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11話

 四人での話し合いは二時間弱で母さんとクルタさんの大活躍で終了した。


 ただし僕は父さんから植物紙の件もあり厳重注意を受けた。それでも男爵領の為にやってることだからと顔は苦笑いだったけど。


 そして香水に関すること、まず予定通り特許はクルタさん名義で特許を取ることになった。

 条件は、僕が成人を迎えた時、僕が返還を求めた時、僕が判断できなくなった場合は父さん名義に変更、クルタさんと辺境伯の取り分は売上から一割ずつの合計二割という感じの契約書を書いた。他にも細かい内訳もあるがだいたいそんな感じ。クルタさん側が少く感じるかも知れないがこれは商人であるクルタさんが決めたことだし、香水の売値は高目に設定するので十分に潤うはずだ。母さんとクルタさんも僕の意見と一緒で、香水は高級品で強きの値段設定にしても貴族や裕福な平民の女性、男性から女性への贈り物で相当数売れると予想している。


 売れそうとなると今度は生産性の問題が出でしまう。そこで秘密保持の為にまずは三人程の奴隷を購入することになった。奴隷には契約魔法で制約を掛けることができるからだ。


 本当は村の人間を雇いたいけれど、香水を売り出せば、しばらくは誰がどんなちょっかいを出してくるか分からないので安全を確保をする迄は仕方ない。

 できるだけ早く王家かそれに準ずる力のある大貴族の後ろ盾が欲しいところだ。


 とりあえず始めは従士と奴隷三人で製造する事として、屋敷の裏に仮工場兼住居を建築することも決まった。


 そして蒸留酒。とにかく見ないと分からないと言われたので一旦保留と言われたが、蒸留酒は作ったら最低三年は熟成させないといけないからと力説した。

 どうにか僕が少量ずつ作ることは許可されたので倉庫兼蒸留酒製造工場も建築する運びになった。

 この時、何故三年とか分かるのかを突っ込まれ無いことが不思議だったが······。

 見本の香水は母さんとクルタさんに一つずつ渡しておいた。





 翌日、あまり乗り気でない父さんに蒸留酒の素晴らしいさを伝える為(巻き込む為)飲んで貰うことにした。

 父さんの晩酌用に買ってあったエール酒を一樽分けて貰いカーラさんの倉庫で蒸留酒を製造した。

 カーラさんも飲みたそうにしていたので折角だからと夕食に招待した。


 やはりと言うか父さんと母さんはカーラさんがハーフエルフであることを知っていて、父さんに至ってはカーラさんのことを子供の頃から知っていた。

 カーラさん曰く父さんは子供の頃カーラさんの事を手品のお姉さんと呼んでいたそうだ。


 夕食後、父さん、母さん、カーラさん、僕でリビングに移動。ローテーブルに蒸留酒とオレンジジュースを用意して、まずは父さんと母さんに蒸留酒をそのまま飲んでもらう。


「少ししか入っていませんが一気に飲むのはやめた方が良いですよ」


 まず父さんがグラスを持ち匂いを嗅ぐ。


「ふむ、確かにまあまあ酒の匂いが強いな」


 そう言って父さんはグラスを傾け三分の一の量を飲み盛大に咳き込んだ。


「ぶほっ!?ゲホッ、ゴホッ、グガァ、のどが、ゴホッゴホッ」


「あなた!大丈夫?!」


「あーぁ、父さん、僕が最初に注意したのに······。はい、お水です」


 父さんは僕から水の入ったコップを受け取りゆっくり飲み干した。カーラさんは僕の隣りで笑っている。


「いや、ここまでとは······」


「母さんも飲む量には気を付けて下さいね。最初は唇を湿らす程度が良いですよ」


「そ、そうね、そうするわ」


 母さんは父さんを見た後だったので唇を湿らせて舐める様にして蒸留酒を味わう。


「凄く強いお酒ね、こんな強いお酒は初めてだわ」


「本当だよ、まさかここまでの物とは想像できなかった」


「作ったばかりの若い蒸留酒はこんな感じなのでオレンジジュースと割って飲んでみて下さい。自分の好きな強さにできるから女性でも飲みやすいですよ」


 そこまで言うと待ってましたとばかりにカーラさんがオレンジ割を作っている。


「······カーラさんが作り方の見本を見せてくれてるので同じようにして飲んでみて下さい」


「かぁ〜、やっぱこれが一番美味いぜ、他の酒を飲んでも物足りなくなっちまった」


「美味しいですもんね」


「おぉ、確かにこれは美味いな」


「本当ね、強さを好きにできるから飲みやすいわね」


「これはオレンジジュース以外でも甘いジュースならだいたい美味しくいただけますよ」


「なるほど、他にも合いそうなのが結構ありそうだね」


「そうなんです、ブドウジュースやリンゴジュースも合うと思います」


「ホント、これは飲みやすいから飲み過ぎそうね」


「これなら作ったら作っただけ売れそうだ」


「僕もそう思います。しかしこの蒸留酒の飲み方は女性やお酒が苦手な人たち向けの飲み方で、男性やお酒が好きな方は特殊な熟成をさせた方を好まれるはずです」


「分かった、この飲み方も美味しいのだからきっと熟成された方も美味しいのだろうね、やってみるといいよ。ただし······ちゃんと報告はするようにね」


「分かりました、ちゃんと報告するようにします」


 それから子供の僕はほどほどの時間で切り上げ部屋に戻ったが、父さん達三人は結構遅くまで飲んでいたようだ。



 翌朝、いつもの日課を済ませ食堂で待っていると昨日客間に泊まったカーラさんと母さんが話をしながら食堂に入っきた。母さん曰く父さんは二日酔いらしく午前中は寝るそうなので、父さん抜きで朝食を食べた。



 朝食が終わりカーラさんが帰ると言うので玄関まで一緒に行くと「このままカーラと行って剣を作って貰いなさい」と言われた。


 なので今はカーラさんの鍛冶屋でどんな剣にするか相談している。


「アレンはどんな剣が欲しいんだ?」


 最近は蒸留酒や香水の件でカーラさんと一緒にいることが多かったし、僕も敬称は要らないと言ったので敬称が無くなっている。


「そうですね、この身体ですし···とりあえず、ショートソードでしょうか?使ってみたい剣もあるのですが···」


「まぁアレンの体格なら確かにショートソードが無難だなー。それと使いたい剣ってどんな剣だ?」


 この世界にあるか分からないけど、暇な時につい作ってしまった物をストレージから取り出し一応カーラさんに見せる。


「これなんですけど。ホントはこう言う形状の剣を使ってみたいのですが。こういうの見たことありますか?」


 カーラさんは僕から木できた反りのある刀を受け取る。


「ふーん、変わった形の剣だな、サーベルみたいに湾曲してる剣か、それにだいぶ細いな······ふむ」


「その木の剣は木刀って言います。まあ今回はショートソードにしますから」


 カーラさんは僕に「そうか」って言って木刀を返してくれた。


「それにしてもサーベルなんてあるんですね」


「前に見たことがあるだけだよ。何処でだったか忘れたけど、確か西の方から来た冒険者の男が持っていた。それよりもショートソードで良いのか?」


「はい、最初はこの木刀の様な剣を打ってもらおうかと一瞬思いましたが、今回は父さんが出してくれたお金で打って貰うのでショートソードにします。刀はその内自分で作ってみるかもしれませんが」


「ほう、自分でか」


「も、もちろんこの木刀の様に試しに形にしてみるだけで実戦で使わないですよ?」


 それからは剣の長さ、柄の部分、鞘、剣帯など、どうするかを決めながら試しては修整を繰り返していき夕方前にはショートソードと剣帯が完成した。



 出来上がった剣を軽く振ってみるとカーラさんが僕に合う様に作ってくれたので、鍛錬で使い慣れた木剣と変わらないくらいに振り易く、重さも丁度いい。

 柄の部分にも革が巻いてありとても握り易く鞘もシンプルでいい感じだ。


「うん、いい感じです」


「そうか、使ってみて調整したい所があれば持って来てくれ」


「分かりました」




 翌日。

 

 今日からは腰にはショートソードを装備した状態で走ることにした。


 これはギルバートさんに冒険者や騎士など剣を装備している職業は、腰に剣を差したまま逃げたりすることもあるので、走るなら剣を装備した状態で走れる様になった方がいいと言われたから。

 確かに言われてみれば納得だったので、剣を差した状態で走るのに慣れたら防具も着けて走ろうと思う。


 走り終わり休憩していると、アイク兄さんが屋敷から出てきて休憩している僕の側にきた。


「アイク兄さんおはよ」


 朝の挨拶をするとアイク兄さんの目は僕が座る為に外したショートソードを見ながら「おはよ」と返してきた。「気になるなら持ってみれば?」と僕が言うと、嬉しそうに「いいのか?」と言いながらすでに鞘から剣を抜いた。


「やっぱ片手のショートソードにしたんだな、アレンはまだ身体が小さいし魔法も使うから合ってるかもな」


 と言いながらアイク兄さんがショートソード振っている。


「まあね、どっちみち僕は魔法主体だからね。それにガチガチな筋肉で両手剣を振り回すのはちょっと」


「何でだよ、めちゃくちゃカッコイイじゃないか、それ!ブンブン両手剣を振るのは気持ちイイぞー」


 アイク兄さん最近ジェダさんとの模擬戦が増えて脳筋気味だよなぁ。とか考えてるとショートソードを鞘に戻し投げ返そうとしたので慌てて受け取る。


「確かにこの剣ならあまり筋肉は必要無いか、オレには軽過ぎるけど良い剣だな。じゃあ、オレは素振りしてくるわ」


 そう言うと少し離れた場所に移動して、いつも使う両手剣で素振りを始めた。


 そう言えばアイラ姉さんが来ないな?と思っていたら顔色の悪いアイラ姉さんが屋敷から出てきた。


「アイラ姉さんおはよ、何か顔色悪いけど大丈夫?」


「あー、うん大丈夫······」


 いや、絶対大丈夫じゃ無いやつじゃない?


「大丈夫じゃ無さそうに見えるよ?今日は素振り止めといたら?」


 と僕が言うとアイラ姉さんはアイク兄さんを見る。


「でも私たちは一度も···稽古を休んだことは···ないわ」


 アイラ姉さんは話しながらも顔色が悪くフラフラしている。

 これは流石にどうにか止めないといけないが······。


「いやいや、今にも倒れそうだよ?とりあえずちょっと座って!アイク兄さ〜ん!ちょっと来てアイラ姉さん見てて」


「どうした?ん?アイラ顔色やばいぞ」


「そっ!だから母さん呼んでくるから!」


「おう!わかった」


 急いで屋敷に戻り両親の寝室のドアを叩く。


「母さん!アレンです起きてますか!」


 するとすぐに寝室のドアが開き母さんが出てきた。


「母さん、アイラ姉さんが貧血っぽくて、顔色が悪いので見てあげて下さい」


「貧血?······分かったすぐ行くわ」


「はい、今アイク兄さんが一緒で、庭で座って休んでもらってます」


 母さんは一瞬何か考える仕草をしてから簡単にガウンを着ると一緒に庭に向う。庭ではさっきよりぐったりしたアイラ姉さんが庭に置いた長椅子に横たわっていた。

 直ぐに母さんが駆け寄りアイラ姉さんの様子をみている。


「あなたたち二人は屋敷に戻ってなさい。それとケーラとケイトをここに来るように言って頂戴、それから父さんには理由は後から話すけど心配は要らないと言いなさい」


 母さんにそう言われた僕らは、キッチンにいたケーラさんとケイト姉さんに母さんからの伝言を伝え、寝室で着替えていた父さんにも伝えた。

 父さんは何となく納得した様な顔をしたあと「心配いらないよ」と言って僕ら二人の頭を撫でた。

 僕は何となくだけどアイラ姉さんの症状が分かっていた。だから真っ先に母さんを呼びに行ったし、小学校高学年の時に同じ様な女の子を見たこともあったし。

 ただ普通の子供でしかないアイク兄さんは心配なのか落ち着きがなかった。


 朝食は母さんとアイラ姉さん抜いたメンバーで食べた。

 途中母さんが階段から降りてきてアイラ姉さんは今日の稽古は休みと伝えられ、その時に父さんにも一言だけ小声で報告していた。


 剣術の鍛錬中アイク兄さんの機嫌が悪かった。あとで機嫌が悪かった理由を聞いたら、大人たちがあまりアイラ姉さんを心配していないように見えていたらしい。

 アイク兄さんの気持ちも分かるよね。だって大人は理由を知ってるけど子供のアイク兄さんは知らないのだもの、学校の保健の授業って大事だよね。

 だから、これは大人の父さんが悪い、と僕は思うけどね。貴族社会は十代前半での婚約や結婚が当たり前だし、十代になったアイク兄さんにも、こう言うことは早めに教えるべきだと思うね。


 昼あとアイク兄さんを誘ってウサギを狩りに向かった。最初アイク兄さんは渋ったが、少し強引に「ああいう感じで元気が無い時は肉とかを食べると良いらしいですよ」とか適当なことを言って連れて来た。僕も鉄分が多い食材をあまり覚えて無いけど肉とかには造血作用あったかな?と思って山羊乳とウサギ肉でホワイトシチューを作ってあげようと思っている。狩れたらだけどね。



 アイラ姉さんは夜には食堂に降りて来たけど顔色はまだ悪かった。

 夕食は二人でどうにか三羽狩ったウサギ肉で作ったホワイトシチューをみんな美味しそうに食べてくれた。

 ただジャガイモが入ってないのがなぁ。カボチャでもいいから手に入れてさらなる美味しさを狙いたいところだ。

 そして今日は初の重曹を使ったパンを作ってみた。みんな柔らかいパンに驚いていたけど、流石に地球で食べたパンにはだいぶ劣るな、でも固く無いパンはやっぱ良いよね。重曹を使ったパンにはケーラさんが一番驚いていた。

 うーん、一応リンゴがあるから自然酵母にも挑戦してみるか。


 アイラ姉さんは結局鍛錬を三日休んだが母さんたち女性陣にちゃんと教わったらしく、アイク兄さんに体調を崩した理由を聞かれると不機嫌になり「男のアイクには教えません!」と怒っていた。


 父さんいい加減アイク兄さんにもちゃんと教えとけ。


 それから数日は何事もなく過ぎたのだが、いつもの様に庭で模擬戦をしていたら狩人のアルさんが屋敷に来た。

 アルさんは相当走ってきたのか息も絶え絶えで、僕らと庭にいたギルバートさんが気付き、ギルバートさんはアルさんと話しをすると二人で屋敷に入って行った。


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