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妖蔓延る世界のお話。  作者: 書き手のタコワサ
妖蔓延る世界のお話。対校戦編
94/208

中堅戦 多々良凛対賀上大輔

例えば、『天才』とか。

例えば、『百年に一人の逸材』とか。

この世に、所謂『優秀なもの』の形容詞は幾らでもある。

そして、それに当てはまるのが、俺の幼馴染。


多々良凛である。


──────────────────────────


『えー、先鋒戦、次鋒戦といきなり始まったので、中堅戦は普通に始まって欲しいですね』

『その点、この試合は安心ですね、なんたって両校の真面目枠と言いますか、まとめ役同士の試合ですからね』


そう語るのは、実況、解説の二人。

“情報通”と名高い実況の田中正臣、そして、解説の北沢包。

確か、北沢さんの方は音に適性があった筈。


『所で、北沢さん、今回の試合運びはどうなると思われますか?』

『はい、まず神園学園多々良凛さんですが、彼女は『式』を扱える家系の出で、今回、その式に注目が向きますね』


…確かに、凛の家は式を呼べる家系だけど凛があまり気に入ってないし、今回の試合で式が見れるかは怪しいか。


『また、式を呼ばない場合も、彼女は適性を幾つも持っているという情報があるので、そこに期待ですね』

『はい、それでは、賀上さんの方を聞いてもよろしいでしょうか?』

『はい、彼はとても冷静な判断が出来る子で、いついかなる時も何処か俯瞰した見方が出来る数少ない術士で、それに加えて火、氷、岩…と三つもの適性を持つ凄い子なんですよ』


適性が三つも…確か俺の組には…駄目だろくに行ってないから何もわかんねぇわ。

だけど、『適性が三つ』と『物事を俯瞰できる』ってのは大分強いな。

確か佐久間先生が適性二つ持ちだったっけ?


何にせよ、一筋縄では行かない相手だろう、頑張れ、凛。


──────────────────────────


一方変わって氷皇控室。

そこには異様な雰囲気が漂っていた。

事を遡れば猫谷の試合後であった。


突然、賀上が姿を消したのである。

卯崎からは『真面目くん』、因幡からは『頭の固いやつ』。

そう呼ばれるほど、規律に厳しく、自らすら律する賀上が今の瞬間、行方不明であった。


「どぅすんの、これ」

「知らねーよ。逃げたんじゃねえの?」


間延びともまた違う言葉を発するのは卯崎奏多、響が『八尺様』とも見紛うほどの巨大に、何処か油断できない雰囲気を纏っている。

知らねーよと返すのは、氷皇の大将因幡和爾。

卯崎ともまた違う独特の雰囲気を持っており、卯崎曰く『ツンツン』らしい。

本人はこの名前を嫌っており、過去に卯崎に『鮫なのに鰐』と笑われた事がある。


「賀上くんに限ってそんな事あるかなぁ」

「さぁな、もう不戦敗で良いだろ、あたしらが勝てば良いんだから」

「…でも、私は兎も角、因幡ちゃん雅閃に勝てる?」


険悪な雰囲気が流れる。

間に挟まれた黒崎くんが不憫でならない。


「ちょ、ちょっと待って下さい!僕!賀上さんに連絡とりますから!」


──────────────────────────


「…」


渦中の男、賀上大輔。

控室を抜け出すほど、急を要する要件とは…?


「…」



「…」

「ニャー」


猫だ。猫がいる。

まさか猫に会うために…?

いや、そんな筈がない。幾ら生粋の猫好きとは言え、大事な対校戦を棒に振る覚悟で猫に会うわけが──


「…すーっ」


…!?

吸った!猫吸いだ!

猫を吸った!対校戦の真っ最中に猫を吸いに抜け出してきたのか!?

何という度胸、そこに強さの秘訣があるのか?


「…っよし」


何が良しなのかは微塵も分からないし分かりたくもないが、…恐らく何かが漲ったんだろう。


──────────────────────────


「すまん、遅れた」

「あ!賀上さん!早く戦場に入って下さい!相手の人もう十分くらい待ってます!」


この男、あの後五分くらい猫を吸っていたのである。

…まだ厠とか、気付けとかならそのくらいかかるかもしれないけど『猫吸い』に五分もかけていたのである。


「了解、んじゃ行ってくる」

「おー、負けても良いぞー」

「えぇ、負けてもらってもいいですよぉ」


…決して信用が無いわけではないし、寧ろ氷皇ではある方だが、因幡と卯崎は戦いたいがために『負けろ』と背中を押している。


実際、卯崎はまだしも、因幡の方は卯崎が勝ってしまったら自分の勝負なく勝敗が決まるのが嫌らしい。

…実際、大将同士の試合は見応えがある為、勝ち負けに関わらず行われるが、神無月の性格上負けが決まったら明らかに手を抜くのは目に見えている。


実際、ここで賀上が負けるか、卯崎が負けるかすれば、二対二の大将戦で決着と事を運べる為、因幡的には負けてほしい。…らしい。


──────────────────────────


「…すぅ」


 息を呑む。

独特な雰囲気に体が強張っている。


 今日は響が見にきてくれている。

格好悪い所は見せられない。

傀儡も、式も。全部使って相手を叩きのめしてくれる。


「…」


 今の自分は、どんな顔をしているだろうか。

案外、笑っていたりするのかもしれない。

でも、内心は心臓が張り裂けそうなほど、緊張している。

火病とかいう初めて聞く名前のやつが初戦に負けて、風間が勝ったから良いものの、もし風間が負けていたと考えるとゾッとしない。


「…流星」

『…いるぞ』


「頼んだわよ」

『まっかせておけい!』


決意は固く、決して砕けない。


──────────────────────────


『お、賀上さんが姿を見せました』

『…何か話しているようですね』


「…遅れたのは此方の不手際だ。済まない」

「えぇ、分かっているわ」


頭を下げる賀上。

その姿からは、心からの謝罪が見てとれる。


「詫びと言ってはなんだが、お前に一度攻撃の機会をくれてやる」

「…そう、後悔しないわよね?」


挑発するよう、多々良が言う。


「…あぁ、これで負けても、正直構わない」

「…そう」


負けても構わないと言うのは副将と大将の事だろう。

…負けろって言ってたし。


「じゃ、行くわよ…」


「ふっ」という掛け声に似た物と共に、空に極大の方陣が現れる。

それは二重、三重と重なっていき、五重と重なった時、賀上の体を悪寒、恐怖が襲う。


本能が、“あれに被弾してはいけない”と警鐘を鳴らす。


『星よ 混沌とも取れる其の力 今 地に降りて 敵を撃たん 我が命に木霊し 眼前の敵を滅さん』


『瞳 黒絹 無名の胎児 統べる者 暗闇 破砕 明けの明星』


『降れ 亡びよ』


一閃、方陣から光が放たれる。

何億、何極と『重なった星』が降る。


「────」


決着は一瞬だった。

極大とも取れる術の奔流に打たれ、尚体が持ったのは、単に賀上の硬さにあったろうか。

書きタコの思考(今の小説状況って一種の詐欺に近しいのでは?タグ詐欺してるかもしれん…)

という思考に苛まれ続けてるので対校戦試合終わり次第ヒロイン編再開します(誰も望んで無いかもしれないけど)

やる気に満ちてるというより、4月で書き切った方がいいなという事で、27、29にも投稿されます。(筆が間に合えば三十一もあるかも…?)

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