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41話

 アレンは、怯えたままの子供達の世話を村の女性に任せ村長の屋敷へと走った。


 広場にいた盗賊が大声で仲間を呼んだようだが、盗賊の仲間が集まってくる様子がなかったので、シンクが上手く囮をこなしているのだろう。

 ただ心配なのでとにかく急いでシンクのいる村長の屋敷に走る。




 村長の屋敷前では、シンクが作戦通りに十名前後の盗賊を相手にヤられない立ち回りをしており、相手が少人数になるようにあちこちに動き回り牽制をしながら防御に徹した戦いをしていた。


「良かったー、とりあえず怪我はー、してないかな」


 逆にシンクを相手にしている数人の盗賊は軽症そうだが血を流している。

 アレンは走りながらシンクを囲もうと動いている盗賊に向って魔法を連打する。

 アレンが戦闘に加わると、魔法を使用した撲滅力で盗賊の数がみるみる減っていく。

 シンクもアレンが戦闘に参加したのを確認すると、今までの防御に徹していた態度から一変、一気攻撃を仕掛け始めた。

 アレンがシンクの後方に移動して前衛と後衛の陣形が完成すると後はあっという間に見える盗賊を倒し終える。


「シンクさんよく耐えましたね。怪我はないですか?」


「まだまだ未熟ですね。少しだけ斬られました」

 

 シンクが左腕を掲げると斬りキズがある。


「一旦そこの陰で治療しましょうか」


 二人は民家の側に移動するとシンクの左腕の斬りキズを水で洗ってから持っていたポーションをかけた。


「ありがとうございます」


「いえ。それより、出てきた盗賊は今ので全部ですか?」


「ええ、村長の屋敷から出てきたのは十二名でした。倒した数も十二名なので間違いありません」


「了解です。周りの民家からも人の気配はないので残りは村長の屋敷にいる数名···んー、村長の屋敷からの気配は九。一つはミルさんの気配ですね」


「無事に村長の屋敷に侵入していましたか」


「じゃあ、僕たちは目立つように表から乗り込みますか」


 村長屋敷の扉は破壊されていたので、すんなりと屋敷に入る事が出来た。

 屋敷に入ると剣を構えた盗賊が三人、三人の後には女性の首にナイフを付きつけている盗賊が一人、その側に縛られた状態でしゃがんでいる女性が三人。


「とりあえず男の方は全員盗賊でよさそうです」


 シンク()にも伝わるようにわざと声に出す。


「では、この三人は私が相手しましょう」


 シンクさんにも伝わったようで剣を構えアレンの前に出た。

 その直後、女性の首にナイフを当てていた盗賊のナイフを持っていた右腕が床に落ちた。

 盗賊は「え?」と何が起きたのか分からないのか床に落ちた自分の右腕を見てから肩を抑え「イギャー!?」と声をあげた。

 剣を構えた三人の盗賊も突然後ろから聞こえた悲鳴に驚いて振り向く。

 もちろんシンクさんは後ろを振り返る盗賊を放っておくはずがなく、あっという間に斬り倒した。

 腕を斬り飛ばされた盗賊も屋敷の裏から侵入して待機していたミルさんによって意識を刈り取られている。


「僕の出番はありませんでしたね」


「ん、後ろから斬るだけだった」


「私も後ろから斬るだけてしたので」


「まあ、とりあえずここはアレなので縛られている女性の縄を解いて外に連れ出してあげて下さい」


 ミルの手によって縛られている三人の女性が縄を解かれ屋敷の外に連れ出された。

 そう、屋敷から連れ出された女性は三人だけ。

 もう一人ナイフを付きつけられていたが、何故か縄で縛られた形跡はなく、衣服も乱れていない女性がいる。


「で、あなたは誰ですか?まあ、何となく分かっていますが」


 この女性はアレンのマップで赤、つまり敵性の反応を表しており、しかも鑑定眼で鑑定したら、"厄介な称号"と"性別:男"と出ていた。

 つまり、彼女の見た目は女性だが女装をした(おとこ)だった。

 下を向き、彼はしばらく無言だったが突然笑い出した。


「あっはっは!そっかー!気付かれるとは思わなかったなー。うまくやり過ごせると思ったのに。あー参った、降参!」


 彼は両手を上げ、何故か楽しそうに笑っている。


「盗賊たちのボスである事を認めるのですね?」


「んー、認めるも何も、ボクが盗賊のボスって確信してる顔じゃーん!まあ、確かにボクが盗賊のボスだよ。手下は全滅かな?いやー参った、参った。でも、もういいや、そろそろ盗賊も飽きてたしー。次のロールプレイは、うーん、今度は別の国で違う組織でも作ってみよっかなー!うん、いいかも!国を陰から操る組織とかカッコイイかも!あっ!そうだ、なんなら君たち新しく作る組織の仲間にならない?今なら全員幹部だよー」


「···いや、遠慮します」


「えぇー、んーそっかー···残念。とりあえず今は諦めるしかないのかな?何かフラグを折った?それか別イベで仲間にするキャラとか、もしくは親密度が関係してる?んー、分からんないやー!今はとりあえず放置かなー。仕方ない、とりあえず一旦拠点に帰るかー。んじゃねー!リターン!」


 彼は一人喋ったと思ったらヤバい言葉を撒き散らして目の前から消えた。

 つい「チッ!」と舌打ちが出てしまったが仕方ないだろう。


「え?消えた!」


 横ではシンクさんが突然消えた彼に驚いている。


「逃げられましたね」


「えっと、逃げた?」


「ええ、たぶんですけど魔法を使って逃げたようですね『リターン』と言っていたので」


「では、彼女もアレン様と同じ転移が使えると?」


 んー、転移に似ているけど別の魔法じゃないかーと思う。『リターン』とか言っていたし何処かに登録ポイントがあるんじゃないかと思われる。


「きっと、転移に似た別の魔法でしょうね。因みに彼女ではなく彼でしたよ」


 しかし厄介も奴だ。出来れば捕まえたかった。すぐに意識を刈るべきだったな。

 咄嗟の事だったのでマーキングをしておらずマップで彼が何処に逃げたのか確認も出来ない

 しかも彼には"異世界からの訪問者(イレギュラー)"という称号が付いており、この世界をゲームか何かと思っているような話し方をしていた。

 "異世界からの訪問者(イレギュラー)"とあるので、この世界を滅亡から救おうとしているあの白髪の神様がこの世界に送ったとは思えない。

 

「だとすると女神の仕業か?」


「ん?女神様がどうかしました?」


「いえ、何でもありません。あー、とりあえず生き残った村のみんなを集めて盗賊を全て倒したと説明しておきましょうか。盗賊のボスが目の前で消えたと言っても信じて貰えるか分かりませんが」

  


 二人で村長の屋敷から出ると、ミルさんと縛られていた女性の他に、広場で子供の世話を頼んだ女性も居た。

 

「じゃあ、シンクさん説明は任せます」


「了解しました」


 こういう時は子供の僕が説明するよりは大人が説明するのが正解だろうと、シンクさんに説明を投げ、僕はこの後の事を考え始めていた。



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