16話
今日から六月だが五月後半から続く梅雨のせいで外に出ることができず身体も鈍り気味だ。しかし僕の記憶が正しければ梅雨が明ければお楽しみがある。
今日は雨で外に出れず退屈なので机に向かい本を見ながら魔法陣を書こうとしている。このあいだ板に魔法陣が彫れ無かったので、書く事は?と思ったがやっぱり書けない。不思議なのが本を見て覚えることは出来るのに書こうとすると思い出せない。ホントに不思議だ。
何度も書こうとチャレンジしたせいで完全にライトの魔法陣を覚えてしまった。なのに書こうしたら忘れてしまい書こうするのを止めたらしばらく時間が経つと思い出す。
それにしても何が原因で忘れるなんて現象が起こるのか?神様が操作してる?んーそれは無い気がするから、やっぱ魔法陣に原因ありそう。だとしたら考えられるのは魔法陣の中に忘却系の何かが仕込まれてる可能性かな。そうなるとこの数字や模様に原因がある訳だから···どうすれば良いの?う〜ん、分からん。
いや待てよ、覚えることは出来るから、ここではまだ忘却系の何かは作用してないことになるよね。となると書くや彫るという行動した時に影響受ける訳だから、思い浮かべて書くまたは彫るがキーになって発動するのかな。
さっき他の魔法陣も見たけど魔法陣ってちょっと離れて見ると同じような模様に見えるけど近くから見ると間違い探しみたいになってるんだよ分かるかな?簡単なライトの様な魔法陣で三桁、難しい魔法の魔法陣だと四〜五桁の文字や模様が魔法陣の中に書かれていて、間違い探しのような感じになってるんだ。その文字や模様の中に忘却系の何かがあるような気がしてるんだけど。
まぁ、暇だしこの本にある魔法陣から同じ文字列を探してみるかなー。
···う〜ん、無理だー。もしかしたらとか思ってたけど全然無理。予備知識やヒントも無しでは流石に無理だったらしい。
ちょっと赤と白のストライプ着た人を探すみたいに気軽にやっちゃ駄目なやつだった。
気分転換に違うことしよう、何しようかな?···そう言えばクルタさんは何処まで来たのかな?ワールドマップで見てみるか。
おっ、もう隣のグスタフ男爵領まで来てるな、雨が止めば後一週間以内で村に着くかな?やっと砂糖が手に入るけど忙しくなりそうだ。
さらに三日が経ち昨日からは天気も良くなり本日は快晴なり。
そして今日は、まずこの特殊な服を着ます。ケーラさんとケイト姉さんに協力して貰って作った特殊な服、分かりますか?
そうです、今日は雨のせいで少し遅れてた念願の春収穫をします。そう!とうとうハチミツを収穫する日がやって来たのです。
まず鉄鍋に小枝を入れある程度燃やしたら生木や草を入れ煙を立ち上がらせる。煙が出ている鉄鍋を蜂の巣箱の側に移動させ数分待つ、数分待ったら蜂の巣箱の蓋を開き巣枠を取り出して桶の中で巣枠から巣をナイフで切り取る。巣を取り終わった巣枠は元に戻し同じことを繰り返し、巣枠を半分取り出したら箱に蓋をして蜂の巣が入った桶と煙が出ている鉄鍋を持って蜂の巣箱から離れる。
離れた場所で見ていた家族の前に取ってきた蜂の巣が入った桶を置く。
蜂の巣が入った桶を置くと真っ先に見に来たのはセリナだ。残りの家族はゆっくり近づいて来た。
「やった〜ハチミツだ〜!」と真っ先に近づいたセリナが嬉しそうな声を上げ。
「舐めてみる?」
そう言うと「やった〜」と声を上げハチミツを指に絡めて舐めた。
「うわぁ〜、あま〜い、お兄ちゃんハチミツあまくておいしい!」
「少しはしたないかもしらないけど、みんなも舐めてみれば」
みんなも舐めたかったらしく子供から順にハチミツを舐め、「あま〜い」と口々に言葉にした。
父さんは最後にハチミツ舐めると、少し考える仕草をした後に頷くと。
「アレン、この養蜂は来年から村の特産にしたいな。本当はすぐにと言いたいが話しを聞く限り今年はこれ以上生産増やせないんだよな?」
「そうですね。今年は家族とお裾分けくらいかな。来年はもっと離れたところにも巣箱を増やせば生産量を増やせるかも」
「そうか、なら今年は家族で楽しむとするか」
「確かハチミツからもお酒も作れたよね?」
「ああ、ミード、ハチミツ酒だな。ただ製法が分からないから製法を売って貰うか職人を誘致しないといけないな」
「そうですか、ならそのまま売った方が良さそうですね」
「そうだな、売るとなると容器を買うか作るかだが、香水や蒸留酒の容器も必要だから作った方が良さそうだな」
「はい容器はどうしても結構な量が必要になるので作るべきだと思います」
「ね〜、今は仕事の話しをしなくても良いんじゃないかしら」
「あぁゴメン、アレンと話すと歳が近い人と話してるみたいで話しが進むからついね」
「まぁ分かりますけど。前から思ってたけど子供たちの中でアレンだけ考えが大人びてるわよね」
「考えは大人びてるけど発想は子供?なのかな」
今回採れたハチミツの量は一つの蜂の巣箱から約一リットルで全部で約五リットル、陶器の容器十個分になり、蜜蝋は少しだけおやつにして、残りは検討することになった。
今日は砂糖の代わりにハチミツを使ったホットケーキパーティーになり、従士たちにもホットケーキとハチミツのお裾分けを配った。
翌日、朝にクレープを作ったが昼はホットケーキが食べたい言うのでケーラさんと一緒に作りみんなに運ぶ。
ついでにヤシの実ジュースと小さめの陶器の容器を母さんの前に置いた。
「あら、これは何かしらココナッツミルク?の匂いがするわね」
「ココナッツミルクから作ったシャンプーだよ。今日から石鹸じゃなくこのシャンプーで髪を洗ってみて。シャンプーは石鹸と違って髪専用だからゴワついたり軋んだりしないはずだよ」
「へー、髪専用ねぇ、本当に大丈夫なのね?」
「うん、大丈夫。母さんが平気だと思ったら他のみんなにも使ってもらってね」
「分かったわ」
さてあとは石鹸を改良すればオッケーかな、ならまずは川に行かないとな、ただ近場の貝は拾っちゃたからな上流か下流に行かないとだな。
川に着いたけどやっぱこの辺はもう無いな。川は元々貝が少ないからな、かたつむりの殻でもいいけど、下流行くか。
貝やかたつむりの殻を探しながら川に沿って下流へ歩く。下流に向かい探すとあるにはあるが全然足りない。
川には魚もいて近くの魚なら簡単取れた。取った魚はすぐに〆て内蔵を出して川の水で洗ってからストレージに入れておく。魚を洗っていると捨てた内蔵に川海老が群がっていたのでついでに川海老も取ってから〆てストレージに入れてさらに下流に歩いていく。
たぶん一時間半くらい下流に歩いただろうか、流石にもう村から離れ過ぎてると思うので離れ過ぎは良くない。転移を使って村の近くまで戻ろうと思い、一度ワールドマップを見る。転移した先に誰か居たらまずいので先にマップで確認する為だ。最初に貝を探した場所に人は誰も居ないから転移しても問題はなさそう。
ただマップで見てここからもう少し下流に魔物の反応があるし、村からもまあまあ近いので討伐してから帰ることにした。
魔物までの距離が残り百メートルくらいで気配察知が反応したようで何かがいるのが分かる、足音を出さない様にゆっくり隠れながら近づき木の陰から見ると、十メートル程離れた場所にボアが二匹いて川で水を飲んでいるようだ。
ボアは猪に近い魔物で肉質はほぼ豚肉と変わらない、肉はウサギ肉と同じくらい村でもよく食べられていて美味しい。
ただボアの性格はしつこいので一度相手を敵と認識すると何度も突進して来るので遭遇すると
注意が必要。
魔物が書かれた本には確かこんな感じで書いてあったはず。
う〜ん、とりあえずボアは狩ってストレージ入れておけばいいかな、肉も美味しいからね。
木の陰から右手を伸ばし手に拳銃を持っている様にイメージして人差し指を十メートル程離れた場所にいる右のボアに向け指で狙いを定める、すると指先に圧縮された石の弾丸が生成された。
「狙撃」
ロックバレット改め狙撃と口に出すと、指先に生成されていた7.62mmの圧縮された石の弾丸が高速回転しながら発射された。
高速回転しながら発射された石の弾丸はボアの眉間に命中するとボアは小さな悲鳴をあげて前足から崩れる様に横倒しになった。
正面右に居たボアが崩れるのを確認したので、急いでもう一匹にも人差し指を向け石の弾丸を発射する。急いだため狙いがそれ左を向いていたボアの前足の付け根に当たってしまった。しかしボアは前足を撃たれて思いの外動くことができないようなので、次でしっかりと狙ってからボアの頭部を撃ち抜いた。
ちなみに狙撃は通常のロックバレットとアレンジしたロックバレットを差別化する為に狙撃と言っているだけだ、スキルに無唱和があるので何を言葉に出してもイメージさえしていれば問題無いのだが。
ボアを二匹とも倒したが木の陰で一分待ってから右手に剣、左手は狙撃をいつでも撃てるように人差し指をボアに向けながら近づいた。剣でボアを両方突いて死んでいるのを確認したら、死んでいる二匹のボアに触れてストレージに収納。本当なら血抜きや解体をしなければいけないがストレージなら時間が止まってるから問題ないので後で安全な場所で血抜きや解体をすることにした。
ボアを仕留めたが下流方向にさらに気配がある事に気付いた。その気配は今に消えそうな程とても弱くボアが生きている時には気付けなかった。
僕の気配察知はだいたい百メートルくらいなので、近くに弱い気配の何かがいるは間違いないので確認しに行くことにした。
川沿いに隠れられそうな物が無くなっているので、左手を狙撃が使えるように構え、右手には剣を持ち少しずつ気配に近づくと二匹の狼が倒れていた。狼を鑑定するとグレーウルフとあり大きい方は体力がゼロになっていて呼吸もしていないが、小さい方の狼は一応体力が残っていて呼吸は辛うじてしている状態だ。
もしかしたらさっきのボアにヤラれたかもしれないな。ボアに敵認定されたけど子供がいて逃げられなかったのかも。
とりあえず大きい親っぽい方はストレージに入れるとして、子供の方をどうするか?だな。う〜ん、やっぱまだ子供だし間に合うなら助けてみるか。
一応大きい狼が本当に死んでいるかを確認するため、先に大きい狼をストレージにしまってみる。すると問題なくストレージに入ったので死んでいたようだ。
次に小さい方、子供のグレーウルフに近づきストレージに入るか試したら入らないのでやはりまだ生きている。なのでヒールを掛けてやり様子を見てみる。
ヒールで若干呼吸がマシになったので数回ヒールを重ね掛けしたら、だいぶ呼吸がマシになったがまだ目を覚ます気配は無い。
その場でしばらく様子を見ていたが日がだいぶ傾いてきているので、そろそろ村に戻らないとまずくなってきた。
どうしよう、目を覚ます気配が無い、せっかく助けてここに放置もなぁ。···仕方ない、グレーウルフってまぁ狼だし、狼なら番犬として飼えるだろ、たぶん···知らんけど。
とりあえずまだ体長三十センチにもなっていない痩せた子供のグレーウルフを抱え、マップで村から一番近い川原周辺に誰もいないのを確認してから転移した。
初めて自分以外と転移したので、子供の狼が無事に転移されるか少し不安だったが問題なく転移できた。川原からは屋敷までアリバイ作りの為にも歩いて帰る。屋敷に帰る途中何人かに子供の狼をどうしたのか聞かれたが、川を下流に行ったら死にかけ倒れていたとほとんど本当のことを言っておいた。
屋敷にグレーウルフの子供を抱いたまま入り、父さんに拾った経緯を話してから、リビングでグレーウルフの子供の汚れた身体を濡れたタオルで拭く。匂いも臭いので本当は洗いたいが今は仕方が無い。そうしていると父さんから話しを聞いた母さんがリビングに来た。
「グレーウルフの子供ですって?凄く痩せてるわね、大丈夫なの?」
「たぶん大丈夫じゃない?分かんないけど」
「この子だけだったのよね?」
「群れも親はいない、この子だけだったよ」
「そう、まぁグレーウルフなら番犬?番狼?で飼ってるのは見たことあるから子供の内から飼うなら大丈夫でしょうけど、あらこの子女の子ね」
「ホントだ女の子ですね」
夕食で父さんから全員にグレーウルフの子供を飼うと周知され、セリナが興奮してリビングに寝かせている子供のグレーウルフに突撃しようとしたが母さんに止められた。
その後リビングの端に簡単なゲージを作りグレーウルフの子供をゲージに入れた。
とりあえず今日は僕もゲージを設置したリビングのソファーで眠るので寝る前にもう一度ヒールをグレーウルフの子供に掛けてからソファーで眠りについた。




