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35話

 父さんから始まった自己紹介が終了したので、まずは屋敷の裏に建てた従業員用宿舎の案内をする。ただ、宿舎は僕も見ていないので母さんが案内してくれることになった。


 全員でぞろぞろと母さんの後について行くと、なかなかの大きさの建物が二棟建っている。一棟は従業員用宿舎で、もう一棟は見た目倉庫だ。


 母さんに案内してもらった従業員用宿舎の間取りは、一階は入ってすぐに二十人は座れる食堂で、奥に向かうと二段ベットを二台とテーブルセットが置かれた四人部屋が二部屋で、二階は二段ベットとテーブルセットが置かれた二人部屋が四部屋と、シングルベットと小さなテーブルセットが置かれた一人部屋が二部屋の作りになっていた。


 隣りの倉庫に入ると中は改築され一階と二階に分かれており、カーラさんに頼んでいた中型の蒸留器が既に二台設置されている。壁際には木樽も準備されていて、いつでも蒸留酒の生産を始められる様になっている。


 二階に上がるには新しく外から階段が設置されていて、二階は六つの部屋があり、うち二部屋には小型の蒸留器が置かれている。


「一階はアレンの要望通り、一階の半分が蒸留所で残りが蒸留酒を熟成させる貯蔵庫ね。二階は香水生成室二部屋と材料保管庫、それと、完成品の保管庫ね。一応匂いが混ざってしまわない様に部屋を六つに分けたわ。残り二部屋は今のところ保留よ」


「完璧ですね。それでいいと思います」


「じゃあ、まずは先にみんなの部屋を決めましょう」




 従業員用宿舎に戻り、四人部屋の二部屋をユイたち親子とネビルたち親子で使い、二階の二人部屋をラムとライ、一人部屋をエイヴァさんが使うことになった。

 馬車に乗せてある荷物をそれぞれの部屋に置いてから食堂に集まり、収納バックに入れていた食器などを渡していく。


「えっと、食堂での食事は野営の時みたいに、大人の女性陣が食事を作って全員で一緒に食べて下さい。それと最初の一月分の食費で銀貨十五枚出します。これで一月分の食事をやりくりして下さい。生活に必要な物は買うのですぐに教えて下さいね。一ヶ月後から給金を払い始めるので、給金が出始めたら成人からは部屋代として給金から小銀貨五枚差し引きます。それから福利厚生の一環として代表者に食費の補助金を月に小金貨一枚を預けますので食費の足しにして下さい。なので、エイヴァさん、アマンダさん、ユリナさんの三人で話し合って従業員の代表者を決めておいて下さいね。···うーん、他に何かあったかな?」


「アレン、給金を言ってないわよ」


「ああ、そうでした。給金は成人に月十五万ルペ、成人前の子供には月五万ルペです。なので部屋代を引くと、成人が銀貨十四枚と小銀貨五枚、子供は銀貨五枚のままですね。あとは······そうだ、売れ行き次第ですが、年に一回か二回、業績次第で気持ちばかりの寸志も考えています。それと、生活に必要な物で足りなければ直ぐに言って下さい、出来るだけ揃えるので。  ···最後に、皆さんにやってもらう作業には守秘義務が発生します。絶対に守って下さい、お願いしますね。何か質問はありますか?」


「あ、あのー」


「テオ、質問どうぞ」


 「えっと。オレ、今は十四だけど、年末には十五で成人だ、です。オレの給金はどうなるんだ、です。それと、成人前の子供の給金が安いのは何でだ、です」


「まず、テオの場合、今は十四でも今年成人だから給金は成人の金額で支払います。それと、子供の給金が安いのは、午前中は読み書きや計算の他にも礼儀作法や言葉使いを教えて、午後から手伝い程度のことをして貰うつもりだからだよ。他に質問は?」


 「は、はい!」


「アマンダさんどうぞ」


「福利厚生とは何ですか?」


「福利厚生は、雇い主が補助金を出したりして、従業員が快適に過ごせる為のサポート制度、ですかね。最初はショボいですが、おいおい充実させていく予定ですよ。まぁ、どんな事かはそのうち分かりますよ」


「はぁ···分かりました」


「他に質問はありますか?···今はない感じですかね。では、また質問があれば随時して下さい。ところで母さん、小瓶や樽を作る職人はどうなりましたか?」


「エイミーに頼んだら、廃業寸前の工房が家族全員で侯爵領から移住してきたわ。窯はすでに完成していて小瓶の製作を始めてるし、木製樽も製作中よ。明日からでも始められるわよ」


「流石です。じゃあ、みんなも疲れてるだろうし、明日は休んでもらって、明後日が九月一日なので明後日からの稼働にします」


「わかったわ。予定通り香水には私も参加するわね」


「はい。じゃあ、母さんは試作主任ですかね。色々な香りを試してみて下さい」


「あら、役職を貰えるのね。給金は出るのかしら?」


「えっとー。···僕のマージンからでいいですか?」


「ふふふ、冗談よ。父さんから貰うから大丈夫よ」


「ははは···えっと、じゃあ皆さんは明日まではお休みです。あと、今日の食事ですが、野営の残りで悪いですが食事の材料を置いて行きますね」


 収納バックから塩に野菜とパン、干し肉と胡椒も少し出しておく。


「野営で使った調理器具も置いておくので使って下さい。井戸は屋敷のを共同ですからね」



 説明を済ませ屋敷に戻るとシンクさんとクルタさんが応接室に移動しており、ミルさんは先にノーラさんの宿に部屋を取りに向かったようだ。


「お待たせしました。えっと、これが売買契約書で、こっちが納品書ですね」


 僕の質問にクルタさんが「そうよ」と言って頷き、シンクさんが馬車から下ろした数量を教えてくれた。


「アレン様、馬車から下ろしたのは、エール酒樽五十、ワイン樽二十、消毒用アルコール樽三十です」


「了解です。納品書の数量と同じですね。えっとエール酒樽が一樽銀貨一枚✕五十樽で小金貨五枚、ワイン樽が銀貨五枚✕二十樽で小金貨二枚、消毒用アルコール樽が小銀貨七枚✕三十樽で小金貨二枚と銀貨一枚、合計小金貨九枚と銀貨一枚ですね。父さん現金で払えそうですか?」


「ああ、今回は問題ない。あとは今後の香水の売上次第だな」


 父さんが代金の小金貨と銀貨をテーブルにならべると、クルタさんが数えて革袋にしまう。


「あら、なら問題ないないわよ。香水は絶対売れるから。はい、確かに九十一万ルペ受け取ったわ。じゃあ、今度は私からの発注ね。ホントは蒸留酒も欲しかったけど今回は諦めるわ。流石に無い物は無理でしょうから。なので今回は香水四種類を五十本ずつの計二百本をお願いね」


 うーん、アズラールに向かう前に、オレンジ、アップル、バラの香水は作ってあるから足りるはずだから、あとはラベンダーを作ればいいだけだな。


「わかりました。明後日には渡せます。ただ今回の納品分は、内容量は同じですが、ポーションの空瓶と新しく作った陶器の瓶の二種類になってしまうのは了承下さい。次回からは陶器の瓶で統一しますので」


「問題ないわ。なら、明後日受け取りに来るわね」


「はい、お待ちしてます」


「売り値は契約書通りで間違いないわね」


「はい、最低価格は一本銀貨五枚です。なので単純計算するとクルタさんと辺境伯の利益は一本銀貨五枚なので、今回の利益がそれぞれ大金貨二枚になりますね」


 どうだろう?一本銀貨五枚だと日本円ならだいたい五万円くらいだ。


「そうなるとエバンス家の取り分は大金貨八枚ね。了解、契約書通りね。明後日商品と引き換えに大金貨で八枚払うわ。あとは私に任せて頂戴、銀貨五枚よりも高く売って差額を持ってきてあげるわね」


「はい。よろしくお願いします」


「さて、じゃあ私はノーラの宿に向かうわ。また明後日には来るから」


 話が終わるとクルタさんと、僕の側で控えていたシンクさんが応接室から出ていった。


 ふぅー、明日中に足りない分のラベンダーの香水を作らなくちゃ。


「いやはや、それにしても、いきなり大金が動くな」


「本当。この領地で一回の取引額では最高記録更新ね」


「まぁ、明日中に足りない分の香水を作って納品しなければいけませんが」


「確か足りないのはラベンダーの香りよね」


「はい、なので、明日はラベンダーを取ってきますが季節的にギリギリですね。それに、これ以上の量を生産するならバラもラベンダーも栽培からしないとヤバそうです」


「んー、確かにそうね。ねえ、あなた、裏にバラとラベンダーの畑も作っても構わないわよね」


「ああ、アレンが言うように早めに栽培を始めた方がいいだろうからね。それに、オレンジとアップル畑も拡張した方が良さそうだね」


「それなら、バラやラベンダー以外にも栽培して、果樹園にはオレンジとアップル以外の果樹も植えたいですね」


 両親とバラとラベンダー畑、新しく果樹園に何を植えるか、拡張をどうするか、と話をしているとケイト姉さんが来て「皆さま夕食の準備が整いました」と言われたので、続きは明日にしようとなり、夕食を食べたあと久しぶりに風呂にゆっくりと浸かってから寝た。





 翌日、馬車の移動中サボり気味だった朝の鍛錬を済ませ、朝食後に昨日渡し忘れたアズラールのお土産をみんなに配った。


「母さんたちにはブラシの種類が一つしか無かったので残念ながらみんな同じ物ですが、代わりに髪を結ぶ色違いの紐と色々な種類の生地を買ってきました」


「アレンありがと」


 テーブルにブラシと紐を置き、生地を広げると、さっそく母さんがブラシと紐を女性陣に配り、生地を手に取りケーラさんとどんな服にするか相談を始めた。


「父さんにはグリフォンの羽で作られた羽ペンと僕が作った将棋と言う玩具。アイク兄さんとアイラ姉さんには、見習い錬金術師が作った魔法アイテムのイヤリングとイヤーカフで、店主いわく、どちらも一割程度ですが俊敏性を上げる効果があるそうです。ただし、身に着けると魔力を常時消費しますから使用には気を付けて下さい」


 この世界には、魔法アイテムと魔道具があり。

 魔法アイテムはアイテムに魔法を直接付加したもので主に錬金術師が作る事ができる。しかし魔法が付加された魔法アイテムには使用期限があり、魔法アイテムが作成された時に錬金術師が魔力をどれだけ魔法アイテムに乗せたかによって効果と使用期限が変わる。


 一方で魔道具は、魔法技師が魔法陣を刻む事で使える様になる道具で、使用期限は特にないが、刻んだ魔法陣が損傷したり消えたりすると使用出来なくなる。基本は魔道具に触れて魔力を流すか、魔石を電池の様に使うことで使用できる。


「ほぉー、グリフォンの羽ペンかぁ。大事に使わないとな。それに魔法アイテムか。なかなか良い物を買ってきたな。それと、しょうぎ?新しい玩具かぁ。どうやって遊ぶんだい?」


「ルールをこの紙に書いてきました」


「どれどれ、フムフム······ふーん。なかなか良く出来ているようだけど、アレンはもしかしてコレも商品化したいのかい?」


「はい、まずは父さんに品評してもらうつもりで馬車の移動中に作りました」


「なるほどね。この将棋は基本二人で対戦して遊ぶ物とあるね。なら、まずは対戦してみようか」


「分かりました。ただ今日は僕も香水を作らないといけないので一戦で構いませんか?」


「ああ、それで構わないよ。ある程度の遊び方が解ればいいからね」


 父さんとリビングに移動してソファに対面で座り将棋盤に駒を並べる。父さんは僕の並べた駒を真似して並べ、僕が簡単にルールの説明をしてから打ち始めた。


 初戦はすぐに僕が勝利。一戦だけの予定だったが余りにも早く終わったので駒を並べ直して、もう一戦行う。


 二戦目。父さんは流石に理解力が高いようでまぁまぁ粘られたが僕の勝利。

 ここで終わろうとしたら、連続で負けたのが悔しかったのか「今回のでルールを覚えたからもう一戦やろう」と言われ三戦目に。


 三戦目。気付いたら家族全員が将棋盤の周りに集まり、母さんとアイラ姉さんは父さんを挟む形で座り将棋盤を眺め、隣りではアイク兄さんとセリナがオセロを始めていた。

 僕は今の一手で父さんの角将を取り、後三手で詰みまで父さんを追い込んでいる。


「なっ!角将が!?」


 しかし父さんは「角将を取られても王を取れば勝ちだ!」と無理に攻めて、二戦目よりは少し粘ったが三連敗となった。


「じゃあ、僕は今日中に香水を作らないといけないので行きますね」


「ええ、行ってらっしゃい。私も何となくだけどルールを覚えたから、次の父さんの相手は母さんがするわ」




 屋敷から出てラベンダーが生えている林に向かうと、やはりラベンダーが枯れて種を付けている物が多かったが、まだ咲いている物もまだまだ残っていたので、枯れて種を付けた物も栽培用の種を取る為に一緒に刈り取り、ついでにバジルやミントなどの香草も採取して、いい具合に乾燥しているバニラビーンズも回収できた。



 倉庫二階の研究所(勝手に命名した)に移動すると、小瓶が入った箱が置かれていたのでさっそく足りない分の香水を作り始めた。途中従業員用宿舎が気になり様子を見に向かったが全員で食料品を買いに出掛けたらしく誰も居なかった。


 昼過ぎには必要分以上の香水を作り終え屋敷に戻ると、父さんとギルバートさんがリビングで将棋の対戦していた。


「もしかして父さんあれからずっとじゃないですよね?」


「ははは、まさか。しかしこの将棋は戦略や戦術のいい訓練になるよね。今、ギルバートとも話してたんだけど、この将棋を従士たちの必修訓練に取り入れようと思ってね」


「アレン様!この将棋は素晴らしいですな!是非私にも作って頂けませんか?それに、きっとカイン様も欲しがりますぞ!」


 あぁー、確かに爺ちゃんは新しい物が好きだから絶対欲しがるだろうなぁ。オセロも一番最初に自分用を欲しがったくらいだからな。


「そうですね。爺ちゃんなら欲しがるでしょうね。えっと、じゃあ、爺ちゃんとギルバートさん、あと他にも欲しがる人いますかね?」


「そうだなぁ、とりあえず、家族用に一セット、爺さんに一セット、ギルバートに一セット、あと従士の訓練用に二セットの合計五セットは欲しいかな。それから近いうちに王都から行商のワッツが来る頃だろうから、商品にするならワッツに渡す分も何セットか必要だろうな」


「それだと、最低でも十セットくらいは必要かも知れませんね。ただ、将棋の駒を作るのには、結構な時間が掛かるので僕一人では厳しいですよ?」


「なら、この間移住してきた木材工房の奴らに作らせるか。奴らも樽だけ作るより金になるだろ。よし!そうしよう!」


 父さんは卓上ベルを鳴らしてケイト姉さんを呼ぶ。


「この間うちに来た木材工房の親方を呼んで来てくれ」


「畏まりました」



 ケイト姉さんは三十分程で木材工房の親方を連れて来た。

 その間に父さんとギルバートさんの将棋は二戦目に突入している。


「領主さまがお呼びとあり参りやした、あっしが工房の代表をしておりやすナグリと言いやす」


「ああ、急に呼び出して悪かったね。この間会ったから私のことは分かるな。彼らは息子のアレンと従士長のギルバートだ。まぁとりあえず座ってくれ」


 父さんに促されナグリさんがソファの対面に座る。ちなみに僕とギルバートさんはナグリさんが来た時点で父さんの後ろに立っている。


「ナグリ。お前はコレを作れるか?それとコレを作るなら何日掛かるか教えてくれ」


 そう言うと父さんはギルバートさんと対局中の将棋をナグリに見せた。


「手に取っても構いやせんか?」


 父さんはチラッとギルバートさんを見てから「ああ、構わないよ。好きに手に取って見てくれ」と言ってナグリさんの前に将棋盤を移動させる。


 ナグリさんは駒を一つ一つ手に取って見てから駒を退けて将棋盤を手に取る。それを見た父さんは笑いそうなのを手で顔を触って誤魔化し、隣ではギルバートがため息をしている。

 ギルバートさんの気持ちはわかるよ対戦中だったし有利に進めていたからね。


「んー、まずこの板は簡単に作れやす。しかしこの小さい方は結構細かい作りで数が多いので、全部作るとなると一セットで二日でやすかね」


「なるほど、二日かぁ···ちなみに製作者として、アレンなら二日で何セット作れる?」


 父さんが僕に振り返り質問してきたので少し考えてから答える。


「えーと、一日一セット半で二日なら三セットは作れるかと思います」


「えっ?」


 揺れる馬車でライの木剣、将棋の駒、その他にも暇な馬車の移動中に色々と作った僕の木工職人スキルはLV7まで上がっている。ちなみにナグリさんを鑑定してみたら木工職人スキルはLV4だった。


『怠惰だった僕は神の使徒として生きていく』をお読み下さり有難う御座います。


不定期更新ですが、一応、週に1話〜3話更新を目標にしています。これからも宜しくお願いします。


それと、良ければブックマークの登録もしてやって下さい。

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