13話
封鎖された村の入口付近に行くと、全員揃っていて、真っ先に父さんが近寄ってきてた。
「アレン良くやった!どこも怪我は無いな?それであの霧は······お前だよな。それと何人くらい減らせたかわかるか?」
「最初のアルさんたちの矢で七人〜ハ人、あと追いかけて来たのを十人前後、合わせると二十人前後は減らせたかと思います」
「そうか、なら残りは四十前後といったところか······」
「七人でこの結果は十分過ぎる成果でしょうな」
ギルバートさんの評価を聞いてから、父さんは腕を組み少し考えてから話し出す。
「ああ、確かにそうだな、しかし残り四十人をどうするか。アレン、魔力はどうだ?」
「全然問題無いです」
「全然か、そうか······うーん、しかし、やはり最後はこの村を舐めた奴らに後悔させないといけないな、ギルバートはどう思う?」
「もちろんこの程度の戦力差なら正面から叩き潰すべきですな」
ギルバートさんは父さんに即答した後、カーラさんも意見を話す。
「オレが言うのもアレだがそれが良いと思うぜ。さっき奴らを見た時に思ったんだが、どうも奴ら本職じゃ無い感じがするんだよな。いくら人数がいるからって普通は盗賊があんな正面から来るか?盗賊は普通奇襲するもんだろ。ありゃあ群れたら強いと思っていやがる奴らのやり方だよ。オレはただのチンピラの集まりにしか見えないね」
「あぁ、カーラさんさっきも言ってたね」
「なるほど、言われてみれば確かにそうだな。う〜ん、だとすると······隣りの侯爵辺りか?」
「最近は何もありませんでしたが、あり得ますな」
「やはりそう思うか、とりあえず体制はそのまま、そしてできれば数名は捕らえろ」
霧が晴れてパラパラと現れた盗賊たちは最初の人数が少く見えただけだったのか、まだ他にいてそれが合流したのか、五十人くらいの男たちが封鎖された村の手前で怒鳴っている。
「オラァーてめぇらやってくれたなぁ」
「ぶっ殺してやるから出てこいやー」
「今なら勘弁してやるから金と女差し出せや!」
「おーそこの姉ちゃんでいいぞー、ギャハハハ」
「酒持ってこいやコラァー」
「まだ間に合うぞ死にてぇのかオラァ」
うん、カーラさんの言った通りかも、つか、こいつら何なの?流石に僕でも盗賊じゃ無いの分かるかも。
だけど明らかに数人盗賊でもチンピラでも無いっぼい奴らも混じってるんだよねぇ。
「あ前らー、グダグダ言ってんじゃねー、早いもん勝ちだー、いくぞオラァ!」
真ん中の後ろにいたリーダーっぽい男が声を上げると一斉に武器を持った男たちが走り向かってきた。
盗賊が動いたので父さんもギルバートさんに指示を出す。
「この村を舐めた報いを受けさせろ」
父さんからの指示を受けたギルバートさんが全員に大声で指示を出す。
「弓構えー!攻撃魔法も同時に攻撃だぞー!なるべく目標を被らせるなよー······放てー!」
ギルバートさんの指示に合わせ矢と魔法が男達に飛んで行く。
僕も指示に合わせて水魔法のウォーターカッターを両手で発動させ、動けなくするために盗賊の下半身を狙う。
「来るぞー!諸君、抜剣!行くぞー、私に続けぇー!舐めた奴らブチ殺すぞぉー!」
村の封鎖が退かされ剣や槍を持った者たちが盗賊に向かって走り出す。
「うおおぉぉぉー!」「ぶっ殺せぇー!」「兄貴の仇だ死ねやオラァー!」「村を守れー!」
ギルバートさんを先頭にザックさんたち従士、引退した元従士、シンクさんやジェダさんたち自警団、それと志願した村人たちが一斉に戦意向き出しで盗賊に向かって行った。
「父さんオレはまだ待機か、ですか?」
「悪いがアイクお前はまだ待機だ。ギルバートたちが仕留め損なった者がこちらに来たらここにいる残り全員で戦う。アレンとカーラは回り込まれない様に左右を警戒してくれ!」
ギルバートさんたちは倍以上の人数を相手に善戦している。カーラさんが言ったように日頃戦闘行為をしていない奴らなのだろう。それにこの村は爺ちゃんたちの影響で村人も戦闘経験のある元冒険者が多い。それでもやはり数人が対等か苦戦している者もいる。
苦戦を強いているのは、たぶん日頃から訓練をしているか戦闘を経験している奴らだろう。
捕まえるならコイツ等かな。できれば生きた状態で捕縛したいところだ。
「来るぞ」
父さんが腰から剣を抜くと、それに合わせ、アイク兄さんやカーラさん、防衛に参加した元冒険者の女性達も剣を抜いた。僕もカーラさんに打ってもらったショートソードを鞘から引き抜く。
「いくぞ!」
父さんが駆け出し、すぐ後にカーラさんとアイク兄さんが続き、僕は元冒険者の女性達と進む。
「おらぁ、死ねガキがぁー!がぁあぁ!? 足がぁあぁ」
僕に向かって走ってきた男の足をウォーターカッターで切り飛ばし、別の盗賊が振り下ろした剣を受け流して逆に腕を斬りつけ振り向き背中に剣を突き刺す。
他に目を向けるとみんな対等以上に善戦しているが、みると父さんが苦戦している。急いで近付き父さんが相手と切結び離れた瞬間に、エアーカッターで相手の男の左足首から下を切り飛ばした。
「大丈夫ですか?!」
「ああ、助かったよ。少し剣術の稽古サボり過ぎたな···それよりこの男、生かしておきたいな、アレン、この男のキズを焼いて血を止めてくれないか?」
父さんはそう言って足首辺り抑え喚き散らしてる男の頭を蹴り飛ばし、男の意識を刈り取った。
僕は言われた通りに火魔法のファイアで男のキズを焼き血を止めた。
辺りを見渡すと僕たちの方に来た数人の盗賊たちは全員倒れていた。
ギルバートさんたちの方を見てみると、いつの間にか近くで戦っていたアイク兄さんとカーラさんもギルバートさんや従士たちと一緒に戦っている。
ギルバートさんたちが大丈夫そうなのを確認した父さんは、側にいた女性たちに、村から応援とロープを取ってきて生きてる男たちを縛るように命じ、女性たちは父さんの言葉に頷くと村に走って行った。
村の女性たちに指示を出した父さんはアイク兄さん達の方を見ながら僕に話しかけてきた。
「ふぅ、とりあえずは勝てそうだな」
「はい、あとは死傷者が何人出るかだと思います」
「そうだな。アレンは怪我はして無いか?」
「問題ありません。父さんは?」
「ああ、問題ないよ。しかしアイクはいつの間にあそこまで行ったのか」
父さんはアイク兄さんの戦闘を見ながら呆れ顔でため息を吐いた。
それからしばらくして盗賊たちは全員が地面に倒れ、村の死者はゼロだったが、アイク兄さん含め軽症者が約半数と重症者が一名でた。
父さんの指示で盗賊の生き残りがいないかを捜索する為に斥候と捜索隊を出すことになり、ザックさんに選抜をする様に指示が出た。するとアルさんとダインさんは斥候に志願しジェダさんは捜索隊に志願していた。
選抜された者と重症者以外は、最初に盗賊と戦闘した場所と村の入口の後処理を行った。盗賊の生き残りは足首を切り飛ばした男を含め五人だった。
捕縛した盗賊は自警団が使っている檻に入れ、尋問されることになっているそうだ。
盗賊の死体を村のみんなで集め纏めて焼いた後、父さんと薬師のオルガさんがいるテントに向かう。
テントに入ると地図が乗っていたテーブルが片付けられ、テーブルの上には重症者で樵のカッツさんが、腹部は包帯で巻かれ右腕の肘から下が辛うじて繋がっているように見える状態で横たわっていて、父さんとオルガさんがカッツさんの右腕の処置を話し合っている所だった。
「やはりポーションではどうにもならなかったか。今からリネスの教会に運んでも間に合わないと思うか?」
「えぇ、ポーションではちょっとした怪我なら治せますが、流石にこれ程の負傷はポーションを何本使おうが無理です。そして教会の治癒士ならこれ程の負傷でも治せるかもしれませんが、この出血量はリネスまで持たないでしょう。なのでリネスの教会に運ぶにしても腕を切断して止血する必要があると思います。ただ、リネスの教会にいる治癒士では一度切断された腕を元に戻すのは無理でしょう」
「···そうか。木こりを続けられなくなるのは可哀相だが命の方が大事だからな、カッツには十分な慰労金を出し屋敷で職を与え償うことにするしかないか」
父さんたちが話しているのを聞いてカッツさんの怪我を見てみる。
···腹部が刺されているな、それに右腕の傷もかなり深そうだ。出血量も多い。
腹部が刺されているなら内蔵も傷ついていそうだし、もし内蔵が奇跡的に大丈夫で運良く傷が塞がっても破傷風の心配もあるか。
どうするか?僕ならこの怪我を治せるかもしれない······。
父さんは黙っていてくれると思うけど、問題はかなりの人にカッツさんの状態を見られていることだな。···どうするか?
治せるのに治さないのは絶対に後悔しそうだし。···でも、やっぱり後悔はしたくないな。
「父さんにお話があります。少しだけ二人で話せませんか?」
父さんの目を真っ直ぐに見ながらそう言うと、父さんは僕を数秒見つめる。
「···分かった。オルガ、悪いが少し外してくれ」
「分かりました、ただし出血量が心配です。なるべく時間は掛けないで頂けるなら」
「分かった」
オルガさんが軽く会釈してからテントから出ていった。
「それで、話しとは何だ?」
「あの、僕ならカッツさんの怪我を治せるかもしれません」
「?!もしかして?···治癒か?治癒魔法が使えるのか?」
「···はい。治癒魔法が使えます。ただ、初級しか使えません。それと···」
「いや、分かってる、教会だな」
「はい、そうです」
いざ話そうとしたら心配になってしまったけど、父さんは嬉しそうに頭を撫でた。
「治癒も使えるなんて、凄いじゃないか。なら治せるなら···いや駄目だな。カッツはかなりの者に見られたから、すぐに治すとアレンが教会の奴らに目を付けられる可能性があるな」
「はい。···それで考えがあるのですが」
「ん?どんな考えだ?」
「えっと、信頼出来る人と僕でカッツさんを馬車でリネスに運びます」
「···なるほど、馬車の中で治そうという訳か。なら、ギルバートに護衛をさせザックを御者として今すぐにリネスに向かいなさい。まだ日が登る前だから明日の夕方にでも戻って来れば、みんなはリネスでの治療が奇跡的に間に合ったと思うはずだ」
それから父さんはギルバートさんとザックさん呼び、カッツさんを馬車でリネスの町に運ぶように二人に指示を出した。そして詳しくは僕に聞くようにと付け加え、僕が話す内容や行動は他言無用だと命令した。
すぐにザックさんが馬車を準備して、ギルバートさんとザックさんの二人でカッツさんを馬車に乗せ出発した。
オルガさんが最後まで腕を切断し止血しないともたないと反対していたが、木こりが腕を失うのは悲し過ぎるから少しでも希望があるなら賭けてあげるのがカッツさんのため、みたいなことを父さんが言ってオルガさんを抑えていた。
僕たちは急いで馬車をリネスに向けて走らせ、村を出たところでギルバートさんとザックさんに治療魔法と計画を話した。
村からある程度離れたのでザックさんが道の脇に馬車を止め、二人が見守る中もう一度カッツさんの怪我の確認して処置を始める。
まずは腕からだが、肘下に深い切れ目があり骨まで傷つけていた。
カバンから取り出す振りをしてストレージから瓶に入った蒸留酒を取り出し、小さい桶に手が浸かるくらいの蒸留酒をためる。
「これは凄く強いお酒です。二人にも手伝ってもらうので手をこのお酒で消毒してください」
はっきり言って良くない環境だがしないよりはましかと思い全員のアルコール消毒をする。
「腕、腹部、の順に治療します。お酒を腕の怪我にかけ消毒してから一度傷を開き傷の中に異物が無いかを確認します。そして異物が無いことを確認出来たらヒールで傷を治します。痛みで暴れるかもしれません、しっかりとカッツさんの身体を抑えて下さい」
二人がカッツさんの身体を抑えたのを確認してから腕の傷に蒸留酒をかけた。
やはり相当痛いらしくカッツがかなり暴れるが二人がさらに力で抑え込む。
傷口を開き蒸留酒で傷を洗いながら異物が無いかを確認した。
とりあえず異物は無いようだ。これで後は治癒魔法で治せるはず。カッツさんの腕の傷に手を乗せて治癒魔法を使う。
「ヒール」
傷にヒールを使うと傷が2、3秒淡く青い光りに包まれ消える。
傷に乗せた手をどけると少しだけ傷が小さくなった。
傷が小さくなったがヒールだと一回で治せる傷には限度があるみたいだ。なら回数使えば治せそうだ。
結果、カッツさんの怪我は腕の傷はヒール3回、腹の傷はヒール5回で傷跡も分からないくらいきれいに治った。
あとは破傷風の心配だけど、たぶん破傷風は毒の一種だと思うから解毒の魔法が使えればと思い、ヒールを使った感覚で毒を治すイメージをして腕に治癒魔法を使ってみるとアンチポイズンが使えた。念の為にもう一度腕に使おうとしたがアンチポイズンが使えなかったが腹の怪我に使うと使えたので異常が無ければ使えないことが解った。
治療が終わりリネスの町に向かっていると、初めての医療行為に緊張していたらしく、治せた安心感からか馬車に背中を預け座っていたらいつの間にか眠っていた。




