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5話

 アイク兄さんの特別授業の終了とともにセリナに魔法を教えるのは母さんになり、午前中の鍛錬が終わるとやる事がない。


 前はこんな時はカイル兄さんやケイト姉さんが遊んでくれたけど。···7歳でボッチかぁ。


 この村にはアレンと同世代の子供がほぼいない。なのでアレンやセリナはだいたいカイルやケイトに構ってもらっていた。


 村に子供がいないで友達がいないのは仕方ない。とりあえず村の中でもぶらつくかな、と適当に村を歩き始めたアレン。

 

 この村って開拓が軌道に乗って間がないからか人口が少ない。若い世代は一応いるにはいるが女性の数が少なく婚姻率が低い。なので夫婦が少ない、そのせいで子供も少ないという、というか村に子供が少な過ぎる。···大丈夫ですかこの村。


 因みになぜ女性と子供が少ないか?

 それは、元大臣ガストル侯爵が移住する者の大半に男を選んで送ってきた為だ。逆恨みの嫌がらせで。

 爺ちゃんが男爵になるきっかけになったロマニス王国との戦争で、爺ちゃんたちがいた冒険者部隊を指揮していた指揮官いた。その指揮官は冒険者の精強さから調子に乗って部隊に前進の指示をし、指揮官自身も強いと錯覚でもしてたのか、最前線で部隊を突出させ壊滅寸前の状態にした挙句指揮官も戦死。

 冒険者部隊にいた爺ちゃんはパーティーメンバーに行方不明者を出しながらも、他の生き残りと一緒に当時の王様(前国王)の部隊に合流し、活躍後に冒険者を引退して男爵になった。

 婆ちゃんとギルバートさんは、その当時のパーティーメンバーの生き残りで、パーティーメンバーで唯一行方不明になった女性の息子が父さん。


 侯爵は自分の息子が戦死したのは、冒険者のリーダー的存在だった爺ちゃんのせいだと思っているらしく、開拓団を出してやった体で戦争被害で苦しむ税金も払えない村人をここに送った。しかも大半が男で、男女比は九対一。

 そのせいでこの村は開拓当初から女性と子供が少ないので人口が増え難い。

 今は爺ちゃんや婆ちゃんの知り合いで、引退した女性冒険者やその紹介などがぼちぼち移住してきているが若い人は少ない。

 

 どうにかして人口を増やせないだろうか?


 人に必要なのは衣食住。服、食べ物、家かぁ···。この中で子供の僕にでも何とかなりそうなのは服か食べ物。


 服だと何が作れる?デザインは領都や王都ならいいけどこんな辺境の村じゃなぁ。

 じゃあ質なら?シルクとか羊毛は?

 まずこの世界に羊や蚕がいるのか分からない。

 じゃあ、やっば食べ物かなぁ、この村の気候は日本でいう所の九州から南だな、奄美とか沖縄に近いかも、雨も結構降るし。


 そうなると南で栽培されてる物でこの世界でいい値段で売れるもの。···絶対砂糖だろ。


 あぁ〜、サトウキビ〜、君はどこにいるの〜。


 あとは果物はあまり日持ちしないからこの世界の物流じゃ厳しいか。もしやるとしたらドライフルーツだよなー。

 あとあれだサツマイモ。だぁー、スイートポテト食べたくなった〜。

 ジャガイモもありだな、やっぱ芋って最強だよなー。


 それからトウモロコシと香辛料、大豆とかの豆類もいいな、乾燥させると日持ちするしね。


 とりあえずワッツさんには、サトウキビ、サツマイモ、ジャガイモ、トウモロコシ、香辛料、豆類を探してもらうとして、他の高く売れそうな物かぁ。貴族が欲しがりそうなもの、貴族、貴族ねぇ···。


 貴族は貴族でも女性を狙った方が良さそうだよなー。石鹸やシャンプーはありだな、あとは、化粧品?乳液とか?あっ香水と良くないか?香水はたしか蒸留器が必要だったか?違ったかな?でもアルコールが必要だったはずだから蒸留器は欲しいな、頑張ればウイスキーやブランデーも作れそうだし、ありか?ありだな。うん。


 それに、紙とかもいいかも、羊皮紙しか見たことないからね。和紙っぽいのなら作れそうな気がするし。

 うん、これも試してみよう。紙の材料は、どうにかなりそうだしね。


 ただあれだ、ここを発展させるなら、とにかくガストル侯爵が邪魔だな。コイツのせいで砂糖や酒が高過ぎてほとんど入って来ないし。

 あぁ、もう、無駄に関税高くしやがって。


 とにかくファーガス村人口増加&発展計画の為に、まず食べ物として芋類と豆類、特ににサツマイモとジャガイモ、大豆、それとサトウキビの確保。


 村の特産品の為に、サトウキビが手に入れば砂糖、あと出来れば、石鹸、蒸留酒、香水、香辛料、紙。


 うん、とりあえずこんな感じか。


 この中ですぐ試せそうなのは、石鹸と、蒸留器が作れれば香水かな。


 よしまずは鍛冶職人の所に行って簡易でいいから蒸留器を作れないか相談してみよう。



 鍛冶職人の店に着いたのでドアを開けて中に入るが店内には誰もおらず、棚には武器や防具が数種類、他には鍋やフライパンなどが置かれている。


 奥に居るのかな?とりあえずカウンターから奥の部屋に聞こえるように呼んでみる。


「すみませーん!カーラさんいるー?」


 すると、数秒後カウンターの奥の部屋から背の高い女性が出てきた。


「おっ、男爵のところの坊っちゃんじゃねーか、何だお使いか?」


 この女性は鍛冶職人のカーラさん、男みたいに喋るが赤い髪をポニーテールにしていて結構美人。


「お使いじゃなくて相談?かな」


「何だしけてんな、で?相談ってなんだよ」


「あはは···。買い物じゃなくてごめんね。相談はねー、作って欲しい物があるんだけど言葉だけじゃちょっと説明が難しいんだ。出来れば何か書くの物を貸してもらえない?」


「んー、書くもの···。ほれ、何を作らせたいのかこれに書いてみろ」


 カーラさんが羽ペンとインク壺、それと木の板をカウンターに置いた。


 蒸留器の説明をしながら図を木の板に書いていく。ただし今回はお試しなので簡易的な作りの物にした。


「とりあえずこんな感じの物だよ。作れそうかな?」


 カーラさんは僕が図を書いた木の板を手に取り、ブツブツ何か小声で喋ったあとにニヤっとして僕を見下ろした。


「ああ、これなら作れそうだ。蒸気を集める装置か···。こんな装置初めて見た。坊っちゃんが考えたのか?」


「うん?まぁ···。そうだね」


「そうか、しかし蒸気なんか集めてどうすんだ?」


「その辺のことはこの装置を使いながらじゃないと説明が難しいんだ」


「なら、いいや。で?作るのか?」


「作れるならお願いしたいけど、幾らくらい掛かるかな?」


「んーそうだなぁ、初めて作るし、まぁまぁ難しいからやってみないと分からんが、とりあえず前金に銀貨一枚で確実に足が出るから、残りは完成品と引き換えでどうだ?」


「いいの?助かるけど」


「ああ、坊っちゃんが払えなければ男爵に言えば払ってくれそうだからな。ただし一つだけ条件がある」


「···何ですか?」


「オレにもこの装置を使う所を見せてくれ、初めて見る装置だ、興味がある」


「それは別に構いませんよ」


「よし、なら決まりだな。ちょうど暇だったし今から始めるか」


「お願いします。じゃあ、前金です」


 ポケットから出すフリをしてストレージから金貨を取り出してカウンターに置いた。


「毎度、確かに前金で金貨一枚。とりあえず一週間後に来てくれ、たぶん出来てるはずだ」


「分かりました。一週間後に伺います」


「ああ」



 鍛冶屋から出て屋敷に戻る。とりあえずワッツさんに探して欲しい物を書いた手紙を書く。同じ様な内容を爺ちゃんにも書いて送ろう。


 蒸留器はどうにかなりそうだから、次は石鹸、シャンプー、紙かな。


 石鹸は水酸化カルシウムが必要だったような?消石灰だったかな?

 う〜ん、記憶が、思い出さないとちょっと無理かぁ、でもいつかは作りたいから一旦保留。


 簡単なシャンプーなら作れるな、屋敷でもたまに飲むヤシの実ジュース。村の周りの林とかにも生えてる。問題はハチミツがなぁ···。

 こりゃあ養蜂から始めないと駄目だな。ハチミツなら特産にもなり村の甘味にもなるしめちゃくちゃありだ。つか絶対養蜂やろ。甘味の為にも。

 でもそうなるとシャンプーも一旦保留かぁ。


 なら、紙は木の繊維で作れるはず···。木の質にもよるだろうからいろんな木で試してみるか。


 ······でも甘味の為にも養蜂からやろ。



 まずは巣箱だな、父さんに許可を貰い、屋敷の倉庫から村民の家を作った時に余って保管していた、木の板、釘、トンカチ、を持ち出し庭に運ぶ。


 どれくらいの大きさがいいか分からないので、数種類の大きさの箱を作る事にした。


 興味を引いたのか、庭で剣の稽古をしていたアイク兄さんとアイラ姉さんも途中参加、3人で巣箱と巣枠を作った。


 まだ地球の蜂との違いも分からないから、まぁ、とりあえずこんなもんだろ。


 箱に蓋をして、蜂が出入りする為の隙間から覗いてみる。

 うん、分からんけどまずはこれでやってみよう。

 どの箱が成功するか分からないけど、成功したらその箱を増やそう。


 場所は3人で相談して屋敷に近い林の中に設置していく、なんとなく箱の中に砂糖水も入れ皿も何個か置いたみた。

 これで入るのを待つだけだが、入らなくても時間がある時に巣箱を増やす予定だ。


 夕食の席、3人で巣箱の話で盛り上がっていると、セリナがいじけてしまったので明日4人で巣箱を作る約束をした。


 両親では母さんが乗り気で「成功したら特産にしましょうよ」と父さんに話していた。



 次の日、約束通り子供4人で巣箱を作ってワイワイしながら巣箱を設置した。セリナがとても楽しそうにしてたので、余りの木材で竹トンボ作って飛ばしてみせると、とても喜んだ。次は竹馬も作ってあげようかな。


 その日の夕食の席では子供4人で巣箱や竹トンボの話で盛り上がり、セリナはプレゼントした竹トンボの遊び方を楽しそうに母さんと父さんに話し、2人はその話をニコニコしながら聞いていた。




 次の日、今日は大きめのカゴを背負い巣箱の確認のついでに紙の材料を取りに林に来ている。


 流石に巣箱にはまだ蜂は入っていないが周りにはたまに蜂が飛んでいるし、そろそろ2月末だし可能性はあると思っている。この世界のミツバチが分蜂するなら、だけど···。


 さて紙の材料として欲しいのは柔らかい繊維の木か植物、木の幹は硬そうだ。試すなら枝の先とか木の皮、薪も必要なので落ちた枝を多めにカゴに入れる。

 植物も適当に持ってきたナイフで刈り取り種類だけ分かる様にしてカゴに詰め込んでから屋敷の庭に戻る。


 庭の隅っこに移動して石で簡単な竈を作った。植物は乾燥させる必要があるので近くに置いて乾燥させておこう。


 近くで剣の稽古をしている双子の兄姉に変な目で見られているが一旦無視だ。


 カーラさんの所で買ってきた鍋に木の皮と水を入れ火にかける。

 たまに木の枝でかき混ぜ、兄姉に変な目で見られながらナイフでひたすら枝を削る。


 一時間程たち煮た皮を触ってみると結構柔らかくなっていたので取り出し冷ます。空いた鍋には削った木くずと水を入れて、また火にかける。


 冷ました木の皮を石の上に置いて手に持った石で潰していく


 とにかく潰す、潰す、潰す、無心で潰す。


「アレン、何してるの?」


「うゎ!?」


「そんなに驚かなくても」


 ······びっくりしたぁ、無心になりすぎて全然気付かなかったわ。


「ご、ごめん集中してたみたい」


「ふーん、それで?さっきから何してるの?」


「えっとー、木の皮を潰してる?」


「自分でやっといて何で疑問形なのよ!···それでホントに何してるの?」


「うーん、実験かな?」


「···はぁ、まぁいいわ。で、何の実験なの?」


「成功するか分からないから、まだ秘密」


「そうなの?まぁいいわ。さっき一人でブツブツ言ってたから心配で声かけただけだから」


 んー、そのうち一人だと手が足りなくなりそうだから手伝ってもらおうかなぁ、すでに養蜂は手伝ってもらってるし。

 それに度々地球産の物も作るから今更な気もするし、···よし、手伝ってもらうか。


「アイラ姉さんは稽古終わったの?」


「ええ、今終わってアイクが先に部屋で着替えてるわ」


「このあとの予定は?」


「無いわ」


「なら、ちょっと手伝ってくれないかな?」


「別に構わないわよ、ただそれなら何をやってるのか教えてくれるわよね?」


「手伝ってくれるなら教えるけど、さっきも言ったけど成功するか分からないからまだ内緒にしてね」


「いいわ、手伝ってあげるし内緒にするわ」


「なら教えるね、植物から紙が出来ないかと思って実験してた」


「紙ですって!?植物で?」


「うん、そう」


「何でそんな事知って、···まぁ、いいわアレンだもの」


「えっ?僕だからってどういうこと?」


「別に?アレンだから?」


「何で疑問形なのさ」


「まぁ、いいじゃない。それで何すればいいの?」


「あー、うんそうだね···、えっと、まずは、とりあえず最初から説明するね」


「ええ、分かった」


「まず、植物から紙を作りたくても木や枝のままじゃ硬いから、柔らかくする為に煮る。そして柔らかくなったら潰して繊維を細かくするんだよ、こんな感じで、ただこれをもっと細かくしたいんだよね。そして細かくしたら水に入れてまた煮てからもっと柔らかくしたい。とりあえず今はここまで出来ればいいかな」


「じゃあ、これをもっと細かくすればいいのね?」


「うん、結構大変だけど」


「まぁ、やってみるわね」


 しばらく二人で作業してたがアイラ姉さんが屋敷に戻って来ないので、アイク兄さんが様子を見に来て結局アイク兄さんも手伝うことになった。

 うーん、これは早めにセリナも呼ばないとまたいじけちゃうな。


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