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妖蔓延る世界のお話。  作者: 書き手のタコワサ
妖蔓延る世界の日常
69/209

教え

「ふふん、で?何するんだっけ?」

「…訓練ですよ」


…大丈夫かな、この先輩。


あの合宿で見せた羅刹の如き殺意と集中力は何処へ行ったのか。

目の前に居る先輩は何処か朗らかでまた掴みどころの無い『ぬるり』とした雰囲気を纏う。


「で!この『頼れる』先輩に何を教えて欲しいのかな〜?」

「…癪ですけど」

「ねぇ、癪って何?」


此方を見て凄んでくる先輩。

…胃が閉まる音がする。


「…」


頭の中で思考を巡らせる。

どう返したら角が立たないか、反感を買わないか、適切か。


「ひ、び、き、く〜ん。起きてますか〜?」

「うぉっ!」


恐らく何度呼びかけても反応が無い事を不審に思ったのか、体を曲げ、至近距離で顔を覗き込んでいた。


「それで、何で悩んでるの?」

「…術が、上手くいかないんですよ」

「ふんふん、それで?」

「…それでって、だから困ってるんですよ」


「"どう"上手くいかないの?」

「…"どう"?」


「そ。構築が上手く行かないんなら、頭の中で想像してる形が悪かったり、荒かったりして、威力が足りないなら、その術に使う霊力を少し多くしたり…とか」

「…じゃ、想像が荒いのかな…」


そういえば、今俺が考え、実行している術は、元々水泡先輩の術…?を見て思いついたんだし、何か図解的な物を貰えれば…


「先輩は、どうやってあのシャボン玉を保って居られるんですか?」

「…う〜ん、…説明が難しいな…」


顎に手を当て、うんうんと唸る先輩。

途端に目を開き、何かを思い出したかの様に人差し指を天に向ける。


「あっ!鈴ちゃんから教わったやつでいい?」

「稲月先輩ですか?」

「そっ。いや、私も何となくやってたからさ…」


頭の後ろを掻き、照れくさそうにはにかむ先輩。

普段からだらしない印象はあるけど、自らが使う術を『何となく』で覚えて居られたのは、天才故か、…単純に物覚えが悪い可能性もあるけど、それは無いだろ。十傑に限って。


「確か、私の場合は術を思い浮かべて、それを薄い霊力の膜で覆ってたんだよね」

「…膜で、覆う」

「そーそー、でも稲月が危ないって煩くてさ〜」


…正直、その発想は無かった。

確かに、不安定な物を無理やり抑え込んでも、暴れ回るだけだ。

だったらいっそ、器を先に作ってそこに流し込む様に…


「よし、そうとなったら…」

「ん、お役に立てたなら何より」


…つい先程までいじけて居た人と同一人物とは思えない程、飄々とした、掴みどころの無い先輩に戻っている。


「そうそう、訓練とか付き合って欲しかったら連絡してよ。機械には疎いんだけど、一応、『これ』持ってるから」


そういい、先輩は制服の内にある電話板…通称『リリック』と呼ばれる折り畳み式の携帯できる電話を取り出す。

…ちなみに、何故か『音使い』のみ、リリックよりも最新式の折り畳む必要のない電話、通称…と云うか商品名を『ストリス』と言う。

リリック使ってて鼓膜が破れた音使いが居るから開発されたらしい。


「じゃ、じゃあ、登録…するよ?」

「…はい」


便宜上、『友達』と言う名目の欄に、名前が一つ追加される。


「…」

「な、なにかな?」


友達、と銘打った一覧表には、現在、釘刺、凛、水泡先輩と思しき名前が表示されている。


「…先輩」

「ん、な、なにかな?」


「…水と氷、打ち間違えてますよ」

「…へっ!?」


一覧には、釘刺辰馬、多々良凛、氷泡霜霧…と、表示されている。

…氷と水って打ち間違えるのか?


「ま、まっ、まぁまぁ!これで連絡も取りやすくなったし!ね!?終わり良ければ全てよし!でしょ!?」

「…はい」


あぁ…あの第一印象を返して…

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