27話
辺境伯とクルタさんの三人で蒸留酒の契約内容を話し合い契約書にサインをした翌日。
午前中はクルタさんが蒸留酒の特許を代理で取りに行っているので、僕はミルさんに案内を頼み教会に向かうことにした。
イルバニの町でも教会には向かったが、女神教会だったので女神像しか無かった。創生教会なら創造神さまの神像が置いてあるかも知れない。
執事のトマスさんに教会に向かうことを伝えると、辺境伯がお忍びで使う馬車を用意してくれたのでトマスさんに礼を言ってミルさんとシンクさんの三人で馬車に乗り込んだ。
馬車の御者をしているのは辺境伯の屋敷に勤めている馬丁の男性で名前がホセさん。茶髪の短髪で身長は男性にしては低いけど愛嬌があって元気の良い人だ。
ホセさんに創生教会に向かうようにお願いして、馬車の窓から領都の街並みや行き交う人々を眺める。
やっぱり領都は大都市なだけあり殆どの建物が二階建で、石畳の道に行き交う人々がとても多く他の村や町のような嫌な匂いもしない。
ミルさんが言うには、一応スラム街もあって他の都市に比べたらスラム街の規模はとても小さいらしいが、孤児の数だけは他の都市よりも多いそうだ。
理由はこの領地の半分が魔の森と他国の国境に面している為で、南のラトリ連合国が国境を越えて度々村や町にちょっかいを掛けて来るので、その度に被害にあった孤児が増えることの他に、辺境伯領はドウェイン王国内で一番魔物被害が多い領なので、所属する冒険者の数も王国内で一番多いのだが、子供のいる冒険者が魔物討伐の依頼受けて帰って来ない事も結構あるそうだ。
しかし辺境伯は孤児になった子供達を受け入れる為の孤児院を何十ヶ所も作り最低限生活はさせているらしい。
教会には孤児院は無いのかと聞くと。
そもそも創生教会は資金難で小規模の孤児院をどうにか運営している程度で。
女神教会の孤児院は誰でも入れる訳では無く素質がある子供だけが入れると言われているそうだ。
孤児を教会には任せられない状態なので、辺境伯領では孤児院と言えば辺境伯家が運営している孤児院が殆どみたいだ。
昨日も話をして思ったが、辺境伯はだいぶまともな部類の大貴族みたいだからできるだけ良好な関係を築いておきたいと思った。
それと、ラトリ連合国がドウェイン王国にちょっかいを掛けているのは知らなかった。
確かラトリ連合国は、リノイ公国、ラスド王国、トルス王国、三国の連合国で辺境伯領との国境を面しているのはリノイ公国。ラムとライの出身がリノイ公国だ。
おっ、馬車が止まったので創生教会に着いたようだ。
ホセさんが箱馬車の扉を開けてくれたので三人で馬車から降りた。
女神教の教会は街の中心辺りにあり結構立派な建物だったが、創生教会は街の中心からはだいぶ離れたスラム近くの貧民街にあり、建物もだいぶボロい。
創生教会が女神教会に勢力争いで負けていると思ってはいたが、もしかしてだいぶヤバいのでは?と思ってしまった。
開け放たれた扉から建物の中に入ると教会の中には誰もいないようで、木造で造られた長椅子の向こうに祭壇が見える。祭壇には女神教会の大きな女神像とは違い、三十センチ程の像が複数並べられていて、その像たちが創生教会の信仰対象の神々の像だと思われる。
長椅子を回り込み祭壇の前まで行こうかとした時、祭壇の側にあるドアが開き男性が出てくると、教会の入口立っていた僕達に気づき話しかけてきた。
「おや、当教会に御用ですか?」
「あ、はい。えっと祈りを捧げたいのですが良いでしょうか?」
男性は少し驚いた顔をしたがすぐに笑顔になった。
「ええ、勿論です。さぁどうぞ祭壇の前までお越し下さい」
男性に勧められ祭壇前に移動すると男性は自己紹介を始めた。
「私はこの創生教会の神父でマシューと言います。君はどなたを信仰しているのですか?」
マシュー神父は嬉しそうに聞いてきた。
「僕はアレンと申します。基本創造神レキエル様を信仰していますが、他の神々も信仰しています」
「そうですか!素晴らしい事ですね。お連れの方もそうなのですか?」
僕の言葉を聞いたマシュー神父は嬉しそうにシンクさんとミルさんに問うが、2人が困った様な表情をしたのを見て焦って手を振った。
「あー、気にしないで下さい。信仰は自由ですから。あなた方が神を信仰するのもしないのも、どなたを信仰するかも自由ですからね。では今日はアレン君がお祈り来たのですね」
「はい。今日は僕がお祈りに来ました。2人は付き添いです。あの、祈りの後で神像に触れても構いませんか?」
「持ち出したりしなければ神像に触れるのは構いませんよ」
良かった。神像に触れても大丈夫みたいだ。
祭壇前に向かい片膝を付いて手を組み頭を下げた。一分程祈った後立ち上がり祭壇にある神像の前まで向かう。
一度大きく息を吐き、創造神様が言っていた神像でありますように、と祈りながら祭壇中央にある創造神様らしき神像にに触れ目を閉じた。
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『やぁ、久しぶりだね』
記憶にある声に目を開けると白い空間にいて、初めて会った時と同じようにソファーに座りグラスを手に持つ創造神がいた。
「お久しぶりです。レキエル様」
『取り敢えず座ったら?』
創造神に挨拶を返すと、今回はパイプ椅子では無く対面にあるソファーに座るように促されたので「失礼します」と言ってソファーに座った。
『君も飲むかい?』
創造神は初めて会った時とは違う銘柄の焼酎を飲んでいた。焼酎の銘柄は僕の地元産の銘柄で、初めて会った時に創造神が飲んでいた銘柄と同じくらい有名な焼酎だ。
「いえ、まだ子供なので遠慮しておきます」
僕がお酒を断ると、創造神は『そうかい』と言って自分のグラスに焼酎を注いだ。
「あの、幾つか聞きたい事があるのですが宜しいでしょうか」
『何かな?』
「この惑星アグレと言う世界は、もしかして地球、と言うか地球のアニメやラノベをモデルにしてませんか?」
『その通りさ。君のいる惑星アグレは、20世紀頃の地球にアニメやラノベの世界観を合せて融合させた世界を目指した惑星だよ。勿論、最初から20世紀頃の文明にはなれないから、最初に生み出した人種には私の目指す世界になるように遺伝子を組み込んだ、理想という形でね。そして、人種を生み出した時、同時に管理したり知恵を授ける為に地球の歴史や知識を与えた女神テレジアも生み出し地上に送ったのさ』
「成るほど、だから地球と変わらない物が多いのですね。でも、それなら何故地球の様な発展をしていないのですか?」
『女神テレジアは発展しない世界を望んでいる。私が授けた知恵や知識を人間達に与えたのは最初だけ、発展をしない時代がずっと続いている』
「それだとおかしくないですか?いくら女神が知恵や知識を与えないからといって人の発展が止まるのは」
『女神テレジアは人種で一番多い人間の思考を誘導していてね。発展を妨げている』
「思考誘導はどうにかできないのですか?」
『無理だ。テレジアは世界に結界を張って私達が世界に完全に干渉できなくしてしまった。私達ができるのは輪廻を使って魂を送ることだけだ。しかしどうにか探し出した神の代弁者になる魂を何度地上送っても、その者たちが強くなる前に皆女神に思考誘導された者達によって殺されてしまう』
「つまり僕の前任者達は全員殺されたと言う事ですか」
『そうなるな』
なるほど、やはり僕は本当に気を付けないと女神勢力に殺されてしまうようだ···。
「女神テレジアに思考を誘導されている人達の思考を変える事は可能でしょうか?」
『直接女神に思考を誘導された者達は無理だろう、ただし、間接的に洗脳されている者達なら可能だ』
「間接的に洗脳されているのはどういった人達ですか?」
『大多数は女神教会の信者達だな。直接テレジアに思考を誘導された狂信者たちによって洗脳されている者たちだな』
女神教会の信者かぁ、そうなると直接思考を誘導されているのは教会に直接関係している人達だろうな。
とにかく今まで以上に女神教会には気をつけないと。
「女神教会の関係者以外にも女神の影響を受けている人はいますか?」
『勿論だ。女神の思考誘導に直接または間接的に影響を受けている者は、この世界に住む人間の大多数と思っておいた方が良いだろう』
そうかぁ、かなりヤバいな。しかし大多数ときたかー。
『しかし同じ人種でも人間以外なら女神の影響を受けにくい者たちもいる』
「人間以外と言うと?」
『エルフ、ドワーフ、獣人たちのような、亜人と呼ばれている者たちだな』
亜人は影響を受けにくいのか。なら将来仲間を探すなら亜人を仲間にするのはありだな。
「なるほど、分かりました。あと魔法についても聞きたいのですが」
『魔法か、魔法なら魔法神のエリエルに聞くと良い』
創造神は魔法神に聞けと言うと目を逸らし僕の横を見た。
僕も釣られて横を見ると、いつの間にか紫色の着物?を着た女性が隣に座っていた。
『私に用かしら?』
「うおっ!あ、あなたが魔法神エリエル様ですか」
『ええ、そうね。で、魔法のことが聞きたいのでしょ』
いきなり着崩した着物を着た女性が隣に現れたので驚いてしまったが、この方が魔法神エリエル様みたいだ。
「えっと、ずっと思ってた疑問がありまして。殆どの本には魔法は必ず誰かに学ぶか本で学ばなければならないとありましたが本当ですか?」
『そんな事ないわよ。魔法は自身でイメージした事を魔力で具現化する力。別に学ばなくともイメージさえしっかりとしていれば才能だけでも具現化は出来る魔法は多いわよ。それに魔法は創造する事も可能なの。だいたい貴方はアレンジだとか言って新しい魔法を創造してるわ、自分でも気づいていたでしょ?』
「はい、正直そうではないかと思ってはいました」
『そっ、だから世に知られている、誰かに習った魔法も本で覚えた魔法も基礎みたいなものよ』
「なら他の魔法も覚える事が可能なんですね?」
『ええ、誰でもとはいかないけどね。魔法は素質と熟練度、練習次第で覚えるのは可能よ。まぁ貴方の場合はレキエル様と私の加護があるから、覚えようと思えば努力次第で覚える事は可能だし、さっきも言ったけどイメージ次第では新しい魔法を創造することもできるわ』
「なるほど、ありがとうございます。勉強になりました」
そっかー、じゃあ今まで発動ができなかった魔法はしっかりとイメージが出来ていなかった訳か、ならアニメやラノベで知っている魔法もイメージと練習次第で使えるようになる可能性は高いな。
これからはイメージ出来そうな魔法は色々と練習しないといけないな。
『さて、そろそろ戻さなければならないが聞き忘れたことはないかな?』
う〜ん、他に何か聞きたいことかぁ。
「なら、聞きたいと言うかお願いがあります。今のステータスだと自分や相手の強さがいまいち分かり辛くて···。もう少し強さが分かりやすく出来たりしませんか?」
『おや、やはりか。下級神にステータスの作成を任せていたが私もあまり気に入ってなかったからね。ならステータスの表示をバージョンアップしようか』
「はい、すみませんがお願いします」
『分った。······これならどうだい?』
名前:アレン・エバンス
性別:男
年齢:8歳
レベル:6
経験値:12/320
体力:106/106
魔力:2769/2769
攻撃力33(12)
防御力21(6)
知力:72
瞬発力:72
幸運度:32
スキル
(火魔法:LV5)(水魔法:LV5)
(風魔法:LV4)(土魔法:LV5)
(氷魔法:LV3)(雷魔法:LV4)
(光魔法:LV2)(闇魔法:LV1)
(時空魔法:LV5)(重力魔法:LV4)
(複合魔法:LV2)(治癒魔法:LV3)
(剣術:LV6)(短剣術:LV1)
(槍術:LV2)(格闘術:LV2)
(木工職人:LV3)(調理師:LV6)
(身体強化)(気配察知)
(魔力感知)(魔力制御)
(唱和破棄)(省略唱和)
(多重唱和)(無唱和)
(並列思考)
固有スキル
鑑定眼、ストレージ、ワールドマップ
転移
称号
神々の使徒
加護
創造神レキエルの加護
魔法神エリエルの加護
武神カリエルの加護
おお、だいぶ分かりやすくなったけど、今まで無かったレベルと経験値、それに攻撃力と防御力。だいぶゲームみたいなステータスになったな。
「ありがとうございます。これなら自分の強さを比べ易くなったかと思います」
『そうかい。なら良かったよ。下級神にはステータス表示でレベルも全て見える仕様にするように指示していたけど連絡ミスでね』
「はぁ、そうなんですね。何か自分の強さが分かり難いと思いました。ちなみにですがレベルや経験値はやはり地球からですか」
『そうそう、ゲームやアニメと一緒だね。何せこの世界はゲームの要素も入ってるから』
「ゲームの要素まであったとは知りませんでした」
『あれ?そうだっけ?地球から来たから常識だと思ってたよ。さて、もう時間だ。地上に戻さないとね。ちなみに一度使用した神像はだいたい十年間は使用が出来ないから、もし私と連絡を取るなら他の神像を探すか、神託の指輪を手に入れるように。ではまた会おう』
レキエル様がそう言うと急に視界が白くなり、視界が戻った時には教会の祭壇の前に立っていた。




