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21話

 野営地を出発した馬車はザルガット男爵領バルドの街に向け走り出した。御者席にはミルさんとシンクさんが座り、荷台には残りの四人が座る。 

 しばらく街道は馬車が一台しか通れないような道だったが街が近づいてきたからか道幅も広くなってきた。



 侯爵領と辺境伯領の間にはエバンス男爵領を含め五つの男爵領ある。ただしエバンス男爵領以外の男爵領は元々は一つ伯爵領だったそうだ。

 当時の伯爵が失爵され四人の男爵に分割して与えられた領地らしい。

 伯爵領だった当時に領都のあった場所が次の目的地であるバルドの街だ。バルドの街は元が伯爵領の領都だけあり、近辺にある五つある男爵領の中でも規模と人口が最大で、他の町や村とは違い、唯一石材で作られた城壁がある街でもある。

 人口はイルバニの約三倍強で三千人以上が住んでいるらしく、少し前までは近い内にザルガット男爵も昇爵されて子爵になるのでは?との噂もあったらしいが、代替わりしてからは昇爵の噂はぱったりと聞かなくなった、とクルタさん談だ。


 それと、ジャックさんとハンナさんの二人はよほど疲れていたらしく、馬車に乗ってすぐに寝入ってしまった。なんだかんだ二人旅では思うような睡眠が取れていなかったのかもしれない。本当はもう少し情報収集をしたかったがそのまま寝かせておく。


 あと、冒険者風の男だが、どうやらバルドの街に向かっているようだ。現状、間違いなく誰かの間者だろうとは思っているが誰の間者なのかは検討がつかない。あの小太りの隊長の絡み方は完全に僕を狙い撃ちしてたから、男がバルドの街に入るならバレないように探ってみた方が良さそうな気もするが······。




 バルドの街の城壁が見えてきた、マップで男の行く先を確認していたが、やはりバルドの街に入った。男は街の東側の何かの建物にいるのか、男を示すマーカーは止まったまま。クルタさんに街の東側に何があるのかを尋ねると、街の東側は比較的裕福な人が住んでいる場所だそうだ。ちなみに北は男爵の屋敷がある場所で、男爵屋敷の辺りには騎士や従士など男爵由来の使用人たちの家があり、街の中央には商店が多くあり、西と南は平民の住居やスラム街になっているらしい。

 そうなると、あの男は比較的裕福な誰かの使いか雇われている人物となりそうだ。


 城壁に到着すると門前に衛兵が入場税を徴収していたので、シンクさんと二人分の小銀貨二枚を払いバルドの街に入った。街に入ると馬車で男爵の屋敷に送ってもらい、シンクさんと二人屋敷の前で降りる。クルタさん達には宿の確保に向かってもらった。


 屋敷の前には門番が居たので身分を伝え面会を申し込む。本当は先触れをするのが礼儀だが子供ということで許してもらおう。門前で数分待っているとメイドが出てきて一人応接室に案内された。シンクさんは隣りの部屋に案内されそこで待機だ。


 応接室のソファーに座りメイドが入れた紅茶を飲んで待っていると、ドアを開け入ってきたのは肩に掛かるくらいの金髪を後ろで束ねた二十代後半に見える男だ。

 僕はソファーから立ち上がり軽く頭を下げ挨拶をした。


「お初に御目にかかります。僕はエバンス男爵マーク・エバンス男爵の三男でアレン・エバンスと申します」


「僕はヴァジム・ザルガット男爵さ。で、要件とは何かな?」


 自己紹介を済ませると早速要件を聞かれたので、検問所での出来事を話した。


「ふ〜ん、で?、その兵士らは捕まえたんだろ、なら後はコチラで裁いておくよ。報告ありがとね。ああ、後コレは慰謝料ってことで。じゃあ忙しいからこれで失礼するよ」


 そう言って懐から取り出した袋を投げ渡され、ザルガット男爵は応接室から出て行った。

 僕はどうしていいか判らずにしばらくザルガット男爵が出て行ったドアを見つめていたが、案内をしてくれたメイドが応接室に入ってくると、訳がわからない内にシンクさんと屋敷の外に連れ出されていた。


 男爵の屋敷から外に出た僕らは取り敢えず宿に向かう為シンクさんと二人街の中を歩く。途中ザルガット男爵から渡された袋の中を見ると数十枚の銀貨が入っていた。別に慰謝料が欲しかった訳では無かったが、一方的に渡された物を返す必要も無いか、とストレージに銀貨の入った袋をしまう。


 それにしても変わった感じの人だったな。貴族にはあまり居ないタイプな気もする。別に悪人という感じはしなかったが変人な気がする。


 宿はクルタさんに付けたマップのマーカーですぐに見つかった。

 宿に入り受付の女性にクルタさんの連れだと話をして部屋のカギを受け取り部屋に向かう。部屋に向かう途中にクルタさんがいる部屋を訪ね戻った事を報告してから自分たちの部屋に入った。今回もシンクさんと二人部屋だ。あと少しで夕食だと聞いたのでベットに腰掛けシンクさんと話をして時間を潰し食堂に向かった。


 食堂には既に僕ら以外が席についていたので「遅くなりました」と言ってイスに座る。注文は先に済ませた言われたので雑談をしながら料理が来るのを待っていたら、店員の娘が先に飲み物を運んで来た。

 テーブルに置かれたのは木のジョッキに入ったエール酒が四つと木のコップに入った何かのジュースが二つ、ジュースは僕とハンナさんの前に置かれた。

 クルタさんが「じゃあ取り敢えず乾杯」と言って皆で乾杯したので何のジュースか分からないが少しだけ飲んでみる。ジュースの味は少し酸っぱいが記憶にある味で、聞くとレモンのシロップを水で薄めた物だった。

 レモンがあるならヨーグルトやチーズが作れるし料理やお菓子にも使えるので、できれば少し確保したい。久しぶりにチーズケーキが食べたいな、と考えていると料理が運ばれてきた。

 運ばれてきたのはオーク肉のステーキとスープに固いパンだった。

 まずステーキを、と思い一口大の大きさにカットして食べてみると普通だった。焼いて軽く塩を振っただけのステーキで美味しくも不味くもない。なので店員に生のレモンがあるか聞くとあるそうなので、薄い輪切りにしたレモンを注文。

 イルバニの町で宿屋の主人に分けて貰った胡椒をオーク肉のステーキに振り、仕上げにレモンを絞ってから食べる。

「うん、まぁまぁかな」と言って次を食べようとしたが、クルタさん達が見ていることに気付いたので同じようにしてあげた。


 夕食後、カバンから出した手桶に水魔法で水を入れ、タオルを浸して身体を拭いた。シンクさんが使い終わった水を宿の外に捨てに行ったのだが、なかなか戻って来ないのでマップでシンクさんの位置を確認すると、あの男を表すマーカーとシンクさんのマーカーが重なり結構な速度で街の東に向かって動いている。

 マップを見ながら急いで武装してると、夜にも関わらず宿の表と裏に二人の計四人の人を表す表示が止まったままになっている。


 シンクさんはあの男に拉致されて宿の周りに居るのは男の仲間かな?多分戻らないシンクさんの様子を見に来た僕も拉致しようとか考えていそうだ。取り敢えずどちらかを黙らせてからシンクさんを追いかけよう。


 宿の表は通りになっているので騒ぎになりそうだ。裏にいる二人を片付けてシンクさんを追った方が良さそうだ。

 二階にある部屋を出て階段で一階に降り井戸がある裏庭のドアを開けると、裏通りの陰に隠れているように立っている二人の男と目が合ったが、二人の男は宿の裏庭に僕が出るのを待っていたのかすぐに目を逸らした。

 二人に全く気づいてないフリをして井戸に向かうと、案の定男たちが武器を手に走りきたので魔法を使う。


「グラビティ」


 重力魔法で二人の男を地面に這いつくばらせ、収納カバンから木剣を取り出し木剣の腹で男達の顎をゴルフスイングで殴打して意識を刈り取り後ろ手に男達を縛る。まだ殺しはしない、殺す前に聞く事があるから。


「ルーム」


 時空魔法で生物を入れられるワンルーム程の次元空間を開き男達を放り込む。

 この時空魔法のルームは盗賊騒動のあと光魔法の滅菌とか色々覚えた辺りで使える様になった魔法で、次元空間を作りだす時と開く時に魔力を消費する。

 ちなみにルームの上位交換でサブスペースと言う体育館くらいの次元空間を作る魔法もあるが、ルームを作成するのに魔力を500消費するのにくらべ、サブスペースは作成するだけで魔力消費量なんと2000も消費する。ルーム四倍の魔力量が必要だ。


 さて、マップで確認すると宿の表にいる奴等は動いていないので気付かれて無いだろう。宿の表の奴等は一旦放置して街の東に向かっている男とシンクさんを急ぎ追うことにする。

 しばらく男とシンクさんをマップで確認しながら追いかけていると、バルド東の城壁に辿りついてしまったが、シンクさんと男は城壁の向こう側にいて街からさらに遠ざかっている。

 しかしバルドの街は街道沿いにある街で基本街道のある南門から出入りしていて、東には門などの出入りする場所は無い、出入り出来るの南門と北門からだけだ。

 とりあえず城壁に出入り出来そうな穴等の抜け道が無いか探すが、今夜は月明かりも無く辺りはとても暗いため探せそうに無い。ライトを使えるが目立ってしまう。

 仕方が無いのでストレージから一メートル四方の木の板を取り出して板の上に乗り魔法を使う。


「サイキック」


 サイキックもルームと同じ時期に覚えた魔法で、物に手を触れずに動かしたり浮かせたり出来る。

 サイキックを練習していた時に、もしかしてサイキックを自分に使えば飛べるのでは?と思い試したが、自分の身体を直接サイキックで浮かすことは出来なかった。それならと、板に乗って板にサイキックを使ったら浮く事はできたが、徒歩と変わらない程度の速度しか出せない事が解り、何か違うなこれは飛翔では無いと結論付けた。


 僕が乗った木の板はサイキックの魔法で城壁に添い上昇し、五メートル程の壁を乗り越えて反対側に着地した。急いで木の板をストレージにしまいマップで見ながら森の中へと入り男とシンクさんの後を追うが、馬にでも乗っているのかどんどんと距離が離れていく。

 森の中を頑張って追うが流石に無理だと一旦諦め戻ることにした。一応街に戻る前に男達をルームから出して情報を聞き出したが、知らない男に金で雇われて子供と従者を攫えと指示された冒険者崩れのようで、ろくな情報は無かった。ただ一つだけ情報があるとすれば、従者は死んでも問題ないが、子供の方は怪我をさせても構わないが絶対に生きた状態で攫え、もし子供が死んだらお前らも殺す。と言われたらしい事くらいだ。

 それと、情報を聞き出した後の男達は頭と胴体に別れてもらった。重力魔法と時空魔法見られてるからね。希少魔法らしいから情報拡散されないためだ。それにこういう奴等は殺しておかないと仕返しとかして来そうで面倒だから。


 城壁を越え裏口から宿に戻り、だいぶ遅い時間だがクルタさんの部屋に向かう。クルタさんを自分の部屋に呼び出してから、シンクさんが拉致られたと報告した。クルタさんに原因に心当たりはないかと聞かれたので、さっきの男達の話から僕が狙われてる可能性が高くシンクさんは僕の従者なので攫ったかも知れない、と伝えた。

 話を聞いたクルタさんが僕を一人にするのは危険だからと、クルタさん達の部屋で寝るようにと言われた。

 寝る時クルタさんと一緒のベットになりそうだったが、どうにか回避してミルさんのベットで寝た。


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