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25話

 取り敢えずシンクさんとミルさんには話を合わせてもらい、シンクさんは森の中にあった小屋から、残り四人は帰りに偶然発見して助けた、という事にした。僕もミルさんも自分の能力を話さないと、ゲアルギ準男爵の屋敷から救出したと説明しずらいからね。


 助けた四人は、とりあえず一度スベラニの宿屋に来てもらい今後どうするかの話し合いをすることにしたが、町に戻る前に水魔法と石鹸で助けた五人の身体と服をを洗う。捕まっている間はトイレに行かせてもらえなかった様で臭いのだ。

 エイヴァさんとラムをどうするか迷ったが、二人共恥ずかしいが匂いを気にしていたようで、子供の僕が水魔法を使うと聞きくと、それなら構わないと言って背中を向けて身体を洗った。濡れた服は水魔法の吸水で乾かした。



 宿屋に着きゾロゾロと部屋に入ると、クルタさんがシンクさんを見て抱きしめようと突撃したが、シンクさんに躱され壁にぶつかっていた。


 全員部屋には入ったががイスが無いので仕方なくベットに座ってもらい、来る途中に屋台で買った料理を配った。

 収納バックから出し様に見せてストレージから出した料理はまだアツアツで、空腹で急いで食べようとしたが熱くて食べきれないようでフーフーしながら食べていた。お替りもあげた後は食休みに冷たいミントティーも出してあげた。

 シンクさんとミルさんはアツアツにも冷たいのにも驚かなかったが、クルタさん達は高性能な収納バックだと思っているみたいで、クルタさんとジャックさんがバックを凝視していた。


 食休みをしながら今後の話を進めると、子供達は僕の身分を聞いた後に少し考えてから、出来るならファーガス村に住みたいと言って村まで一緒にいさせて欲しいと言われたので了承した。

 ラムとライにあまり文字の読み書き算術が得意ではなく生活魔法も出来ないので迷惑を掛けるかも知れないと言われたので、旅の最中は僕やクルタさんが色々教えると約束した。


 エイヴァさんは子供達の話を聞いて、自分はDランク冒険者だから子供達の護衛として雇って欲しい、雇って貰っている間に自分の今後を考えたい、と言ったのでラムとライの護衛として雇う事にした。ファーガス村に行くまで約2ヶ月あるからその間に心の整理を付けて欲しいと思う。


 アルテガさんはガストル侯爵領に行き奥さんと子供を探す事にしたようだ。理由は僕が奥さんか子供のどちらかはガストル侯爵領に送られた可能性が有るかもと言ったからだが、正直確証は全く無い。

 しかしアルテガさんは一年前に二人が居なくなってから最近まで何の情報も無くどうしようも無かったようで、可能性が少しでもあるなら探したい。と言ったので家族が見つかると良いですね。これは支度金にして下さい。と言って数枚の銀貨を渡しておいた。


 クルタさんには人数が増えるので馬の負担を聞いたが「荷物が増えなければ大丈夫だけど狭くなるわよ」と言われたので「それは仕方が無いですね分かりました」と返した。


 話し合いを済ませるとアルテガさんは旅の準備をすると言うと、僕達に頭を下げ「この恩はいつか必ず」と言った後部屋から出て行った。


 アルテガさんが出て行った後、シンクさんの武器が奪われていて無いので、エイヴァさんの武器と一緒に買いに行くことにした。ついでにラムとライにも旅の装備を買わないとなぁ、と考えていると、買い物ならクルタさんも行くと言うのでジャックさん達も含め全員で買い物に向かうことになった。


 ハンナさんをジャックさんがおんぶしてクルタさんがハンナさんの松葉杖を持ち全員で歩く。

 総勢九人の団体は色んな意味で目立っていた。勿論一番目立つのはクルタさんだ。まぁ何事も無く武器屋には着いたけど、途中エイヴァさんやラムが絡まれそうにはなったが、百九十センチはある女装した大男が連れだと気づくと逃げ出していた。


 武器屋には流石に全員は入れないので、まずはシンクさんとエイヴァさんの武器を選ぶ。

 シンクさんは鋳造品の片手剣、それに弓矢と矢筒を選び。エイヴァさんも鋳造の短剣選んだ。

 ただエイヴァさんもシンクさんの選んだ弓矢も見ていたので、シンクさんと同じように弓矢と矢筒も選んでと言うと、申し訳ないからと言って選ばないので「護衛に必要な武器を選ばないなら護衛として雇えないです」と言うとやっと選んでくれた。

 ただ、この店の品はあまり質が良くないので二人には、辺境伯領に行ったら買い直すと言っておいた。

 シンクさんとエイヴァさんの武器を選び終えると、交代でラムとライを呼び短剣を選んで貰う。やはり二人共遠慮するが、旅に出るのだから少しでも身を守れる物を持たないなら連れて行けない。と言って選ばせた。ついでに木剣も買おうかと思ったが、木剣なら僕が作れば良いなと思い直し買うのはやめた。

 ちなみに四人分の武器は鋳造品なのもあり以外と安く全部の合計は丁度二十万ルペ、小金貨二枚になった。金は勿論ゲアルギ準男爵の金庫から没収した金だ。四人分の武器の代金を一番歳が下に見える僕が払ったので店主は驚いていた。


 武器屋の後は、装備品を揃える為に服屋や防具屋を回り装備を整えたら、昼間を少し過ぎているが町の食堂に向かい昼食を取る。


「ホントに一緒に食っていいの?痛っ!ラム姉ちゃん何で殴るのさ!」


「ライ!ちゃんとした言葉を使わないと駄目よ。それに一緒のテーブルで食べるなんて失礼よ!」


「いや、そこまで気にしなくて良いよ。貴族と言っても男爵なのは父さんで、僕は男爵家を継ぐ予定も無い三男だからね。平民とあまり変わらないから」


「えっ、でも···」


「まぁ無理に改まった態度や話し方をしなくても大丈夫ってだけだから。それに家ではメイドも食事は一緒に食べてるし、村のみんなも僕には敬称くらいで、だいたいの人が普通に話すかな」


「わ、わかりました」


「ほらみろラム姉ちゃん、やっぱアレン様は公国の貴族とは違うんだよ」


「でもねライちゃん、アレンちゃんと私達だけなら良いけど、この国も選民思想の強い貴族は多いから、周りに私達以外の人が居る時はある程度ちゃんとした言葉を話さないと、何をされるか分からないから気をつけるのよ」


「ライ聞いた?クルタさんの言う通りよ。やっぱりアレン様が他と違うだけなのよ」


「やっぱそうなのか、じゃなくて、そうなんですか?」


「まぁ、今は気にしなくて良いから。ほら、食べないと覚めちゃうよ」


「はい、いただきます」


 やっぱ、みんなで食事をするのは楽しいよね。あっ!そう言えばジャックさん達に聞きたい事があったんだ。


「ジャックさん、ハンナさんの右足が不自由なのは元からですか?」


「いや、子供の頃にオレのせいで骨折をしたが、治療費が無くてな」


「そうなんですか」


「でもいつか治してやるつもりさ。教会にいる高位の治癒魔法使いなら治せる魔法があると聞いたからな。その為に辺境伯領で冒険者になってランクを上げて報酬を貯めるんだ」


「私は冒険者は危険だと反対したんです。でもオレのせいだからと。何度もジャックのせいじゃないって言っているのに」


「いや、ハンナが怪我をしたのは間違いなくオレのせいだ。あの時に帰らずにいれば」


「どういうことです?」


「酔った父が、私が外から帰って来たのが気に入らなかったようで、足があるから遊び行くのだと言って鞘に入った剣で右膝を。それで膝の骨が割れてしまいました。日頃から酔うと乱暴になる父でしたが、その日は特に機嫌が悪かったのです」


「オレはハンナを家に送った時に親父さんが酔っていたのに気が付いていたんだ。だから、オレが帰らずに側にいれば」


 う〜ん、今は聞くべき事では無かったな。それにしても、子供に暴力を振るう親は何処にでもいるもんだな。地球ですらよく聞く話だ、こんな世界だと余計に多いのだろうな。

 ハンナさんの足も、もしヒールで治せるならと思って聞いてみたけど、今の僕では治せないだろうなぁ。

 でも高位の治癒魔法で治せるらしいからどうにか覚えられないかな。ファンタジー系の小説とかではヒールより上だとミドルやハイヒールがあるけど···。

 治癒魔法の魔法書があれば使えるようになるけど、治癒魔法関連の魔法書や情報は教会が独占してるからなぁ。

 取り敢えずこれからは高位の治癒魔法を使える様なるために治癒魔法も色々試してみよう。


 昼食の時に触れる話では無かったな、と反省した僕はどうにか話題を変え昼食を済ませると、食料品を買いに向かった。みんなには僕の持っている収納バックに生の物を入れても一年は大丈夫だと言ってあるので、生鮮食品も多めに買っていく。


 ある程度必要な物が揃ったので宿屋に戻ろうと町の広場まで来ると広場はフリーマーケットになっていた。ただ午前中がメインの時間だったのかみんな売れ残った商品の片付けをしている様だ。


「クルタさん。フリーマーケットでは何が買えるんです?」


「色々ね。でも保存食や素材、あと加工した物とかが多いかしらね。ただ基本フリーマーケットは午前中で終わりね、何か買いたかったの?」


「何を売ってるか興味があったので」


「まだ少し露店をやってるみたいだし見て来たら?」


「いいですかね?」


「私は先にこの子達を連れて宿屋に帰ってるわね。ジャックとハンナはどうするの?」


「オレ達も宿屋に戻ろうかな、買う物も無いしな」


「そう、じゃあ一緒に帰りましょうか」


 そう言って僕とシンクさんとミルさん以外が宿屋に向かった。僕達は露店の片付けをしている人を邪魔しないようにフリーマーケットを見て回る。

 露店の商品はクルタさんが言っていた様に保存食や何に使うのか分からない素材を売っている所が多かった。

 ただやはり僕達が見に来るのが遅かったみたいで、見始めて五分経った頃にはほぼすべての露店が片付けを始めたので殆ど見ることが出来なかった。

 仕方なく帰ろうと広場の反対側に抜けると、一人だけポツンと敷物に座っている女の子がいた。

 女の子の周りはみんな片付けをしているが、その女の子だけはまだ露店を開いているらしく、女の子の前にはカゴが並び、側には台車が置かれている。近づき女の子前にあるカゴを覗いてみると。なんと!大豆を売っている。まさかこんな所で見つけるとは思わなかった。


「こんにちは、これは売り物だよね?」


 商品なのかを確証する為に女の子に声を掛けると、女の子はいきなり土下座の姿勢になった。


「そうです。お願いします。少しでもいいので買って貰えませんか」


 女の子はとても必死で少し驚いてしまった。


「え、うん、えっと買うよ」


「本当ですか!ありがとうございます!」


 女の子はそう言うと土下座をしておでこを地面につけ礼の言葉を口にした。あまりにも必死な顔でお願いしてきたので理由を聞くと。


 女の子は近くの集落に住んでいるそうで、基本集落で育てた作物の約半分を税を収める為の売り物にしていて、残りの作物とたまに家畜をつぶして集落のみんなで分け合って食べているそうだ。

 しかし数日前に魔物が集落まで来て家畜を襲い、畑の作物も荒らしたため作物がかなり駄目になったらしい。

 魔物に踏み潰されて駄目にされた物から比較的マシな物を選んでどうにか食べて繋いではいたが、その内飢えるし税も払えなくなってしまった。

 集落に数頭残っていた家畜の豚も売ったが税を払いきれず、他に売る物が無いので豚の餌を売りに来たそうだ。そしてこのまま税が払えないと姉が税を払う為の奴隷として売られてしまうらしい。


 なるほど、だからこんなに必死なんだな、しかし大豆は豚の餌だったかー、村では豚を飼ってないから分からなかったなぁ。


「それで、どれくらい買って貰えますか?」


「全部買うよ」


「えっ?ぜ、全部ですか?」


「うん、カゴにある分と、そこの台車に乗ってる分も合せて全部買う」


「ほ、本当ですか!これを全部ですか!」


「うん、全部買う。だから台車で僕が泊まってる宿屋まで運びたいんだけど」


「わ、分かりました。す、少し待って下さい」


 流石にこの量は持って帰れる量じゃないし、周りに人がいる中でストレージに収納は出来ない。収納バックに入れていいが、カゴの大きさが収納バックに入れられる条件より大きいため、小さいカゴに移し替える必要がある。なら、人がいない場所に運んでストレージに入れた方が楽なので、女の子には宿屋の裏庭に運んでもらおうと頼んだのだ。

 女の子は急いで片付け始め、カゴを台車に乗せ動物の革で作られたシートも丸めて台車にのせた。

 一分と掛からず片付けを終えると台車を引き始めた。少し重そうなのでシンクさんにも台車を押してもらい十分程で宿屋の裏庭に着くと、全員で大豆の入ったカゴを裏庭に全て降ろした。

 代金に銀貨だけだと使いづらいかも知れないので小銀貨や銅貨も混ぜて女の子に五万ルペの入った袋を渡すと、女の子は代金の入った袋を受け取り袋の中を確認して驚いた顔をして僕を見た。


「こ、こんなに!」


「カゴ代も合せて五万ルペ入れてあるから」


「ご、五万ルペですか!も、貰い過ぎです!代金は二万ルペです!」


「いいんだ僕はこの豆を探していたから。それに必要でしょ?」


「ほ、本当に良いんですか」


「勿論だよ。それよりも大豆は君の集落でしか作ってないの?」


「いえ、他の集落も家畜に豚を飼っているところなら作っているはずです」


「そうなんだね、良い情報が聞けたよ」


 その後女の子の集落の場所と知っている他の集落の場所も教えてもらい、女の子は台車を引いて集落に帰って行った。


 裏庭に置かれたカゴに入った大豆をストレージにしまうと、シンクさんに豚の餌をどうするのかと聞かれたので「食べるよ」と答えると若干引いていたが、ミルさんは興味があったようでどうやって食べるか聞いてきたが「ナイショ楽しみにしておいてよ」と返しておいた。


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