14話
「う〜、眩しいなぁ。···ん?」
眩しさに目が覚めると視界に飛び込んできたのは白っぽい天井だった。
のそりと上半身を持ち上げ辺りを見渡す、どうやらベットに寝かされていて、眩しかったのは窓から日差しが差し込んでいたらしい。
隣のベットにはカッツさんが眠っている。
んー?あの後どうなったんだっけ?確かカッツさんの治療が終わって〜。
カッツさんを治療した後のことを思い出そうとしていると、いきなり部屋のドアが開き女性が入ってきた。
そして、その女性は僕と目が合うといきなり飛び込んできた。
「アレンちゃん!」
「うわっ!?」
咄嗟に寝ていたベットから逃げるように転がり女性を避け、転がった勢いのままベットから転げ落ちたが急いで立ち上がり身構えると、女性はベットにうつ伏せのまま顔だけをこちらに向いている。
「む〜、アレンちゃん逃げるなんて酷いです〜」
と女性はうつ伏せのまま口を尖らせ僕を見ている。
「え?何、てか誰!?」
「こらっ!エイミー!いきなり何やってるんだ」
知ってる声に反応してドアの方を見るとザックさんがドアの側に立っていた。
「エイミー?」
そう呟いてからもう一度女性を見ると女性は悲しそうな顔で僕を見ている。
あれっ?どこかで見た顔だなぁ、しかも誰かに似てるような。誰だっけ?
「アレン様起きて早々に娘がすみません」
娘?ザックさんの···?あっ!あー、思い出した!エイミーさんか!
赤ん坊の頃にうちの屋敷でメイドをしてた人で、ザックさんの長女のエイミーさん。シンクさんのお姉さんだ。
確か僕が二歳になる前にメイドを辞めて知り合いのと結婚してうちを辞めたって母さんが言ってたな。
「あー、エイミーさん?」
「酷いです〜、アレンちゃん私を忘れてしまいましたか?」
「エイミー、お前がアレン様の側にいたのは、アレン様がやっと歩き始めた赤ん坊の頃だぞ。覚えてるはずないだろ」
「いえ、何となく覚えてますよ。たぶんよく本を読んでくれた方です」
ま、ホントはしっかりと覚えてる。この世界の本を初めて僕に読み聞かせしてくれたのが、エイミーさんだったから。
「ほら〜、やっぱり覚えてたじゃないですか〜」
「うわっぷ!?」
エイミーさんが飛び込んできたが今度は避けなかった。まー、思い出しちゃったから。あの時の、抱っこされた時の膨らみを。
ドコとは言わないがエイミーさんは大きいのだ。ドコとは言わない。でも本を読んでもらった時の後頭部は···幸せだったよ。今も顔が圧迫され···うん、今も相変わらずだ、ドコとは言わないけど。···ただ息がそろそろ。
僕が苦しみ始めるとザックさんがエイミーさんを引き剥がしてくれた。
とりあえず話のできる部屋に移動することになり、三人で部屋を出て階段を下り右のドアをノックして部屋に入る。
部屋の中はリビングルームのようで暖炉とソファーセットがあり、部屋に入るとソファーから立ち上がったのかギルバートさんと知らない男性が立っている。
「アレン様、起きられたようですな、気分はいかがですかな?」
「ええ、寝たおかげでだいぶスッキリしてますよ。問題ありません」
「ならば結構です、とりあえずこちらに座って下さい」
勧められたままギルバートさんの横に座り対面の男性に軽く会釈する。
「まずは自己紹介からしておきますな、こやつはリネスの町で宿をしている者で名をレビンと申します」
「お久しぶりです。アレン様は覚えて無いと思いますが、私はこの宿の店主でレビンと申します。あちらが妻のエイミーです」
「アレン・エバンスです。すみません僕はレビンさんのこと覚えてなくて」
「いえいえ、私が一方的に知っているだけなので気にしないで下さい」
「アレン様、レビンはカイン様とわしが面倒をみていた者なので信用して構いませんぞ」
「そうですか?」
「ええ、レビンのことはガキの頃から知っておりましてなー。コイツは最初わしらにくっついていたのですが、途中からマーク様と二人意気投合したらしく、よく二人で生意気にもわしらに模擬戦を挑んできておりました、まぁもちろん思っきり伸びた鼻を折ってやりましたがな!ワッハハハー」
「ギルさん、話しが脱線してますよ」
「おっと失敬、えー、何だったか?あー、そうコイツは元冒険者でしてな、冒険者を引退してファーガス村に移住して宿でもと言ってきたので、なら、とカイン様が資金を出しリネスの町で宿をさせております」
「へー、では実質的な宿のオーナーはお爺様ということですか?」
「そうです。私はカイン様にこの宿を任されているに過ぎません」
「アレン様、レビンと娘には宿をませると同時に情報を集めさせております」
「間者ってことですか?」
「まぁ、間違ってはおりませんな」
「二人に危険は?」
「まぁ情報と言っても町レベルの情報なので危険はありません」
「そうですか、大丈夫ならいいですが。間者か。でもまぁ、町レベルでも情報は大事ですからね、まあ分かります。レビンさんとエイミーさんはどんな活動をしてるのですか?」
「特に活動はしていません。変に動くと怪しまれることがありますからホント雑談レベルの会話くらいで、最近聞いたのは、行商の男が最近領都の治安が良くなった気がするとか、冒険者が、薬草系の依頼が凄く増えたとか。そんな話を食堂でしているのでそういった話を紙に書いて亡くなったウセルに渡してました」
「ギルバートさん、これって?」
「ええ治安云々は、たぶん昨日の奴らが領都からいなくなったからとも考えられますな。ただ確証はありませんから何とも言えませんな。捕らえた奴等を尋問しても関与を示す情報を残すとも思えませんし、もし奴等が依頼で動いたとして依頼主を聞き出しても本当の依頼主まで数人以上は間に挟んでいるでしょうからな、辿れるとは思えませんな」
「ですよね。後ギルバートさんもレビンさんも元冒険者なら、薬草の採取依頼が凄く増えるのって理由何か思いつきますか?」
「うーん何でしょうね。ちょっと私には分かりません。ギルさんはどうです?」
「んー、薬草なのだから回復系のアイテム作成のためだろうがなぁ」
なるほど回復アイテムかぁ、回復アイテムを増やすってことは、回復を必要とする人が増えるって予想してる?もしくは必要な人が増えてる?ってこと?
つまり、ボーションや傷薬を大量に使用、またはストックしてる?誰が?何のため?
例えば現在進行形でどこかで回復アイテムを大量に使用しているとして、レビンさんたちの耳に入らないか?大量に怪我人が出たら普通はどんなに隠したとしても噂は広がる、隠し通せるもんじゃない。それともまだ噂が広がってないだけ?んー、何か違う気がする。
なら例えば回復アイテムを大量に作成、ストックしようとしてる人がいる場合は?ストックするのは何のため?それは大量にに怪我人が出ると知ってるからだ、なら。
「レビンさん、最近聞いたりした領都近辺
の変化はありました?」
「んー、そういえば少し前に領都から来た商人は、最近物の値段が少しだけ上がったとか、商人同士で話してましたね」
「そうですか」
ならほぼ決まりかもしれないが、確証は全くない。
「レビンさんにお願いがあります。領都や町の物価に少しでも変動があったら、分かる範囲で構わないので何が幾ら値上りしたか、定期的に教えて下さい」
「ええ、分かりました。定期的マーク様には報告してるので、そのことも一緒に書いておきます」
その後も全員で情報を交換したりして、
昼前にはカッツさんが目を覚ましたので、カッツさんには教会で治して貰った、と説明した。
昼過ぎにはエイミーさんの作った遅めの昼食を食べ、エイミーさんの抱擁を受けた後、リネスを出て夕方前にはファーガス村に戻った。
カッツさんを父さんに会わせてギルバートさんが仮報告し、その後カッツさんを帰してから父さんには実際の報告をした。
〜〜〜
盗賊事件から早一か月以上が過ぎて今は5月中旬だ、この世界は月日や時間、言葉に物の名前などほとんどが日本と同じで、今更ながらホント、アニメやラノベの設定みたいな世界観だなぁと思ったりしている。
まあ、日本の焼酎を飲むような創造神様が作った世界だから、きっと日本のアニメやラノベの世界観が間違いなく影響あるのだろうが。
さて、あれから約一ヶ月間の出来事だが、まず良いことから。
巣箱にはトータル五つに蜂が入り巣を作った。ハチミツが取れるのが本当に楽しみだ。
次に屋敷の裏には香水と蒸留酒用の建物の建設が始まったので近々奴隷を買いに行く予定。
奴隷はクルタさんの紹介で辺境伯領にある奴隷商から買うので、クルタさんが来たら一緒に辺境伯領に向かうことになっている。
新しい香りの香水も作った。リンゴの皮から作った物と薔薇の花びらから作った物の二種類で、どちらも母さんの監修だ。
後は、今は香水の容器にポーションの使用済み空き瓶使っているので容器をどうするかは考え中だが、今のところは陶器職人をファーガス村に移住させるつもりで計画中。
そして記憶をほじくり返してどうにか石鹸の試作品が出来上がった。最初は消石灰しか思い出せず諦め掛けたが、川で貝殻を手に取り思い出してどうにか水酸化カルシウムが作れたので、雑草から作った炭酸カリウムと合わせ水酸化カリウムの強アルカリが出来た。油は捨てられる魔物や動物の脂から作ったし、このひと月はほぼ石鹸作りしかしていないかも。
とりあえず完成品は父さんに報告後身近な大人だけで試してもらっている最中だ。セリナが使いたいとぐずったが肌荒れの懸念を教える為、配合に失敗した石鹸モドキを使って見せたら大人しくなったが僕の肌がヤバいことになり母さんには怒られた。最初パッチテストみたくちょこっとだけ使ってセリナに見せたが納得してくれ無かったので、仕方なく使うと案の定盛大に肌荒れしてヤバい感じになった。
肌荒れした手はすぐに治癒魔法で治したよ。
それから嬉しかったのは、使える魔法が結構増えたこと。
特に嬉しかったのが光り魔法で滅菌の魔法を覚えたこと、ただ問題は僕以外で滅菌が出来ているかを試さないといけないんだけど、問題は腹痛などの危険があるのを誰に頼むか。
さて悪いことは、盗賊への尋問ではローブの男からの依頼だと言うことと、ガストル侯爵領のスラム出身としか分からなかった。まあこれは予想通りの結果だったな。
あとレビンさんの手紙にガストル侯爵領の物価がほんの少しだけ、生活に全く影響が無いレベルで上がっている。と書かれていたそうだ。品目は保存食に木材や鉱石など。
父さんから聞いて、やはり考えは間違ってないかもしれないと思い始めている。
一応考えていることを父さんには報告した。
まあ盗賊の件から後はこんな感じ。とりあえず今の悩みは滅菌した卵を誰で試すかと、卵を安全にできた方法を何と答えるか。流石に勇者が使える光り魔法は父さんにも言えないし···。
魔道具使ったって誤魔化しても他の人が使うときっとバレるし、う〜ん、あれ? でもプリンなら作れる?
マヨネーズのことばかり考えてたけど、プリンなら蒸すから殺菌使わなくてもいけるくね?···あー、駄目だ、蒸した後にプリン冷やさないといけないか。う〜ん。
光り魔法はまずいけど氷魔法ならいいかな?話しても。基本四属性に治癒魔法と氷魔法?六系統は多くね?流石になぁ。基本四属性が使えるだけでも他の人よりも多いって言われてるのもんなぁ。
治癒魔法はまぁカッツさんの生死が掛かってたから仕方なかったにし。
やっぱ当分プリンは我慢かなぁ。でもセリナには食べさせてあげたいなぁ、氷魔法使わずにどうにかならないかな?一応冬になれば作れるけど、まだ半年以上後だしなぁ、あぁ暑い日に冷やしたプリン···あぁセリナの喜ぶ顔が···駄目だ諦めきれないかも。
そうなるとだ、どうすれば良いか?まず氷魔法はできればまだ黙っておきたい、最悪最終手段だけど基本なし、冷やせる魔道具?聞いたこと無いし作れない、なら水魔法で冷たい水を作る?これなら出来そうな気がするな。
魔法はイメージとある程度の魔力、それと魔力制御でアレンジは可能だしね。
使ってる魔法でアレンジした物だとまず火魔法のファイア。魔法書には薪に火をつけたり鍋などを温めたりと野営時などに便利な魔法程度で書かれていたが、僕のファイアは通常より多く魔力を注ぎ魔力を制御することで火炎放射器並みの炎が出せる。土魔法のロックバレットも通常は丸い石を生成して発射すると書かれている魔法、だけど僕のロックバレットは魔力量で石の大きさを変え魔力制御で弾丸の形にしてから高速回転を加えて銃の様に発射される魔法になってる。水魔法のウォーターは通常コップ一杯くらいの丸い水が出るだけの魔法、僕のは魔力を込めることで水の量を増やすことができる。
風魔法はまだアレンジできてないので置いといて。
とにかく今回は水魔法ウォーターの水温がプリンを冷やせる程度冷えれば問題が解決する訳だな。
よし、試してみよう。まずはイメージかか〜···あれ?冷えた水ってどうイメージすればいいんだろ?見た目で冷たい水ってイメージ難くないか?···う〜ん。とりあえずガラスのコップに氷で冷えた水をイメージして発動···。あー、···氷が出た。やっぱイメージが違うよなー?氷魔法ができた時のイメージとほぼ同じだったからなぁ。
···う〜ん。感覚もイメージしたらどうだろうか?例えば冬に顔を洗った時とかに感じる水の冷たさとか、とにかく一度試してみるか。
まず冬をイメージしてそこに冷たい井戸水で顔を洗った時に感じる感覚をイメージで重ねる···発動。
···出来た!冷たい水だ!だいたい10度前後くらいだろうか?とりあえず感覚をイメージすることも必要だったと分かったな。
ただ、プリンを冷やすならもう少し水温を下げたいから他のイメージが必要だ。
なら冷凍庫で一部氷結した水をイメージして、その水に手を入れた時に感じる冷たい感覚のイメージを重ねてから···発動。よしっ!めちゃくちゃ冷たい!これなら問題無く冷やせる!
あとはクーラーボックスみたいな箱を作ればプリンが冷やせるな。
そうなると、どんな素材で形の箱を作るか?だな。とりあえず形はクーラーボックスみたいな箱型で良いとして、素材は保冷性が高そうな物がいいな。
木なら自分ですぐ作れそうだけど水が漏れるから論外だ。となると鉄とかかな?でも鉄だけだと保冷性無いから鉄で箱を作って保冷性の高そうな素材で箱を覆うか?これなら良さそう。
そうなるとまずはカーラさんの店に行って鉄の箱を作って貰おう。




