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32話

 冒険者ギルドを出たアレンたちは宿に戻ると依頼の分前+賞金で、小金貨二枚と銀貨六枚をシンク、ミル、ジャックに渡した。ついでにジャックさんにはジムが持っていた弓矢と盗賊が使っていた剣も渡した。



 昼前には宿に戻ると、全員を連れ出し昼食ついでに、僕、シンクさん、ミルさん、エイヴァさん、ラムとライ、ユイたち親子の総勢九名で帰りに必要な物とお土産などを買う為に街に買い物に出かけた。


 昼食はクルタさんに教えてもらった大衆食堂で食べた。この大衆食堂が結構当たりでメニューが三つと少ないが安く量もあり、なかなか美味しかった。この大衆食堂は倉庫や工房の近くにあり、肉体労働者向けなのか濃い味付けで塩と胡椒でしっかりとした味付けなので昼食で食べるには良い感じだった。



 昼食を食べ終わると二手に分かれて買い物に向かう。シンクさん、エイヴァさん、ラムとライのグループと、僕、ミルさん、ユイ親子のグループに分かれて買い物に向かった。


 シンクさん達には帰りの旅で必要な食料品、僕はユイたちに必要な物を買い足しながら母さん達へのお土産探しと、馬車と馬二頭も買いつけた。



 ある程度買い物を済ませた後、街をブラブラしながら歩いていると、昨日屋台のあった広場で捕まえたスリの男の子がいた。

 マップで確認すると、昨日も監視していた男が今日も少し離れた場所で男の子を監視しているみたいだ。さて、どうしようか。

 マップにはちょうど近くにシンクさん達がいるので、男の子から離れるように移動してシンクさん達と合流した。


「シンクさん、買い物の方はどうですか?」


「だいたいの物は買い揃えられたと思います。夕方までには宿に届けてくれるそうです」


「そうですか。なら、この後はユイ達もシンクさんが宿まで連れて行って下さい」


「はい、構いませんが······アレン様は?」


「僕は、ちょっと気になる事があるので。すみませんがミルさんは僕と来てもらえますか」


「ん、わかった」



 シンクさんにユイ達親子を預けてからミルさんと一緒にスリの男の子の近くに戻った。


 ミルさんと建物の陰に隠れ男と男の子を観察していると、男の子はシンクさんの財布を盗った時と同じ手口ですれ違う男から財布を盗み、建物の間の小路に入った。監視の男も男の子を追うように小路に向かったので僕たちも後を追う。


 男の子たちを追い小路に入ると奥から男の声がしたので、バレない様に近づき会話を聞く。


「ちっ、しけてやがる。小銀貨が五枚か。これじゃあまだ足りないな」


「もう、小金貨五枚以上渡したじゃないか!母さんと妹を返してよ!」


「はっ!お前の親父が残した借金は金貨二枚はあるんだ。全然足りないな」


「そんな!?この前は小金貨五枚だったじゃないか!」


「あ?利子に決まってんだろウチの利子は一日一割だ。明日には金貨二枚と小金貨二枚だな」


「そんなの一生払えないじゃないか!」


「ふんっ、だろうな。それがどうした?お前の親父はそれを分かっててオレらから借りたんだよ。しかも逃げやがって。まあ、お前の母ちゃんと妹にも身体で稼いで貰うさ、まあ利子分くらいにはなるだろ。残りの借金が返せるかはお前次第だな」


「くそっ!」



 うーん、聞いてる感じだと男の子の父親が高利貸しから金を借りて逃亡。借金で母親と妹が連れ去られ、男の子はスリをして借金を払うが、利息が酷すぎて払えないと······。


 ミルさんと一度大通りに戻り相談する。


「うーん、ミルさんはどう思います?僕的には金利が暴利過ぎるので助けても良いかと思ってますが」


「私はどっちでも構わない。アレン君が決めていいよ」


「なら助けますかね。しばらく様子を見て二人がが分かれたらミルさんは男の後を追って下さい。僕は男の子を確保したら宿に連れていって詳しく話を聞いてからミルさんと合流します」


「ん、わかった」



 しばらくすると、男が男の子の監視を止めて離れていくのでミルさんに男を追ってもらう。


 男の子、はちょうど側を通り抜けようとしたので腕を掴んだ。


「おっ、お前昨日の!」


「やあ、昨日ぶり。何か男の人と話してたみたいだけど、知り合い?」


「あ、えっと、き、近所のおじさん」


「ふーん、ところで僕はアレンって言うんだけど君の名前は?」


「えっ、オレはネビルだ」


「そうか、ネビル。唐突だけど、もしも僕が君の家族を取り返すのに手を貸すと言ったらどうする?」


「えっ?!」


「実は、さっきネビルがそこの小路で男と話してるのを聞いていたんだ」


「はっ?!えっ?!」


「できれば詳しい話を聞きたいんだけど。ちなみに僕の仲間が男の後を追っていて、どっちにしてもネビルの家族は助けるつもりだけど」


「ほ、本当か!」


「ああ。ちゃんとした金貸しなら助けなかったかもしれないけど、奴らの利子は明らかに暴利だからね。捕まえて辺境伯に引き渡すつもりさ」


「へ、辺境伯様に?!」


「まあ、とりあえず話を聞かせてよ。ここで話すのもあれだから、僕が泊まってる宿で話を聞かせてくれないかな」



 ネビルはビクビク怯えながらも宿までついてくると、父親がいなくなってからのことを話してくれた。


 ネビルの父親が何故超金利の高利貸しから借金をして逃げたのかは分からないが、二週間前にさっきの男たちが家に押しかけてきて、三万三千ルペを払えと言ってきたそうだ。払えるお金が無いと言ったら、五日待つと言われ、五日後どうにか準備した三万3三千ルペを母親が男に払おうとしたら、利子が増えたから五万八千五百ルペを払えと言われらしい。

 その後は払っても払っても金額が増えていき、今ではさっきの男が言っていた金貨二枚を超える金額になったみたいだ。

母親と妹は借金が小金貨三枚を超えた辺りで連れて行かれたそうだ。


 ネビルは泣きながら話をして最後は泣き疲れたのか寝てしまった。


 シンクさんとネビルの話を聞いていたのだが、もしかしたらユイ達も似たような感じで騙され奴隷として売られたかもしれないなと思ってしまった。


 シンクさんを見ると明らかに憤慨している。


「アレン様はネビルの家族を助けるつもりなのですよね。なら、私もご一緒させて下さい」


「もちろん手伝ってもらうつもりですが、少し落ち着いて下さい。殺気が出てますよ」


「!?、すみません」


「まあ、気持ちは分かります。僕も許せないですからね。ただ、ここは他領なので他家の僕たちだけで動く訳にはいかないでしょう。なので、シンクさんはこれからネビルを連れて辺境伯の屋敷に向かい、この事を辺境伯に話してきて下さい。僕はミルさんと合流して高利貸しのアジトとネビルの家族の安否を確認したら辺境伯の屋敷に向かいます。一応辺境伯への手紙も書きますから持っていって下さい」


「分かりました。ただネビルが寝てしまっていますが?」


「うーん、僕たちは明日の朝にはアズラールを出発するので時間がありません。なので、ネビルには悪いですがシンクさんがおんぶして辺境伯の屋敷に連れて行って下さい。辺境伯には衛兵をいつでも動かせる様にと伝えて下さいね」


「分かりました」


 アレンは辺境伯への手紙を書くとシンクに手紙と銀貨を一枚渡した。


「じゃあ、僕はミルさんと合流してきます。それと、エイヴァさんとユリナさんに夕食は宿で食べるようにと伝えて夕食代を渡して下さい。では行ってきます」


 アレンは宿を出るとマップでミルの位置を確認し足早に移動を開始した。



〜〜〜



 シンクはアレンが部屋から出るのを見送ると、ネビルが寝ているのを確認してからユイたち家族をエイヴァたちの部屋に来るように伝え、エイヴァたちの部屋のドアを叩く。

 エイヴァがドアを開きシンクを向かい入れると、すぐにユイたち家族がエイヴァたちの部屋にやってきた。


 シンクはエイヴァとユリナを名指ししてからアレンからの伝言を伝え銀貨を渡した。

 それからエイヴァには一応警戒するように頼み、アレン、ミル、シンクの三人は朝までに戻るか分からないので先に寝ておくようにと言うと、エイヴァたちの部屋を出てアレンの部屋に戻り、ネビルをおんぶすると宿を出て辺境伯の屋敷に向かった。



 宿から辺境伯の屋敷へ二十分ほどで到着すると、門番に「アレン・エバンス様からクラウド辺境伯様への手紙と言伝を預かっております。私はアレン様の従者のシンクと申します。執事長のトマスさんにお取り次ぎをお願いします」と伝えた。

 数分待っていると執事長のトマスさんと一緒にクルタさんも出て来たので頭下げる。


「確かにアレン様の従者で間違いありません。通して構いません。シンクさん、とりあえず応接室に案内します。まずはそちらで話を聞かせて下さい」


 トマスの許可で門が開けられ、シンクはトマスの後ろからついて歩くと、クルタがシンクの横に並びシンクの背中で寝ているネビルの顔を覗く。


「あらあら、カワイイ坊やね。何処で拾ってきたの?」


「いえ、拾った訳では···」


 ちなみにネビルは茶髪でどちらかと言えば中性的な顔をしていて、十歳だが八歳のアレンと変わらない身長で、きちんと食事をして鍛えてるアレンとは違い、食事が満足に食べれていないのか筋肉も無く痩せているので、スカートを着せれば女のコでも通用しそうな容姿をしている。


「痩せているわね。この子は街でどんな生活を?」


「えー、このあと話す内容にも重複するので精細は後ほど話しますが、この子、ネビルとの出会いは、ネビルが私からスリをしてミルさんがネビルを捕まえたのが最初の出会いですね」


「そうなのね」



 シンクはトマスの案内で応接室に入ると、ネビルをソファに降ろしてから身体を揺らしネビルを起こす。


「ネビル、ネビル。寝ているところすまないが起きてもらえるか」


 シンクがネビルの名前を呼びながら数回身体を揺らすとネビルが目を開け、慌てて周りを確認する。


「ああ、驚かせたね。でも心配しなくても大丈夫だ。ここは辺境伯様の屋敷だから安全だ」


「へ、辺境伯さまっ?!」


「ああ、とりあえず落ち着いて。右に居る方が辺境伯家の執事長のトマスさんだ。それと左の方は商人のクルタさんという方だ。私も自己紹介してなかったかな。私は旅の間、アレン様の従者兼護衛をしているシンクだ」


「は?アレン、さ、ま、?」


「ああ、アレン様はエバンス男爵家の三男だ」


「えっ?アレン、あ、アレンさまは貴族なの···」


「まあ、アレン様の今の正式な立場は凖貴族だな」



 メイドが三人の前には紅茶を、ネビルの前には果実水を置いて応接室を出ていった。


「ネビル。落ち着いたか?」


「は、はい」


「ま、まあ、大丈夫かな。ネビルには宿でアレン様と私に話した内容をもう一度話して欲しい」


「わ、わかりました」



 ネビルはアレンに話した内容を思い出しながら、できるだけ同じ内容で話した。


 ネビルの話が終わると、トマスは唇を触りながら考え事をしていて、クルタは顔を赤くさせて憤慨している。


「じぃ、今すぐ兵を集めて!潰すわよ」


 クルタはソファから立ち上がると今にも応接室から飛び出しそうな勢いだ。


 シンクはクルタを見て『私も宿ではあんな感じだったのかな』と少し恥ずかしくなった。


「坊っちゃま、坊っちゃまには兵を動かす権限はもうありません。私が辺境伯様にお伝えしてきますので皆様はコチラでしばらくお待ち下さい」


 シンクはトマスがソファから立ち上がるのを見てアレンからの手紙をトマスに預けた。


「トマスさん、アレン様から辺境伯様への言伝は、衛兵をいつでも動かせる様にお願いします、との事です」


「わかりました。では私は辺境伯様にお会いしてきますので皆様はコチラでお待ち下さい」


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