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妖蔓延る世界のお話。  作者: 書き手のタコワサ
妖蔓延る世界の日常
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報告

やたらめったら書いてたら大昔に建てたシナリオから飛びまくってた。

過去に書いた話と設定が乖離してるかも…

「…」

「そうおちこむな、ひびき」


そう言い、肩をさする空見。

本人的には心配してくれてるのだろうが、抑揚のない声と変わらない表情から察する事が難しい。


「…にしても、すんげー音だったな」


頭を掻きながら肩をすくめるのが釘刺。

先の妖戦にて、出番が無かったからか少し言葉の端に棘がある。気がする。


「ま、あれだ。暫く使用を制限しろ、とか言われっかもな」

「…仕方ないかぁ〜」


先程起こした音の嵐。

何十億倍にも増幅されたとは言え、元は俺の術だし、恐らく何かの罰的な物が言い渡される、だろう。


「でも、ひびきもがんばってたんだぞ!」

「んな事俺も分かっとるわ、言いたかないが、上の人達は頭は硬いわ穏便に事を進めたい人が多いからな」

「…」


──────────────────────────

『あ、そうや』

『はい?』


『オオタケがあんな事したお詫び、させてくれへんか?』

『はぁ…』


『じゃ、すこーしおでこ借りるで…』

──────────────────────────


「…なぁ、釘刺、空見」

「ん、どした?」

「なにかあったのか?」


…正直、話す事すら躊躇われる。

自惚れなんじゃないか、自意識過剰なんじゃないか。

そんな思考が頭を駆け巡る。

あの時、…狐さんにされた行為に未だ疑問を持っている。

…まぁ、鬼もどきにされた事を考えれば…いや、にしてもあんな事するか?


「俺さ」

「おう」

「うん」


「…やばい人に気に入られやすい傾向にでもあるんだろうか?」


…何だその顔。

釘刺は口を固く閉じ、吹き出しそうになるのを堪えている。

空見はあり得ないものを見た様に、目を開けたり閉じたりを繰り返している。


「ひびき、それはむかしからじゃないか?」

「プッ、ククッ」

「…」


この野郎…こっちは真剣に悩んでんのに…

いや、確かに思い返せば幾つもおかしいと思う事はあったけども…

…いい例が凛な、あいつ人の食うもんにもケチつけるんだよ。

白園の目も怖いし…


「ククッ、は、腹いて…」

「…笑い過ぎだろ」


恐らく、この反応を見るに釘刺はだいぶ前からそう思ってたんだろうな。

…早く言ってくれりゃよかったのに。


「お三方」


「そろそろ学園に着きますので、準備を」


「ほい」

「わかった」

「りょ」


──────────────────────────


「…うん。…了解。じゃ、報告書は貰ったから、解散で良いよ」

「へーい」


妖討伐後のお決まりの報告書。

『どういう手段で持って』『どの様に』『何を使って』…とか。

事細かに書くのは意外に疲れるし、何より書き漏らしがあったら大惨事だ。


それに、今の面子だと報告書を書けるのは俺だけなんだよ。

空見は力み過ぎて碌に文字を書けないし、釘刺に至っては書いたもの全部が呪言になるから、文字を書けない。


「…それと、響くん」

「…はい」

「刀、見せてくれるかい?」

「…どうぞ」


──────────────────────────


「お疲れ〜」


「…何でいるんですか」


目の前、校門前で気さくに手を振る奴。

髪のてっぺんが黒で、下に行く毎に黄色になる。

『一度染めたけど染め直すのがめんどくさくなった』髪色だ。


「規約通りに、月に一日は寮で過ごせって言ったろ?」

「はい」


おかしい。

つい先日泊まった筈なのに…


「いや、ついこの間泊まりましたよ?」

「あ?…あー…?」


顎に手を当て首を捻られる。

…果たしてその動作は俺に何を伝えたいのだろうか?


「あー…マジか?すまん、もう一回見直すわ」

「大丈夫ですか?また酒に溺れて「そーなんだよ!」…はぁ」


まずい。長くなるぞ…、早く帰りたいのに…


「あの男さ、ほんと見る目が無えわ。私だってさ好きでこんな事やってんじゃ無えのにいちいちいちいち愚痴にも満たねえ文句をぐちぐち…本当可笑しくなりそうでよ…それよりもよー私としてはぱっぱとあの男と別れて早めに違う良い男でも探そうと──「すんません!また後で聞きます!」ったくまぁでも?あの男を──」


──────────────────────────


ふう、酷い目に遭った…

あの人、術師としては尊敬できるけど他の部分がな…


さて、体感三ヶ月ぶりの我が家は如何かな?


「たーだいまっと」


あいも変わらず静まり返った我が家。

ま、そりゃそうか。本来の持ち主は死に、その妻も行方不明…で、今は子供だけが残る…と。


「困ったねこりゃ…」


合鍵を渡してるのは凛だけだし、その凛が人の家入って物散らかして出てく訳ないし…泥だな?


「さ、て。何が盗まれてるかな…」


──────────────────────────


「…無い」


「通帳が、無い」


なんてこった、通帳が無い。

…へそくりも行かれてる。

財布の中には十円玉が三枚…学園は副業禁止…服の洗濯も出来ない…飯も満足に食えない…凛は頼れない……


「終わりだ…」


鳴渡響十七歳、無一文。

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