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風と狼  作者: 真朱マロ
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そのいち  狼の仔

 その子狼は、銀に輝く灰色の毛並みと青い瞳をしていた。

 森の中ほどにある大木のうろの中で、うずくまるように体を丸めて小さく震えていた。

 薬草と森の恵みを求めていたシャナは、見つけてしまった命にしばし迷う。


 見たところ生後半年ほどである。

 先週、家畜を襲いに来る狼の群れを返り討ちにしたと村の男たちが言っていたので、その群れの子だろう。

 一頭だけ残され哀れとも思うが、人間の村に近づけば淘汰されるのも必然である。


 それなりに豊かな森とはいえ、今は夏の終わり。

 運よくこの秋を生き延びたとしても、親もなく雪の降る冬を越せるはずもない。

 狼の気性のほどは影響するが、子供のころからうまく飼えば犬と同じだと、亡くなったオババが言っていたのを思いだす。

 腰の短刀に手を添えたまま、シャナは膝を落として狼と目を合わせた。


「おまえ、私と共に来るか?」


 懐くのならば若い女の一人暮らしであるから都合が良いけれど、敵意を持つならここで殺してやるのが温情だろう。

 強い意志を乗せて、シャナは狼を見た。


 金色の炎のような眼差しに、子狼はそれまで虚ろだった青い瞳をゆるりと向ける。

 言葉の意味が分かるはずもないのに、心の奥まで見透かすように二度・三度とまばたきして、キュンと鳴いて身を伏せた。

 野生の生物なのに、やけに従順である。


「来るか?」


 上目づかいで見上げてくるので再び問いかけると、子狼は「キュン」と返事のように鳴く。

 シャナが「ではついて来い」とアゴをしゃくって立ち上がると、ふらりと子狼も立ち上がる。


 まるで、人の言葉を理解しているようだ。

 よろりよろりとふらつきながらも、ゆっくりと歩くシャナについてくる子狼のけなげな様子に、シャナは口元を軽くほころばせた。


 それなりに弱っているようだが、生きる力が強く賢い。

 しつけは必要だが、人に慣れる気質は得難い。

 野生のものなら当然ある警戒はなく、おかしな獣だった。

 この子狼は親に向けるような顔でシャナを見る。


 ふとした拍子に知らず見つめ合い、可愛いと感じるのはこういう事だと知った。

 この子狼がいつまで自分の元にいるかはわからないが、森をともに歩く相手がいる現状は悪くなかった。


「おまえの名はルヴァだ。あとで私のものとわかる証をやる。嫌がるなよ?」

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