若葉の頃
*孝彦中学生時代。
中学生時代の友人が出てきます。
若葉の頃
「孝彦孝彦孝彦ー!!!!」
「うっせぇちょっと黙れ」
いきなり俺の名前を連呼して来たのは中学で三年間同じクラスの腐れ縁、田中。
俺に飛びつく勢いだったので、俺は田中の頭をぺしっと軽く叩き、眉間にシワを寄せた。
田中は眉をハの字にしながら、泣きそうな顔で叩かれた場所を押さえる。
「な、つ、冷たい!」
別に俺は悪くない、と思う。五月蝿くした田中が悪い。
「で、何なんだよ」
「帰りどっか寄ってこーぜ!」
俺は小さい子どもみたいな田中を見下ろしながら(田中の身長は百六十センチで平均よりも低めだった)用件を聞く。
田中はぱぁと表情を明るくし、にかっと白い歯を出して笑った。なんか、歯磨きのCMに出れそうだな。
「パス」
「え゛ーー?!何で?!行こーって!」
しかし俺は田中の申し出を断る。別に嫌なわけじゃない。行けるなら行きたい。
俺の言葉にショックを受けたのか田中は近くにあった机を叩き抗議して来た。
「金がない、どうせゲーセンとかだろー無理」
そう。俺には金がなかった。なんたって小遣い前だ。
派手に使ってはいないがちょくちょくこうやって田中の誘いで金を使う機会があり、少ない小遣いはすっからかんだ。ちなみに俺はお年玉は貯金をして手をつけないようにしている。
「えぇー国久も呼んだんだぜー」
ぶーぶーと言う田中には申し訳ないがないものはない。金を使わない遊びがあればいいんだが。
「なら斉藤と二人で行け」
――田中が言っている国久というのは、こいつもまた三年間同じクラスの友人で名前を斉藤国久という。
「勘弁しろよ、田中の子守りなんてごめんだ」
「斉藤」
俺の後ろから突然声がしたと思ったら、背後に斉藤が立っていた。いつの間にいたんだこいつ。
噂をすればなんとやらってか。
斉藤は嫌そうな顔で言うと、俺の頭に手を置いて来た。俺の身長は高いほうだが、斉藤の方が5センチ程大きい。
――なんか悔しい。しかも斉藤は結構なイケメンだ。
田中はいい奴なんだが、なんか小学生のわんぱく小僧を大きくした感じだ。まぁつまり子どもっぽいってことだけど。
それでも嫌な奴じゃないからつるんでるんだけどよ。
「てかよ、金使いたくねーんなら、田中ん家でDVDでも観ようぜ」
斉藤は席の上に置いてあった俺の鞄をずい、と俺に差し出してきたので、それを受け取ると横の田中が声を上げた。
「おっそれいいなー!っていうか何で俺ん家?!」
「一番近いからだろ」
田中のオーバーリアクションに笑みを浮かべる。何か見てて飽きないんだよな。
田中の家は学校から五分位で着く。俺の家は十分。斉藤は十二分程らしい。
まぁ田中の家になるのは妥当だな。近いし。田中のお母さんは綺麗好きだから部屋も綺麗だ。
俺は教室の入り口へと向かいながら顔だけ田中の方を向けると田中はそうかーと納得する。
素直だな、田中。
「田中何のDVDあんだよ」
田中の家へ向かっている途中、気になったので俺は田中に聞いてみた。
その質問に田中はにっこーと笑いながら、誇らしげに答える。
「ドラ○もんなら映画全部そろってるぞ!」
「……そうか、ド○えもんか……」
アニメか。中学三年にもなってアニメか。まぁ嫌いじゃないけどよ。
それに何気に映画感動するしな。
偶にはいいか。ドラえ○んの映画を男三人でじっくり観るのも。
「楽しみだな、斉藤」
「――あぁ」
俺は隣で歩いてる斉藤に微笑みかけると、斉藤も薄っすらと微笑む。
斉藤は人前であんまり笑わないが、俺達の前だと笑ってくれて結構嬉しかったり。
「俺も俺もっ!」
「おーおーそうだな田中」
仲間はずれにされたと思ったのか、田中は俺の服の裾を掴みながら俺の言葉に同意した。
俺は田中に視線を移すと、田中の頭をぽんぽんと軽く叩く。先程とは違い優しく。
――空を見上げながら俺は何の映画から観ようか、なんて思っていた。
やっぱり最初の映画から順番にか?
そんな些細な日常。