表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/41

31話

 ゴブリンは仲間にファイアーボールが直撃したのに驚いて硬直していたが、僕たちが草かげから飛び出したのに気がつくと手に持った錆びた剣やナイフを構えて迎撃の構えをするが、先頭を走るシンクさんが切り込むのが早く、手前にいたゴブリンを斬りつけ蹴り飛ばした。

 僕はシンクさんの横を通り過ぎると斜めに剣を振り下ろし肩口から胸を切り裂かれたゴブリンは後ろに倒れる。


 僕の側にいるミルさんは短剣でゴブリンの首を切り裂き、ジャックさんも危なげながらも渡した剣でゴブリンを斬りつけ、シンクさんは最初の一匹を仕留めたあとはジャックさんの側でゴブリンを倒している。

 ジムたちは最初のファイアーボール以降は攻撃に参加していない。



 ジムたち二人がどういう行動をするのか気にしながらゴブリンを仕留めていたが、結局二人は最初のファイアーボール以外は何もせずにゴブリンとの戦闘が終わった。


 うーん、ちょっと二人を意識しすぎたかな。明らかに何かしようとしたけど思いとどまっていた感じだ。


「ふぅー、ざっと二十二匹ってところですかね。とりあえずシンクさんとジャックさんで魔石と討伐部位の左耳を回収してください。僕とミルさんは向こうにある小屋を見てきます」


 一応シンクさんに"青の双剣"の二人に注意するように声を掛けてからミルさんとゴブリンが作ったと思われる貧相な小屋に向かう。


 屋根が低く暗い小屋の中を覗くと小屋の中には人間の女性がいたが、ゴブリンに何をされたのかは一目瞭然だった。

 まだ二十代後半に見えるその女性は、ボロボロにされた上着を着て、逃げられないようにする為か両脚が折られ紫色に腫れあがっている状態で死んでいた。


 僕は死んでいる女性に近づくと、ストレージからシーツを取り出して女性に掛けてから小屋から出ると、ミルさんと担架を作り女性の遺体を担架に乗せた。


「とりあえずゴブリンの処理が終わるまでこのまま担架に乗せたまま小屋に置いといて、後でシンクさんとジャックさんに運んで貰いましょう」


 小屋から出るとシンクさんとジャックさんがゴブリンの死体を木材と一緒に燃やしているところだった。


 ミルさんと二人でシンクさんたちに近づき声をかける。


「あとは燃え尽きるのを待つだけですか?」


「そうですね。討伐部位と魔石は袋に入れてありますから、あとは燃え尽きるのを待つだけですね」


 シンクさんはそう言うと、ゴブリンの左耳と魔石が入った麻の袋を渡してきたので袋を受け取り収納バックにしまう。


「それとジムたち二人は、討伐完了を先に伝えると言って集落に戻りました」


「ふーん、そうですか」


 マップを確認すると、確かに二人が集落の方に移動している。


「確かに集落に向かってはいるみたいですけど、やはりあの二人は信用出来ないので帰りも気を付けましょう」


「ん、わかった」


「燃え尽きるまでしばらく掛かりそうですね。そろそろお昼ですし、とりあえず朝買った串焼きでも食べますか」


 シンクさんとミルさんに朝屋台で買った串焼きとパンそれと果実水を渡し、ジャックさんにも昨日屋台で買った串焼きなどを渡す。


 串焼きを食べながらジャックさんに戻ってからどうするか聞くと、ジャックさんもゴブリンを相手している時に青の双剣の二人を時折見ていたらしく、何度かジムの弓がゴブリンではなく僕らを狙っていたように見えたそうで、青の双剣から離れ距離を置くことにするそうだ。


 ジャックさんが言うように僕もチラチラ二人を見ていたが、何度か弓で僕らに狙いを付けていたのは確認済みだ。

 一応もう一度ジャックさんを青の双剣から脱退させる為に話をするつもりだったが必要が無くなったようだ。



 さて、食事の間に火も消えたので集落に戻ることにする。ゴブリン達の作った小屋はまた使われないようにエアカッターでバラバラにしておいた。

 帰りは僕が先頭を歩き、次に担架を運ぶシンクさんとジャックさん、最後尾はミルさんの順で集落への道を戻る。

 戻る途中に放置してあったゴブリンの死体は、クレイクリエイトの魔法で作った穴に放り込みファイアの魔法で燃やし尽くした後に埋め、集落への道すがらマップを確認して青の双剣の行動を予想して話をしておく。



 集落に戻るとゴブリン集落に案内をしてくれた狩人が集落の入口で待っていた。


「良かった、無事戻りましたね。怪我はありませんか?」


「僕たちは大丈夫です。ただ、この集落から攫われたと思われる女性の遺体を回収してきました。確認してもらえますか?」


 シンクさんとジャックが担架を静かに狩人の前に降ろした。


 狩人は担架の横でしゃがみシーツをめくると女性の顔を確認してから立ち上がり「確かにこの集落の者です。回収して下さりありがとうございます」と言って頭を下げた。


「後のことは私共だけで結構ですので今回の依頼は以上で終了です。ありがとうございました」


 そう言うと狩人は依頼完了のサインがされた羊皮紙をアレンに渡す。狩人の目には涙が溢れている。


 アレンは羊皮紙を受け取ると女性の遺体に手を合わせてから狩人に軽く頭を下げ、ギルドが用意した馬車に向かう。



 馬車に向かうと、馬車の側には御者しかおらず青の双剣の二人は見当たらない。


「おっ、依頼は済んだかい?一緒に来ていた二人は用があるからアンタらが来たら戻ってもええと言われとります、冒険者ギルド戻りますか?」


「あー、そうですか。なら僕たちだけで戻りますかね」


「了解です。それなら乗ってくだせぇ」


 僕たちが乗り込むと荷馬車は動き出した。



 集落を出発して三十分たった辺りで馬車が明らかに集落に向かった時とは違う道に入ったのに気がついた。

 みんなには集落に戻る最中に話をしておいたが、青の双剣の二人は集落から離れると十人程と合流している。この馬車は集落に向かった道から外れ青の双剣がいる場所へと向かっている。

 まあ、十中八九この御者も青の双剣とグルなのだろう。


 僕は咳払いをした後に剣の柄を指で二回叩く。これは集落に着く前に決めていた合図だ。

 合図でシンクさんは弓の準備してミルさんとジャックさんはいつでも動けるように準備をしている。

 マップで確認すると馬車の前方に青の双剣がいて、道の左右に残り十人が隠れているようだ。


 馬車が速度を緩めた止まるタイミングで僕たちは馬車から飛び降りて馬車の後ろに隠れた。

 御者の男はやはり青の双剣とグルらしく馬車から降りて剣を受け取っている。


「諦めて武器をすてろ!俺たちが欲しいのはお前らの収納バックと金、それと女だけだ!素直に渡せば命は助けてやる!」


 はっ、ほざいてろ、誰が渡すか!


「シンクさん、ミルさん、ジャックさん、奴らは御者を含めて十三人です。馬車の両サイドに五人ずつと正面の三人ですね。ジャックさんは対人戦の経験はありますか?それと弓は使えます?」


「いや、オレは対人戦の経験は無いな、弓はそれなりに使えると思う」


「ならシンクさん、ジャックさんに弓を貸してあげて下さい。ジャックさんは馬車の後ろで隠れながら弓で牽制してください。ミルさんとシンクさんは左の五人をお願いします。僕はまず右の五人を殺ります。シンクさんたちは左の五人を殺ったら正面三人の注意を引いてもらえますか?」


「分かりました」


「いやいや、流石にアレン一人で五人はキツイだろ!」


「ん、問題ない。右はアレンくんに任せた」


「マジで言ってんのかよ!お前ら!」


「ジャックさん、アレン様なら問題ありません。アレン様は今の倍以上を相手に殿をしたこともありましたから」


「マジかよ!」


「ジャックさん、僕は大丈夫ですよ。魔法の発動速度には自信がありますからね」


 アレンはジャックにニコッと笑う。


「この状況でよく笑えるな···ハァ分かった」


「では、やりますか」



〜〜〜



 その頃、馬車の正面に陣取る青の双剣のジムは弓を引きながら様子をうかがっていた。


「なかなか降りてこねーな」


「はっ、ビビって出てこれねぇんだろ!」


「おい!さっさと出てこねーと馬車に火ぃつけんぞ!」


 キャルが馬車に火をつけると言った直後、馬車の陰から二人がジム達から見て右手に走った。

 ジムとキャルが馬車から飛び出した二人の動きに釣られ馬車の右側を見た直後「ギャー!」と馬車の左側から複数の悲鳴が聞こえた。すると、馬車の左側を囲むように配置していた仲間が5人共倒れていた。御者の男も悲鳴が上がってすぐに左側に向かおうと数歩進むといきなり前のめりに倒れた。

 ジムは何が起こっているのかわからず隣りの弟に話しかける。


「お、おいっ!キャル!何が起こっているか分かるか!」


 しかしキャルからの返事は無い。


「おい!キャル!」


 ジムは馬車の左側を見つめたまま返事をしない弟に苛つき、右に立っている弟の肩を右手の甲で叩くと、キャルは目を開けたまま後ろに倒れていった。

 ジムが倒れた弟を見るとキャルは目を開けたまま額から血を流していて、まるで弓矢で額を射られたかのように死んでいるのが分かる。


「なっ!?いつ攻撃された!!」


 弟のキャルがいつ攻撃されたのかわからずパニックに陥っていると「シュッ」と音が聞こえた後に数秒遅れて左手首に痛みが走った。

 痛みを庇うように右手で左手首を抑えようとして左手が無いことに気づく。


「ギャー!て、手が、俺の手がぁー!」


 あまりの痛さにしゃがみ込み手首を押さえると、しゃがんだ直後に惻頭部に衝撃を受けて意識を失った。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 ジャックは結局、弓矢を一射もしないまま今の一連の流れを、ただ唖然と見ていた。


 な、な、何なんだ······初めてアレン達の対人戦を見たが、あっと言う間だった。シンクは常識の範疇だが、ミルとアレンはヤバい!しかもミルはまだ10代だしアレンに至っては10歳にもなってないんだぞ!なのに、こんなに躊躇なく人を殺せるものなのか······。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 さて、ジムは命拾いしたね。シンクさんの蹴りが後少し遅かったらジムの命は無かったね。まあ、どっちにしてもこの世界の盗賊は捕まれば死刑だけど。


「シンクさん、ミルさん、お疲れさまでした。生きているのはジム以外にもいますか?」


「はい、二人ほど生きております」


「分かりました。ではこの縄で拘束してください。それと、死体はどうしましょうか?」


「前の盗賊と同じように、使える物を取った後は穴に入れて焼いたら埋めてしまうのが良いでしょう」


 アレンは土魔法のクレイクリエイトで死体を入れる穴を作り、シンクとミルは盗賊の死体をあさり身分証や使えそうな物を剥ぎ取っている。

 ジャックも若干衝撃から回復したのか剥ぎ取り終わった死体を穴に投げ入れている。



 盗賊十人の死体を穴に投げ入れたらアレンのファイアの魔法で焼き穴を埋めた。


 盗賊の生き残りを馬車に乗せて縄でぐるぐる巻にしてから、盗賊から剥ぎ取った物を収納バックにしまい、ミルさんが御者を務めて冒険者ギルドがあるアズラールに向けて出発した。



 空が朱に染まる前にアズラールの城門を潜ったアレンたちは、まず衛兵の詰め所に向かい説明をしてからジムたち盗賊三人を衛兵に引き渡した。

 冒険者ギルドでは馬車を返却しギルドのカウンターでジムたち青の双剣とギルドの御者が盗賊と一緒に襲撃してきたことを報告して宿に戻った。



 翌日、朝から宿に衛兵が来て、盗賊の一人に賞金が掛かっていたと言われ、アレン、シンク、ミルの三人で衛兵の詰め所に向かい金貨一枚を受け取り、ついでに冒険者ギルドにも向かった。冒険者ギルドでは昨日渡し忘れた依頼完了のサインが書かれた羊皮紙と、討伐部位のゴブリンの左耳が入った麻袋、それとゴブリンの魔石が入った麻袋をカウンターに置いた。


 受付嬢は麻袋二つは隣りの部屋に持って行き、依頼完了サインの書かれた羊皮紙には何か記入した後、別の書類と纏めて置いた。

 数分待っていると隣りの部屋からエプロンをした男性が現れ受付嬢に板を渡した。


「えーと、アレン様お待たせしました。まず、依頼達成で二万ルペ、ゴブリンの討伐が二十五匹で七千五百ルペ、魔石が二十五個全てゴブリンの魔石で一万二千5百ルペ、全部合わせて四万ルペなので銀貨四枚になります。お確かめ下さい」


 受け取った硬貨を確かめ革袋に入れてから収納バックにしまった。


「ああ、それと、これはどうすればいいですか?」


 アレンはバックからジムとキャル、他にも十数枚の冒険者証を受付嬢に見せる。


「えっと、これはどちらで?」


「全てジムとキャルが所持していましたよ」


「···そうですか、この冒険者証はここ数ヶ月の間に行方不明になった方々の物です。青の双剣が所持していたという事は元の持ち主は既に亡くなっている可能性が高そうですね······とりあえずその冒険者証はコチラで預からせて貰います」


「わかりました」


 アレンは冒険者証の束を受付嬢の前に置くと「では僕たちはこれで」と言って冒険者ギルドから宿に戻った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ