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妖蔓延る世界のお話。  作者: 書き手のタコワサ
多々良凛ノ物語
9/216

多々良凛〜漆〜

「ただいま」


(あいつ)の声が聞こえる。

他の女(あたし以外)に汚された声が。


「…おかえり」


嫉妬からか邪険に扱ってしまう。

…こういう事するから距離が開くのに。


「おおぅ…何かあったの?…あっ、分かったわ。」


何だろうか?…絶対違うが一応聞いてみよう。


「…何だと思う?」

「『彼氏』に振られたんだろ?」

「…は?」

「分かるわー、俺もドッキリとかくらった時キツかったもんな」

「…何で…?」


声が震え、小さくなる。

私は泣いているのだろうか?

肩が震え、(コイツ)が困惑している。

いい気味だ、もっと困ってしまえ。


「…!?…!」

「(何を言ってるんだ?)」

「…!…!」


(あいつ)は何かを、操作?している。


「(なんも、わかんないわ…)」


遠くに鳴るサイレンの音。

此方を見て慌てる(コイツ)

私の意識はそこで途切れた。


---------------------------------------------------------------------


「ん?…ここは?」


目が覚めると知らない天井、病院だろうか?


「お、起きたか?」

「響…?」

「おう、にしても驚いたわ、いきなり倒れんだもん」


そうか…私は…


「今は何日(いつ)?」

「日は変わってねぇよ」

「どれくらい寝てた?」

「本当45分位」

「そう…」


そんなに…


「…だから、暫く安静にってよ」

「そ、それじゃ訓練とかは!?」

「いや、紫煙先生に聞いたら『暫く座学だけだ』ってよ」

「そ…そう…」


まただ…『また』(コイツ)に置いていかれる。

これじゃ、またあの時と同じだ…


「まぁ、あれだ、あんまり気負い過ぎんなよ?」

「えぇ。大丈夫。こういうのには『慣れてる(・・・・)』わ」

「?まぁお前が良いなら良いんじゃないか?」


---------------------------------------------------------------------


そんなこんなで(あいつ)が病室を出た後ふと考えに耽る。


「(また、あいつに救われた)」


あの時、あいつを守ると啖呵を切ったのに、

蓋を開けてみればこのザマ。


「(虚しい…)」


自身の弱さに反吐が出る。

『天才』だ、『神童』だ、と持て囃され、天狗になっていたのだ。

いい気味だ、(あいつ)が居なけりゃこんなに弱いのか…


「(あぁ、嫌だ)」


そんな事を思いながら目を瞑る。


---------------------------------------------------------------------


『おらー!どっかいけー!』

『やべぇ!ゴリラおんなだ!にげろー!』

『ちっ!にどとくるんじゃねー!』


『ありがと…○○ちゃん』

『いいぜ!またなんかあったらたよってな!』

『うん…ありがと』

『へへっ』


---------------------------------------------------------------------


「んぅ…?」


随分と懐かしい夢を見た気がする。


「グスッ…」


あの時とは立場が180度変わった。

昔は私が守って居た。

今は逆に守られている。


「…クソッ」


悪態をつく事しか出来ないんだ。


「強くならないと…」


(あいつ)を守れる様に。

(あいつ)に着いて行けるように。

(あいつ)に…選ばれる為に。

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