるかい?」


「分かりました、ケーラさんに伝えますね」


「よろしくね」


 書斎を出た僕とアイク兄さんは子供部屋に先に向かい、アイラ姉さんはケーラさんに伝えて後から部屋に入ってきた


「いい感じになるといいな」


「そうだね。いい感じに使って欲しいね」


「きっといい感じになりますよ。それよりアレンは植物紙に不満がありそうですね」


「んー、不満というか不安というか、植物紙を世間に出すには大きな問題あるなーと」


「どーいうことだよ?」


「何て言うか、今の植物紙は羊皮紙に色が近いでしょ?」


「そうね。それが不満なの?」


「まあ、不満だけど、不満じゃなく、むしろ伸びしろが残って良かった?んだけど利権の問題を忘れてたなぁーと」


「だからどっちだよ!」


「まぁ、僕的には今の植物紙は低品質だけど、今の紙でも十分使えそうでしょ?」


「ええ、十分使える紙だと思うわよ?」


「そうだけど、まだ品質は良くなるはずなんだ。それでも今の紙は低品質品として使えてしまう。それに品質が良くなった高品質品の紙が出来上がれば、低品質品と高品質品の紙が商品になるよね。ただ問題は羊皮紙との棲み分けなんだよね。きっと低品質品は平民でも使えるようになるし、高品質品は貴族使いや契約書類に使えるようになる。でもそうすると羊皮紙は?」


「棲み分けはしらーけど羊皮紙は高いから、高品質の紙も低品質の紙も羊皮紙より安く売ればここも儲かるし平民も安い紙が使えていいじゃねーか」


「いえ、それでは確かによろしくないわね」


「でしょ」


「何がだよ、二人だけで会話すんな、オレにも何がよろしくないか説明しろよ」


「アイク兄さんも一応貴族なんだから勉強した方がいいよ」


「悪かったな一応で、で?何がよろしくないんだよ?」


「この男爵家は新興の下級貴族よ。紙のシュアの取り合いになったら潰されると言うことよ。でしょ?」


「そういう事、たぶん?と言うか絶対に羊皮紙の利権に大きく絡んでる上級貴族がいると思うよ」


「あぁー、なーる、言いたいこと分かったわ。確かに、家の喧嘩になるのか」


「うちは絶対に負けますね」


「しかも、近所のどっかの豚侯爵とか絶対利権に絡んでそう」


「アレン、言葉が汚いわよ、言ってることは合ってると思うけど。あと豚が可哀相よ」


「どっちもただの悪口じゃねーか、でも豚が可哀相は分かる」


「ならクソ侯爵はとりあえず置いといて、僕だったら条件付きで製造方法売っちゃうかな、······王家に。駄目なら最悪献上してもいいし」


「悪くないわね。王家にとても大きな恩が売れると思うわよ。ただしこの土地は貧しいままだけどね」


「王家か、でもせっかく三人で作ったのにままならんもんだな」


「まっ、仕方無いですよ。貴族と言う生き物は何して来るか分かったものではないですから、それに何かをやるにしても後ろ盾は大事です」


「なぁ、オレの弟ってホントにまだ七歳か?実はエルフかドワーフでオレより年上って事ないか?」


「アイクは男だから見てないだろうけど、私は母さんからアレンが生まれたところをみたわ。それに一応私達にもエルフの血は混ざってるわ」


「いや、冗談だから真面目に答えるなよ」


「分かってるわ、わざとよ」


「まぁまぁ、どっちでもいいじゃん」


「良くなねーだろ」

「良くないわよ」


「おぉー、流石双子」


「はぁー、···まぁいいや」


「まぁ、何しても爺ちゃんと父さんに任せればいい感じにやってくれますよ。そう言えば話し変わりますけどアイラ姉さんって洗たく出来ます、よね?」


「も、もちろんよ」


「おれは見た事ねーけどな」


「アイクが寝た後にやってるわ」


「はいはい」


「じゃあ、白物の汚れはどうやって落としてるの」


「そんなの、こうやって手で洗ってよ」


「それで落ちない、たとえば食べ物の染みとか付いた物は」


「えっと〜、その時はこうゴシゴシ洗うわ」


「それでも落ちなかったら?」


「そ、その時、もっとゴシゴシ洗うわ」


「うん。······分かったありがとう」


「いや、絶対洗ってなっ!?痛っ!頭グーで殴るなよっ!」


「う、うるさいわね!」


「あぁー、はいはいそこまでだよ。聞いた僕が!?痛っ!何で僕まで!」


「うっさいわよ!」


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