表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/41

19話

 朝食を食べ終わり野営した場所を片付け、僕らはメリト村に向けて馬車を走らせた。

 メリト村は昨夜の野営地から休憩を入れて六時間程の場所なため、昨日よりは馬車の速度を落としている。

 御者席にはシンクさんとミルさんが座り、クルタさんは荷台の前方、御者席に近い場所に陣取り。僕は一人荷台の後方で幌にもたれて座っている。


 速度を落として揺れが少なくなったから舌を噛みそうになくなりやっと景色を眺める余裕ができた。

 昨日は馬車の揺れに耐えるのに必死で周りを見る余裕は全くなかったけど、これくらいの速度なら揺れはするけど全然我慢できる。···昨日はホント酷かった。

 ただ揺れと振動でお尻が痛いのは変わらないのでどうにかしたいなと思ってしまう。

 

 やっぱ一番の問題は馬車の構造だと思うんだよね。

 休憩中に馬車の構造を見たけど、台車と殆ど変わらないから衝撃がダイレクトに伝わる。なのでサスペンションとか欲しいけど作れるか分からないから、やっぱりまずは板バネかな?木工職人のスキルが上がればどうにかなりそうだけど。···う〜ん。

 それか板バネを作れそうな職人が居たら頼んでみるのもいいかもしれない。でも作って貰うにしても丈夫で弾力のある素材が必要かも。重ね板バネならある程度の素材でも何とかなるかな?まぁ、とにかく今は保留だけど。


 あっ、それに貝殻か消石灰も探さないと。石鹸も作った分がすぐに無くなりそうだし。

 消石灰って石灰石で作れたっけ?確か石灰石は貝殻なんかと同じだったはず?何か小学校の理科の実験で石灰石を使ったことがあったな、あの石灰石を貝殻みたいに焼いて作ったのが消石灰だっけ?あー、記憶が···。

 確か前世で石灰石を結構見てた記憶はあるんだよね。前世は海に囲まれた南の島で、確か何処かで山を削って採掘もしてたはず、てことは海に近い山肌にある可能性があるかな?それか海か。何にしても海に近い場所には行かないといけないだろうな。



 馬車の速度が少し落ちたのでマップで確認。

 馬車の前方にまばらだけど人の反応が表示されているので、どうやらメリト村に着いたのだろう。


 今は太陽の傾き的に十五時くらいだろうか、荷台の後方から御者席のある前方に移動して前方を確認するとやはり村のようで、木材で作った簡易な囲いがあり、囲いの向こうには木造の建物が見える。

 馬車は村に近づくと徒歩に近い速度でメリト村に入り、クルタさんの指示で進んだ馬車は宿の前で止まった。クルタさん一人が馬車から降りて宿に空き部屋の確認に向かった。


 村の規模はファーガス村よりは小さいようで、目の前の宿もノーラさんの宿屋の方が立派な作りだと思う。村に入ってからここまで他の建物もそうだが簡素な建物が多く寂れたように感じる村だ。

 周りの建物や人を見ていると一人だけ動かない気配があったので気配を探すように目を向けると離れた建物の陰に誰かが隠れているように感じる。しかし数秒経つと気配が遠ざかっていくので、気のせいだったかも知れない。

 そのまま馬車でしばらく待っているとクルタさんが宿から出てきた。


「おまたせ、ミルちゃん馬車を厩にお願いね。部屋はこの前と一緒よ、アレンちゃんとシンクちゃんは私が案内するから部屋に荷物を置きに行きましょうか」


 返事をして馬車から降りクルタさんの後に付いて行く。宿に入りカウンターにいる男性に軽く会釈をして通り過ぎ一階の奥にある部屋に入った。部屋の中は真ん中のスペースを挟んで置かれた二段ベットが二つ置かれただけの小さな部屋だ。


「この部屋を四人で使うわ、まぁ外で寝るよりはマシな感じね。そっちのベットは二人で使って」


 クルタさんはそう言うと部屋に入って右側の二段ベットを指差した。ベットは藁の上にシーツが掛けられただけのベットで枕とかは無いらしい。

 とりあえず二段ベットは僕が上でシンクさんが下を使うことだけ決め荷物を置き、クルタさんには二人分の宿泊代六千ルペ、小銀貨六枚を渡した。


 聞くと、この宿屋は素泊まりしか無いので食事は無く身体を拭くには基本裏にある井戸の水を使うそうで、本当にただ寝るだけの場所みたいだ。

 では食事はどうするのか聞くと、村の共同炊事場で自分達で作るそうなので、ミルさんが来たら四人で共同炊事場に向かい食事を用意して近くで適当に食べるそうだ。話している間にミルさんが部屋に来たので全員で炊事場に向かう。


 何かもう村と言うよりキャンプ場?みたいな感じだ。一応まだ開拓中らしい。

 元々が野営の場所に村を作ったからこんなもんなんかな?知らんけど。

 

 炊事場に着いたのでとりあえず飯を作る。ミルさんが美味しそうに食べてたから昨日と同じスープを作るかなと材料を肩掛けの収納カバンから取り出す。手順は昨日と同じなので切って煮込むだけだ。

 こんなことなら休憩中にでも何か狩れば良かったかな。一応ストレージになら前に狩ったボアなんかも入ってるけど流石に無理なので、次からは泊まる場所のことは先に聞いて必要なら狩りをした方がよさそうだ。


 ···ん?視線を感じたので視線を感じた方を見ると誰も見えなかったが、確かに気配が建物の陰から遠ざかって行った。さっきは勘違いかと思ったけどやっぱり見られてる?そんな気がするな。一応シンクさんには話しておこう。しかし、もし見られているとしたらどんな奴だろう?


「シンクさん、さっき向こうから見られてたみたい。ただ居なくなってはいるけど」


「向こうから··確かですか?」


「うん間違い無いと思うよ」


「分かりました。次も気が付いたら教えて下さい。勿論私も注意しておきますが、たぶんですけど。アレン様は気配察知系のスキルをお持ちですよね?」


「あー、うん。確かに持ってるね気配察知。まぁ分かってると思うけどナイショね」


「勿論言わないですよ。アレン様の情報は他言無用と強く父からも言われてますから」


「ならいいけど。とりあえずそろそろ食べようかお腹空いたしね」


 出来上がったスープとパンをみんなに配ると、串焼きを渡された。ミルさんが休憩中に仕留めた魔物の一角ウサギの肉らしく、普通のウサギよりも二回り程大きく肉は少し固いが調理次第では美味しく食べることが出来る魔物らしい。

 ミルさんはこの前もこの村に泊まったので食事用にと休憩時に狩ったそうだ。

 串焼きを見ると肉の固さを無くす為に叩いて切れ込みを入れてから焼いてあるようで、食べてみると確かに普通のウサギよりも固いが味は普通のウサギよりもさっぱりした感じで悪くはない。

 串焼きを食べながらミルさんを見るとやっぱり食べるのが好きなようで、もうスープをお替りしている。今日は昨日の二倍の量のスープを作ったからミルさんが沢山食べても朝の分くらいは残るはず···たぶん。



 スープは辛うじて明日の朝の分は残ったので鍋ごと収納カバンにしまってある。宿屋に戻ると特にやることも無いので早々に二段ベットの上で眠りについた。



 翌朝、二段ベットから降りるとシンクさんがいないので井戸に向かうと、井戸から少し離れた場所でシンクさんが素振りをしていた。

 僕も顔を洗ってからシンクさんの横で一緒に素振りをしていると、残りの二人も顔洗いに来たので素振りを止め身体を軽く拭いたら宿を引き払い、炊事場で朝食を済ませて出発した。

 昨日と同じ荷台の後方に座り徒歩程度の速度で進む馬車から、村に来た時と同じように建物や人を見ていると誰かの視線を感じた。視線の人物を探すと三十代の男と目が合うが男はすぐに建物の陰に隠れて見えなくなった。


 う〜ん、やっぱり見られてたな今のは流石に間違い無いだろう。あれかな何処かの間者とか?知らない人間が来たから見張ってた?それか誰かの指示で付けて来た?でも付けられた感覚は無かったから付けられてるのは違う気がするけど···まぁ帰りも通るしその時にでも分かるか。




 次に向かうのはイルバニの町で、宿屋には普通に食堂があるらしいので狩りをせずに遭遇した動物や魔物だけを狩ることにした。七時間の移動で一回だけゴブリンの群れに出くわしたが、クルタさんの肉弾戦とシンクさんとミルさんの弓で撲滅。僕はゴブリンの死体の処理を手伝っただけ。


 結局ほぼ何事もなくイルバニの町に入り宿屋へ。

 宿屋は朝夜食事代込みで一人六千ルペなのでクルタさんに銀貨一枚と小銀貨二枚払った。まぁ町ならこの値段は妥当なのかな。食事の時間が十八時からと言われたのでシンクさんと町を見学に行くことにした。

 本当は貴族の子供だしグスタフ男爵に挨拶するのは礼儀なんだけど、今回は大目にみてもらうことにした。父さんも成人してないし三男だからほぼ通過するだけなら問題ないと言っていたしね。


 イルバニの町はだいたいガストル侯爵領にあるリネスの町と同じくらいの規模の様で田舎の町といった印象。一通りの店も揃ってるし人もそれなりにいる感じ。

 教会もあったので神仏がないか一応確認してみたが、女神像しか置いてなかったので喜捨した後、石像には触れずに祈るフリだけしてシスターと話をして教会を出た。


 屋敷に教会関係のことが載っている本が無かったのでシスターに話を聞くと、この世界は女神だけを神としている一神教の女神教会と、創造神を主神として女神を含めた他の神も敬う多神教の創生教会があり、昔は女神教会と創生教会は規模は同じくらいだったが今では女神教が圧倒的な勢力である。

 女神教が圧倒的な勢力になった理由は神託を授けるのが唯一女神だけだから。

 神託がある=唯一実在する女神=他の神は存在しない、が出来上がったみたいだ。


 教会を出たあと冒険者ギルドの看板を見つけたので建物に入ってカウンターに居た男性に話を聞くと、この町でも勿論冒険者が活動しているが、この町にあるのは出張所で買取や販売だけしか行っておらず。冒険者登録するには支部以上で登録しないといけないとのことだった。


 それと、シンクさんには父さんたちにも話していない収納スキル持ちなのを明かすことにした。

 理由は二ヶ月以上一緒にいるということ、ギルバートさんから聞いた話では一応収納持ちはレアなスキルだが存在しており居ない訳では無く他者にバレると危険だから隠しているだけだろうと聞いたこと。

 確かにカーラさんも隠していたし弱い人が収納持ちだとバレると誘拐などにあう可能性が高い。収納持ちの奴隷とか引く手数多だろうし納得できる話しだった。

 なのでまずはシンクさんに話をして様子をみる。というか、この辺りから話が漏れるようなら他では絶対話せないかも。

 ただカーラさんと同じアイテムボックスとした。ギルバートとさんも知ってたのはアイテムボックスだったし。


 シンクさんは収納持ちと聞いて驚いていたが、何度か頷き一人で納得すると僕を見てから「何があっても絶対にアレン様のことは他言いたしません」と言ったので「お願いしますね。信用してますから」と返しておいた。一応信じて貰うために人が居ない場所で以前倒したボアを出して見せたけどね。


 それともう一つ、人が多くて分かりにくいが、この町でも誰かに監視されている感じがしている。村の時よりもだいぶ分かりにくいが目線を感じる。

 もし監視されてるなら今の僕を監視する理由で可能性が高いのは三つだ。一つ目はガストル侯爵に開発した物のどれかの情報が漏れた可能性で、何かしらの嫌がらせか奪う為、それか情報を集めているか。

 二つ目は教会関係者に治癒魔法がバレて目を付けられた。

 三つ目が一番嫌かな、女神に僕が創造神の使徒とバレていて、女神の臣下が監視してる。う〜んでも女神にバレたなら問答無用で殺しに来そうだよなぁ、他にいた反女神勢を弾圧したらしいから。

 そうなると一つ目か二つ目の可能性が高そうだなぁと思う。

 今の所考えられることだけをシンクさんと共有してとりあえず様子見をする。


 その後も町を二人で歩いて店を冷やかしていたが、夕食の時間が近くなったので宿屋に戻り夕食を食べた。

 ちなみに夕食はオーク肉のステーキとパンとサラダだった。特にステーキが美味しかった。この世界で初めてニンニクと胡椒に出会ったから余計に美味しく感じたかもしれないけど。試しにニンニクと胡椒を宿屋の主人に分けて欲しいと頼んだら、多少ならと分けて貰い、売っている店も紹介して貰ったので明日出発前にその店が開いてたら買って行こうと決めた。ただ高いと思うからあまり買えないとは思うけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ