1話
まずは自己紹介から、僕の名前はアレン・エバンス。
ドウェイン王国エバンス男爵家の三男で年齢は七歳。
そして家族構成は男爵家前当主で祖父のカイン、祖母のミリア、現当主で父のマーク、母のサラ、長男のカイル、双子で次男のアイクと姉のアイラ、最後に妹のセリナ。
僕らは五人兄弟で上から十三歳、十歳、七歳、四歳となり歳が三つずつ違う。
長男のカイルは今年から王都にある祖父カインの借りている屋敷に住み王立学園に通っている。
屋敷とは言っても、貧乏な下級男爵家が借りれる程度の借家だけど。
元々はカイル兄さんと護衛の従士だけで王都に向かい、カイル兄さんは学園生に与えられる寮で一人生活する予定だったんだけど、祖父はカイル兄さんだけが家族と離れて暮らすのが嫌だったらしく、この機会に男爵家当主を父マークに譲り隠居。祖母と従者一人を連れてカイル兄さんと一緒に王都へ行き屋敷を借りてしまった。
それと、カイル兄さんは騎士への憧れが強かったから本当は騎士学院に行きたかったらしい、しかし嫡子なので将来は男爵家を継がないといけなくて仕方無く王立学園に入学したらしい。
弟の僕が言うのも何だが、カイル兄さんは騎士への憧れが強かったせいか変に正義心があるから、上級貴族も集まる学園は少し心配ではある。変なテンプレとか起こさなければ良いけど······。
ドウェイン王立学園は三年制になっている。そしてドウェイン王国は十五歳を成人としているので、王立学園で卒業式〜成人の儀までを学園で行う。因みに学園に通ってない者は領地で領主が成人の儀式を行う。つまり、学生生活終了と同時にカイル兄さんは次期当主として領地経営の勉強始まる予定だ。
次に、双子のアイク兄さんとアイラ姉さんは現在従士長と剣の稽古の真っ最中で、ニ人とも祖父や従士長の影響で剣と身体を動かすことが大好きで、二人はほぼ毎日剣の稽古をしている。
ただし、頻繁に付き合わされる僕や従士は大変、別に僕も剣の稽古が嫌いな訳ではない、ないのだが問題は双子が一度剣術の鍛錬を始めるとなかなか止めてくれないことだ。
兄姉はニ人とも極度の負けず嫌いで、どちらかが勝ち越すまでなかなか模擬戦を止めようとしないんだよね。
今も稽古に付き合わされてた僕は疲れて休憩中。
最後に妹のセリナだが、最近は母サラに礼儀作法や国の歴史などの勉強を習っており、メイド作法もメイドのケーラさんから勉強中。
メイド作法?と思うかもしれないけど、この国では商家や下級貴族の娘は王家や上級貴族にメイドとして仕え事が普通にあるので、その為の勉強。
さて兄妹の話をしたから次は大人達の話もしたかったけど、そろそろ双子を止めないと従士長が可哀相だな。
今一人で双子の相手をしているのは従士長のギルバートさん。祖父の友人であり、祖父と父、二代に渡り仕えてくれている従士長で、エバンス男爵家の武門のトップだ。
ギルバートさんも体力低下を理由に従士長を譲り奥さんのケーラさんと一緒に祖父に付いて王都に行くことを望んでいたが、祖父と父に説得されて残ることを選んだそうだ。
ギルバートさんも祖父と殆ど変わらない歳だから体力が落ちたかもしれないが、剣の技術はこの領地で祖父に次ぐ実力者で槍を扱う技術は爺ちゃんにも負けてない。
そんなギルバートさんは今も一人で双子を同時に相手している。
うーん、ギルバートさんは体力が無くなったって言うけど······どこが?
まあ、確かに結んだ髪はだいぶ白髪が混じってるから歳はとってるだろうけどさ。
僕は椅子に置いてある水筒とコップ、それとタオルを持って三人に近づきながら声をかけた。
「兄さん!姉さん!そろそろ終わりにしたらどうですか?流石にギルバートさんも疲れてると思いますよ?たぶん」
「そうですな!流石におニ人を相手してはこの老骨の体力が持ちません。はっはっはっ!アイク様、アイラ様!今日はここまでといたしましょう」
僕は三人へとタオルを投げ、水筒からコップに水を入れて配る。
「ギルバートさん今日はもう終わり?」
「私はまだいけるわよ?」
確かに体力的にはまだ余裕ありそうなんだよなぁこの双子は······。
「お二人共、そろそろお昼ですからな、終わるには丁度良い頃合いでしょう。それにお二人共午後からはサラ様と座学がありませんでしたかな?」
「だあー、忘れてた!」
「そうだったわ。なら残念だけど今日はここまでね」
「さぁ、アイク兄さん、アイラ姉さん、もう屋敷に戻りますよ。全員昼食前に身体を拭いて着替えなければ母さん叱られてしまいます」
「そうね、早く戻りましょうか」
「ギルバートさん、鍛錬ありがとうございました」
「はい、お疲れさまでした。では片付けはしておきますよ」
「すみません、お願いします」
僕たち木剣をギルバートさんに渡して屋敷に戻ると玄関にはメイドのケイト姉さんが待っていた。
兄たちはすでに屋敷に入っている。
「お帰りなさいませ。足を拭きますね」
「自分でやるからタオルだけ貰えます?」
「では、アレン様用のスリッパはコチラに置きますね。それとお着替えや水桶などはお部屋に用意してありますので」
「ありがとうケイト姉さん。後は自分でやるから母さんの手伝いに戻っても大丈夫です」
「ではサラ様のお手伝いに戻りますね」
ケイト姉さんはそう言うとお辞儀をして母さんの所に向かった。
ケイト姉さんは15歳で従士長ギルバートさんの娘さんで、僕たち兄姉たちの幼馴染でもある。
メイドになる前はたまに僕とも遊んでくれる近所のお姉さんだったが、成人を迎えた今年からエバンス男爵家のメイド見習いになった。
僕としてはたまに遊んでくれた優しいお姉さんがうちのメイド見習いになり敬語を使われるのがちょっとだけ変な感じでまだ慣れない。
2階にある子供部屋に入るとアイク兄さんが上半身を脱いで身体を拭いている所だった。
「アイク兄さん、まだ着替え終わって無かったんですか?」
「仕方無いだろ、さっきまでアイラが着替えで部屋を使ってたんだから」
「そうなんだ。それにしてもアイク兄さんだいぶ筋肉が付いてきたんじゃない?若い内に筋肉付け過ぎると身長があまり伸びなくなるよ?」
「前にアレンにが言ってたヤツか?まぁ一応筋肉が付き過ぎないように鍛えてたけど、なんか自然に付いちゃうからもういいかなって思ってる。それに、アイラに力負けしたくはないからなぁ。逆にアレンはもう少し筋肉つけた方がいいんじゃないか?」
「僕は、まだいいんだよ。ちゃんと計画通り少しずつ筋トレ増やしてるから、それよりも今はまだ体力を付ける訓練してる」
「ふーん、お前がいいならまぁいいけどさ。でもまぁ、アレンはオレと違って頭の出来が良いし色々と物知りだから、父さんやカイル兄さんを支えるのはお前に任せれば安心だよ、オレも」
「そしてアイク兄さんは従士長としてだっけ?でもさアイク兄さん、そういうのは後々にその時の当主が決めることで、まだどーなるか分からないんだからアイク兄さんはもう少し勉強した方が良いよ。それにこのままだとアイク兄さんに特別授業するかもって母さんが父さんに話してたよ」
「マジ?!」
「うん。昨日、母さんが父さんに話してるの聞いたから」
「うげぇー、マジかよ!ど、どうにか避けるような、何か、考えとかない?」
「んー、ちょっとないかな。···うん、やっぱりちゃんと勉強した方がいいと思うんだー、僕は」
ムリー、もし考えがあったとしても言えねー。だってドアの隙間からコッチ見てるー、か、母さんだよね?!ちょっとだけホラーだよ!
アイク兄さんが僕の視線に気付き、ゆっくりと後ろを振り返るとドアが開き、そこには苦笑いしているケイト姉さんと無表情の母さん。
「うおっ!?母さん!」
母さんは僕と同じ黒髪で、腰まで長く伸びた髪を顔の前に垂らしてドアの隙間から覗いてた。······ホント、それはちょっとヤメてほしい。テレビから出てくる人と勘違いしちゃうから。
「うおっ、じゃありませんまったく。食事の準備が終わってるのに二人とも全然降りてこないから呼びにきてあげたのに。まぁ、確かにアレンが言った通りよ。アイクには今日から一週間、いつもの倍は勉強ができるお得な特別授業を開催すると宣言しておくわね。それからアレンは明日から午後だけ私の代わりにしばらくはセリナに魔法を教えてあげなさい。ほら、二人ともいつまで着替えてるの、さっさと着替えなさい食事にするわよ」
昼食後、母さんは宣言通りにアイク兄さんと、なぜかアイラ姉さんも拉致していった。
さて、僕はやることが無いので本でも読もうかなと思い、ケイト姉さんに飲み物を子供部屋に置いておくように頼んでから、本を借りる為に父さんが仕事をしている書斎に向かう。
書斎のドアをノックして返事を待つと「誰だい?」とドアの向こうから父さんの誰何が聞こえたので返事を返す。
「アレンです。数冊本を借りたいのですが」
「ああ、いいよ入ってきなさい」
「失礼します」
父さんの許可が出たのでドアを開けると紙とインクの匂いが廊下に溢れ出てくる。書斎の机には既に40代のはずだが、まだ20代後半でも十分に通用しそうな父さんが羽ペンを手に僕を見て微笑む。
父さんのマークは緑色の髪と瞳をしており、本当にイケメンで若く見える。
ちなみに父さんは養子で、実母は祖父母が組んでいた元パーティーのハーフエルフなの父さんもエルフの血が流れている。もちろん僕たち五人の兄弟にも薄くはあるがエルフの血が混じっているが、父さんも僕たち兄弟も見た目は普通の人間と変わらない。それと祖母のミリアには子供が出来なかったそうだ。
「今日はどの本にするのかな?」
「え〜と、明日からしばらくセリナに魔法を教えるので、魔法入門書と基本四属性の初級の魔法書、それと一応中級の水の魔法書、それから僕が読んでない本があれば借りたいです」
「分かった魔法書は借りて行きなさい。ただ中級の魔法書は読むだけだよ。魔法は初級でも危険だけど中級はさらに危険な魔法が書かれているからね。それとまだ新しい本は購入してないから」
「中級の魔法書は子供部屋で読むだけなので」
「なら問題ないよ。ああ、そう言えば近いうちに行商人のワッツが来ると手紙が届いていたよ。どうやらリバーシが商売になりそうなので仮契約から本契約に移行したいそうだ。それと、せっかく良い品を考え出したのだから王家用にも作って王に献上してみないかい?」
「王に献上ですか。······大丈夫ですかね?」
「んー、父さんは問題ないと思うよ。家族にも好評だったし、アレンさ試作した一つを王都の爺さんにもワッツ経由で送ったでしょ?爺さんから手紙が届いてね、献上の話を最初に出したのは爺さんだけど私も良いと思ったよ。それに王家にはアレンたちと歳の近い王子と姫もいらっしゃるからね、きっと喜ぶんじゃないかな。品が完成したら王への献上は爺さんに任せればいいし、アレンは作るだけで後はお爺さんに任せればいいさ」
「分かりました。んー、じゃあ献上品は素材を変えて装飾などを豪華にして······なら、リバーシのバージョンは王家、貴族、庶民の三種類用意しようかな」
「その辺は任せるけど、王家用は最低でも五つ欲しいかな」
「了解です。あとは、ワッツさんが来たら材料の相談をしますね」
本を持って書斎から子供部屋に戻ると、僕が部屋に戻るタイミングを見ていたのか、すぐにケイト姉さんがきて紅茶とクッキーを持ってきてくれた。
「ケイト姉さんありがと」
「アレン様。呼び方が戻っておりますよ」
「あー、もう良くない?何かケイト姉さん呼び捨てはちょっとねー、慣れないし。まぁ家族以外がいる時は気をつけるよ。ところでケイト姉さんはカイル兄さんの事どう思ってるの?」
といきなりブッ混んでみる。
ケイト姉さんの顔は一気に朱くなるが「ど、どうとは?」と何もなかったかように聞き返してきた。
「えっと、ケイト姉さんがカイル兄さんと結婚してくれればなぁとか思ってさ」
そう言って僕が笑うと「アレン様、からかわないで下さい」頬を膨らませる。
「ごめんごめん。からかったつもりはないよ。でも僕はそうなったらいいのになぁと思ったからさ」
「も、もうっ!失礼します!」と言ってケイト姉さんは部屋を出て行ってしまった。
怒らせたかな?もう少し濁して聞いた方が良かったか。失敗、失敗。
でもお互い好き合ってると思うんだよね。でもこれはヘタレなカイル兄さんが悪いと思うんだ。
ケイト姉さんの近況知りたければ、手紙の宛先は僕ではないと思うんだ。んで、カイル兄さんから僕に手紙が届くと、今度はケイト姉さんがカイル兄さんの近況を聞きたそうにする。
なんかさーもう、ユーたち付き合っちゃいなよ!ってなるよね?
そりゃお節介もやきたくなるってもんよ。
よしっ、とりあえずカイル兄さんには手紙を書いておこう。ケイト姉さんの近況が気になるならケイト姉さん宛に手紙書けってね。
ああ、ついでに王都の祖父にも手紙を書いておこう。
献上品が届いたら宜しくお願いします、手紙を畳んで封筒に入れ、あとは父さんに封筒を渡せば他の手紙と一緒に王都へ届けてくれるはず。
さて、暇だし借りてきた中級の魔法書でも読むとするかな。まぁすでに読む必要なかったりするけどね、もうこの本に載ってる魔法は使えから。
普通に購入できるのは4属性の中級魔法が書かれている魔法書までだが、うちの書斎には爺ちゃんたちが昔ダンジョンで手に入れた上級魔法書もある。もちろん父さんはまだ僕が上級魔法書は借りるのを良しとはしない。内容が子供が読むには難しいし使うには危険だから。
しかしこの異世界に転生して今一番関心があるのは何かとなると、元の世界に無かった魔法や魔力だ。どうしても上級魔法書を読みたい僕は夜中に書斎に忍び込んでは生活魔法の光源を使い上級魔法書を読んでいた。 ちなみにそれは五歳頃の話しであり、もちろん上級魔法書にある魔法は全て覚えた。
それとこの世界には初級から神級まで魔法があるが、強い順に並べると。
神級、世界級、王級、白銀級、上級、中級、初級、と言う順番なる。
【神級魔法】
神が使う魔法。そのままの意味。神、もしくは神に至ったものだけが使える魔法。この世界で神と言えば女神テレジアが有名。他の神も居るが教会では特に女神テレジアが信仰されている。
神に至ったと言えは英雄神アスラン。数百年前に英雄神アスランは人身でありながら神になったとされる一柱だ。ただし、英雄神アスランは何を成して神に至ったかは書物が残されていない為に謎とされている。
【世界級魔法】
この魔法は神ではないが世界の理から外れた者達が使う魔法。亜神や神獣、上級天使や上級悪魔、魔王や勇者、他には一部のハイエルフなどが世界級魔法を使うことが出来ると言われている。
【王級魔法】
1つの国で数人しか使用することが出来ないと言われる魔法。
一部の国では王族が代々継承魔法として引き継いでいると言われているが、どの国の王族かは知られていない。後は宮廷魔道士や最上位の冒険者などに使える者が居ることは分かっている。
【白銀級魔法】
魔法部隊の隊長や軍の将軍クラスまたは冒険者の上位ランクに使える者が多いようだ。基本、魔法使いは白銀級が使えると一流魔法使いと言われる事が多い。
【上級魔法】
国や教会がスカウトに来るレベル。上級魔法を使えることが近衛騎士や宮廷魔道士の様なエリートになる最低ライン。軍や神殿騎士も隊長クラスなら使えると言われている魔法。
【中級魔法】
戦闘向けの魔法が多い為、一般人だとあまり使わない。一般兵だと部隊長、冒険者だとベテランとかに使える者はぼちぼちいる。
【初級魔法】
簡単な戦闘魔法や生活魔法がここに入る。王立学園や騎士学院で必ず習うので、貴族や裕福な平民には使用者が多い。生活魔法は唱和しなくても使えるように簡略化された魔法なので、文字を読める様になるか誰かに習えば子供でも簡単に使用ができるが、簡略化されている影響か魔力消費が微多い。
魔法の説明はこんな所かな。ちなみに僕がこの歳で上級まで使用できる理由は神の加護があるから。······だと思う。
何故僕に神の加護あるのかと言うと、僕が創造神レキエルの使徒だから。
僕が創造神レキエル様に言われた使命は······。