多々良凛〜伍〜
無事?に買い物を終え、家に帰宅する。
響の好きな物を作り、待つ。
…たとえ何時間待つ事になっても。
「(あの先輩綺麗だったなぁ)」
細い切長の目。
茶色と金色が少し混じった亜麻色の様な髪色。
落ち着いた雰囲気。
「(やっぱり…ああいう女性が好きなのかな?)」
何より『あの』人不信な響をあそこまで懐柔するなんて…
「にしても響遅いなぁ…」
まさかあの先輩と?いや、あいつに限って無い無い。
まだ高校生だし。
「(何で…不安なんだろ…)」
どんなに心に、頭に言い聞かせても、良くない思考が出てくる。
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ねぇ、待ってよ、私を置いてくの…?
お願い…一人にしないでよ…。
『多々良、じゃあな。
行きましょう、○○さん』
『えぇ、行きましょう。「旦那様」』
嫌!待って!置いていかないで!
嫌!嫌ぁ!いやああああ!
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「はっ!?」
ゆ、夢?…良かった…。
息を切らし起きる。
「(やばっ…テーブルで寝ちゃってた)」
あの夢…妙にリアルで、鮮明な不思議な夢。
其れは現実になりそうな正夢っぽさもあれば、
『非』現実っぽさも含んだ何とも気持ちの悪い夢。
「(何処ぞかで聞いた話だと好きなことをすれば良くない
考えも消えやすいらしい)」
「久しぶりに…っ絡繰弄るかぁ」
響がいつ帰ってきても良い様にメモ残しとこ。
『部屋に居る。
ご飯作ったから食べといて』
これで…よし!
「(響の驚く顔が目に浮かぶ)」
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「んっ…んんーっ」
外を見ればもう日が登っている。
「集中しすぎて寝るの忘れてた…」
日は既に窓を介し、時計の針は8時を指している。
「今日が休みで良かった〜」
今日は土曜日。
でもスケジュールは大体埋まっている。
「今が8時だから…10時には買い物に行って、
13時には掃除、終わり次第晩御飯作って…」
何て事を考えながら居間に向かう。
「響帰って来てるかな?」
居間に着き、目に入るのは『全く』手の付けられていないラップの掛かったご飯。
「(帰って来てないんだ…何か…やだな)」
あの先輩と一緒なのかな…
胸の奥でドス黒いものが蠢くのを感じた。




