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色とりどりの恋物語

どうしてもチョコが欲しい男子高生とツンデレ女子高生

作者: 紅204

一日遅れのバレンタイン

「なーなー、チョコくれない?義理でもいいからさー」


昼休みの教室で、少し大きめの声が聞こえた。声の主は竜胆将人。声をかけられているのはその幼馴染である結城奈々。バレンタイン目前になってチョコが欲しいと思った将人が奈々にお願いしている。


「あげるわけないじゃない!」

「そこを何とか。義理でもいいから」

「だからあげないのよ!」


大きな声で騒いでいる二人に同じクラスの女子が近づく。


「義理でよかったらあげてもいいよ」

「え?マジで!ありがとうございます!」




バレンタイン当日の朝。

将人のところに女子が近づいてくる。


「はい、義理チョコあげる」

「え!ホントにくれるの?ありがとう!」


受け取った将人の顔がほころぶ。


「私も」「余ったしあげる」


将人の机に既製品のチョコがたくさん置かれていく。


「ありがとう!本気でもらえるとは思わなかったわー」


そんな喜んでいる将人だが、将人に義理チョコをあげた後に女子たちは本命チョコを渡している。


「ほら、ついでだしあんたにもあげる」「えっ、いいの?」「うっさい。いいから大人しく受け取りなさい」

「拓馬くん。これ、よかったらもらってください」「ほんと?ありがとう」「あの、へ、返事はいつでもいいのでっ」


女子たちの心は一つになっていた。将人のおかげで渡しやすくなった、と。


「バッカみたい」

「え?」


なにも知らずにか、純粋に喜んでいる将人に冷たい視線を向けてくる奈々。


「義理チョコなのにそんなに喜んでバカみたいって言ってんの」

「別にいいじゃんか。初めて同級生からもらったんだから」


奈々は将人を睨みつける。


「な、何だよ」


奈々に睨みつけられ、少したじろぐ将人。


「別に!」

「何でそんなに怒ってんだよ」

「知らない!自分の胸にでも聞いてみれば!」


奈々は自分の席に戻る。




放課後、部室で将人は友人と話している。


「結局奈々からもらえなかったや」

「お前さあ、何で他の人からのチョコを、嬉しそうにもらったんだよ」


呆れたような顔で、友人はそう言った。


「えー、だってもらえるんだったらもらいたくない?」


友人はため息をつくと、

「俺だったら他の人からのチョコを嬉しそうにもらってる奴なんかにチョコをあげたいとは思わないけどな」

と言った。


「そっかー。今年も諦めるしかないのかな」


コンコン、とノックが鳴る。


「はいはーい」


友人が扉を開ける。外には可愛らしい女子がいた。


「あ、あの!将人先輩に用があってきたんですけど!」


声が少し震えている。


「どちら様ですかー」


少しショックを受けたような顔をすると、口を開いた。


「先日電車で痴漢から助けてもらった、んです、けど、覚えて、ない、ですか……?」


女子は将人の顔を見上げ、不安そうに問いかける。将人が心当たりがなさそうな顔をしていたからか、途中から言葉が途切れ途切れになっていた。


「えー、よく覚えてないやー」

「そ、そうですか……。あ、あの!これ、受け取ってください!」


綺麗に包装された箱を将人に差し出してくる。


「ごめんねー。受け取れないやー」


将人は困ったように笑いながら、断った。


「そ、そうですか……。や、やっぱり迷惑ですよね……」


女子の目が潤み始めた。それを見た将人は慌てる。


「ご、ごめんね、泣かせるつもりはなかったんだけど。あのね、僕には好きな人がいるんだ。だから、受け取れない」


将人は笑みを消して、真面目な顔を向ける。


「そ、そうなんですね。わ、分かりました。迷惑をおかけしてすみませんでした」


そう言い残すと、将人が声をかける前に走り去った。


「かーわいそ。チョコくらいもらってやりゃよかったのに」

「お前がダメって言ったんじゃん」

「時と場合によるだろうが」


ガチャリ、と扉が開く。開いた扉から青年が入ってきた。二人が所属している部の部長だ。


「遅れてすまない。さあ部活を始めようか」


二人は話を中断して部長の言葉に従う。




夜、将人が夕食の片付けをしていると、チャイムの音が聞こえた。


「将人ー、見てきて」

「んー、わかった」


母親に言われて将人が玄関のドアを開けると、奈々がいた。寒いからか、頬が紅潮している。


「どうしたん?」

「これ!」


丁寧に包装されている箱を、将人の胸に押し付けると走り去った。


「どうしたんだろ?」


(もしかしてチョコ?な訳ないか。怒らせちゃったみたいだし。じゃあ何だろ)


押し付けられた箱を手に持ち考えこむ将人。


「誰だったのー?」

「奈々だったー」


後ろから母親の声が聞こえた将人は考えるのを中断した。


「あら、奈々ちゃん?何の用だったの?」

「これを持ってきただけみたい?」


先ほど受け取った箱を母親に見せる。


「なに?あら、そういえば今日は……。よかったわね」


それを見ると、何かを察したようにそう言い、その場を離れる。


「うーん、今日奈々を怒らせちゃったから違うと思うんだけど」


ポツリ、と呟く。そのまま階段を上って自室へと戻る。

椅子に座って包装を丁寧に開ける。中にはチョコと折られている一枚の紙が入っていた。紙を開くと、一言「本命」とだけ書いてあった。

続きはホワイトデーに投稿します。

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