各校集結!
「…」
「おぅい、だいじょぅぶかい?」
昔、まぁ中等部くらいの頃。
“民間に伝わる伝承が妖になった〜”なんて事も珍しく無くて、その件を調べてた事がある。
所謂、『八尺様』とか、『びしゃがつく』とか。
恐れられてるものってのはそれだけで莫大な力を持つし、それが人間に悪影響を及ぼさないとも限らないから、その抑制とかに努めるのも術士の役目らしい。
「あのぉ」
で、今何でその話を思い出しているか、と言うのが本題の方で。
学園に着いて、対校戦を見ようと息巻いていたら…
その八尺様よりも大きい人間?に出会いました。
「氷皇の控室って何処でしょうかぁ」
「…氷皇?」
氷蘭皇制高等術士教育学園…相変わらず長いな。
略して氷皇。
神園学園をも凌ぐ程“対妖”教育が凄まじい所で、学園別好感度調査では万年最下位だ。
「あの道分かります?」
「うん、見えるよぉ」
「あの道を左に曲がって、突き当たりを右です」
「おぉ!助かるよぉ」
…何処か食えない人だ。
間延びしているようで、何処か張り詰めている。
この雰囲気は室呂先輩とも違う、神無月先輩に近いかもしれない。
「そぅそお、君、鳴渡くん?」
「え、はい。多分合ってます」
「じゃさ、神無月に伝言頼める?」
突然、目の前の景色がぶれる。
これは、あの“地獄”にも匹敵するかもしれない。
「…本気できなよってさ」
呼吸ができない。
過呼吸の真逆にいるようで、深海にでも押し込まれた様な息苦しさに包まれる。
「ありがとねー」
「はぁ、はぁ」
体の内から消えた酸素を取り込もうと呼吸が激しくなる。
指先が痒くなる。
「あれが、氷皇の…」
神無月先輩を敵対視していた事から、恐らくそれと同等かそれ以上の力を持っている事が察せられる。
と言う事は恐らく大将、悪くても副将だろう。
そして、その人から神無月先輩への宣戦布告。
その橋渡し役を引き受けさせられた…と。
失敗したら殺されるかもしれん…。
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「んぅふふ。たぁだいまー」
「…遅いぞ、卯崎」
あれ〜?賀上くん怒ってますね〜。
何か嫌な事でもあったんですかね〜。
いいこいいこしてあげましょうね〜。
「…撫でるな」
「それよりも〜、響君に会いましたよ〜」
「!ほんとか!?」
あら、珍しくうちの大将が活発ですね〜。
普段はザ・不良って感じで大人しい…と言うよりは何処か達観しているから、余計に可愛く見えますね〜。
「あいつは出るのか!?」
「…因幡ちゃん、対戦表、見てないの〜?」
「ああ?…見てない」
確かに、因幡ちゃんはそういうの読まないでしょうし、仕方ないか…
私が頭を横に振ると、因幡ちゃんは舌打ちをして隅っこに縮こまってしまいました。
「何でだよ…」とか言いながらいじけてます。
「…でも、あの子は伸び代がありますね〜」
「!だろ!あいつ、伸び代あるだろ!?」
…はっ!いけませんね、普段浴びない純情を浴びて一瞬意識が飛んでました…。
その後も、出番がある迄延々とまるで自分の事のように響君の事を語る因幡ちゃんは、いつもと正反対のキラキラした雰囲気でした。
『氷皇学園さん、準備お願いします』
さて、出番ですね。
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『お待たせしましたァ!これより『氷皇対流命対神園対蓮華対校戦』を開始しまぁす!』
キン、と言う反響音の後、大歓声と共に実況の声が響く。
弁財先生から貸してもらった抑音機がなかったら今頃鼓膜は無いだろう。
『さぁ!それでは!対校戦各校名の発表だ!』
『一番手はコイツらだろう!神園学園より、先鋒“火病烈空”、次鋒“風間赤國”、中堅“多々良凛”、副将“二位咸”、大将“神無月雅閃”の入場だぁ!』
大歓声に後押され、五人が場に立つ。
どの顔も険しい顔をしている。
…あれ?火病なんて奴いたっけ?
『二番手と言うのは安定の証!今日も活躍、期待してるぜぇ!流命回環高等学園より、先鋒“白泣鯨”、次鋒“車座一重”、中堅“金山嵐”、副将“海月坂八幡”、大将“室山蟹”の登場だぁ!』
次に出てきたのは流命…回環って言うのか、の五人。
特に大将が特徴的で、陸の上だからかは分からないけどなんか揺ら揺らしてる。
…あれが陸酔いってやつなのかな。
『三番手は我等こそ!搦め手?ノンノン!不正?ノンノン!勝ちゃ正義よ!蓮華高等学校より、先鋒“二蓋冬馬”、次鋒“華咲藤宮”、中堅“月弥生”、副将“蛭前垂柿”、大将“宵崎伸身”の出場だぁ!』
三番手は蓮学、中堅の月さん以外はあまりパッとしない地味な格好をしていて、良くも悪くも記憶に残ると言える。
あ、月さんが手振ってる、友達でも居たのかな。
それと、この対戦場には術の余波で被害が出ないよう、守の結界が貼られていて、こちらへの音は拡音機を通してとなる。
まぁ、俺みたいな音使いとか、耳が良い人が直に色々浴びると被害が拡大しちゃうからね。
『さぁ、観客の皆様、特大の歓声を上げる準備は出来てるかぁ!?やってきた!北から!“最強”が!氷蘭皇制高等術士教育学園より、先鋒“黒崎満凍”、次鋒“猫谷染谷”、中堅“賀上大輔”、次鋒“卯崎奏多”、大将“因幡和爾”がお入りだぁ!』
“最強”の名に恥じない程の貫禄、威圧感。
この場にいる観客全員が息すら飲めない程の“異なる空気“。
てか、あの人卯崎さんって言うのか、後で握手とか出来たりしないかな。
『以上此処に並びし二十名、其々異なる豪傑なり!果たして、この四校最強は、“最も強い”のはどの校なのか!』
実況にも明らかに熱が入り、会場も盛り上がっている。
時たま、歓声で実況がかき消されるほど。
『それでは此処で、対戦表の発表だぁ!』
ばっ、と広げられた対戦表は、白紙だった。
その事に、会場からはヤジが飛ぶ。
『ノンノン!せっかちさんは嫌われるぜ!って事でくじ引きだぁ〜!』
戦場に置かれる、くじ引きの箱。
大方大将が引いた番号とかで決まるのだろう。
『…さぁ!その中から好きな数字をお取りください!』
まず動いたのは因幡さんだった。
箱の中に手を入れると、勢いよく引き出し、手には一の文字が書かれた球を持っていた。
その次に動いたのが室山さんだった。
揺ら揺らと巨体を揺らしながら箱の中に手を入れ、四と書いた球を取り出した。
三番目に動いたのは宵崎さんだった。
異常に長い体を屈ませながら、億劫そうに球を取り、それには三と書いてあった。
最後に動いた…と言うか余った枠に神園学園の文字が入った。
『さぁ!対戦表の決定だ!一回戦、“神園学園対氷蘭皇制高等術士教育学園”!続く第二回戦は、“流命回環高等学園対蓮華高等学校”だぁ!』
拍手と共に、選手に様々なヤジが飛ぶ。
賞賛もあれば、また半分脅しのようなものまで。
『第一回戦、神園学園対氷蘭皇制高等術士教育学園の試合はこの後、十時より開始!御手洗は済ませておけよぉ〜!』
また、大歓声と共に術士が掃けていく。
…凛大丈夫かな、ちょっと心配だな。
上がったりしてないかな…。




