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妖蔓延る世界のお話。  作者: 書き手のタコワサ
妖蔓延る世界の日常
76/209

鬼の“郷”

ルビの振り忘れを修正(12/29)

「さ、さ!おらだぢの郷にくるべ!」

「お、おう…」


赤い角を持つ鬼の…女性?に連れられ、雑木林の中を駆けていく。

昔、本当に昔、凛と二人で行った遊園地の内容を思い出す。

提灯の中に鬼火が入り込み、妖として意思を持った奴だったり。

本当、現実味のない所だった。

脅かし役は履いてる靴が丸見えで、所々混ざる悲鳴だって効果音で。


「…泣いてる?」

「あ?」


気づけば目から大量の涙が溢れていた。

意思とは何の繋がりもなく、ただ溢れる様に泣いていた。


「よ、よぐわがらんけど、だいじょぶだが!?」

「…大丈夫、だ、こんくらい……」


ぽん、と頭に手が置かれ、撫でられる。

さすり、さすり、と、割れ物を扱うかの様に、この鬼は、俺を撫でる。


「ええか?無理しだら体いわすべ!」

「…むりじゃ、ねぇ」

「い〜や、そっだら顔ば無理しとる顔だべ!」


“全く、響は怖がりね!”


あぁ、そっかぁ、最近会えて無いもんな…

元気にしてんのかな…


「お、わだしのなでなで、よがっだべか?」


「ありがと、色々助かったわ」


ふんす!と、腰に手を当て反り返る鬼。

…何処とは言わんがアイツとは似ても似つかないな。


「…あっ!」


突然、目を見開き何かを考える仕草をする鬼。

むむむ…と唸ったり、こめかみに指を当て、何かを捻り出す様な動きだ。


「…人間さん」

「おう」


重い口を開き、申し訳なさを全面に押し出してこちらに話しかける。

ギギギ…とか、調子の悪い日の空見みたいな音まで聞こえてきそうだ。


「今日ね、私達の頭領のお客さんが来るんだけど、その中に人間が大っ嫌いな御方がいてね…」


ほうほう。


「多分、郷に入っただけで…その…」


赤い色をした顔が真っ青に見えるほど、鬼の言う『御方』ってのは恐ろしいらしい。

で、俺にどうしろと?


「…そ、その…」


…これ、マズくない!?

過去、何度か人嫌いにあったことはある。が、それは『人』の人嫌いだから会えたし交渉とかも出来た。


今回の相手は度が違う。

ここで今隣に立って慌てている鬼でさえ、ここから出て神ノ國に現れれば『大妖』かそれ以上に振り分けられるだろう。

そんな、“俺の知っている鬼とは違う”、端的に言えばとんでもなく強い鬼でさえ、畏怖する『御方』。


問題はその『御方』が、極度の人間嫌いって事。

この鬼をして恐るんだ、人間なぞ指先一つで殺せるに違いない。


「…確認していいか?」

「な、何でも聞いてくれ!」


重い腕を何とか振り上げる。


「その『御方』ってのは人間じゃないよな」

「…」


沈黙は肯定…だっけか。


「…」


ばつが悪そうにこちらから目を離す鬼。

…当たってほしくない推察が当たってそうだ。


ところで。

この国…國か。には、『神』と呼ばれる存在が多数偏在する。

龍の神であったり、それこそ牛に鳥、馬にだって神が居る。

だが…『神としてそこに“在る”だけの存在』というのがいる…らしい。


「…厄介だな、ホント」


“在る”だけの存在は、基本的に静観を決め込むらしい。

それこそ、国が傾くとかそういう『未曾有の災害』が起きた時に初めて民の前に姿を現す…とか。


「で、俺は何で郷に行かなきゃ行けないんだ?」

「あっ、それはな!元の世界…つまり、人間の国に帰るためには、そこの長の持つ扉をくぐる必要があるんだ!」


扉をくぐる…ね。

腹もかかるかもしれないってのに…


「…了解。じゃ、鬼にでもなるか?」

「…へ?」


郷に入っては郷に従え…とはまた違うのだろうが、木を隠すなら森…も違うか?

…相変わらず稚拙な語彙だなホント。


「無いの?変装術的なやつ」

「あ、あるにはあるけど…」


「じゃそれ、俺に行使(つかっ)てよ」


「…へ?」

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