訓練、その弍
「違う、思考から行動までが遅すぎる。迷いが有ればすぐに死ぬぞ」
「違う!練るまでが遅すぎる!妖に情が通じると思うな!」
「違ぇ!予防線くらい張っとけ!相手がどこに移動するか、回避するかを読むんだ!」
「お前には敵を一撃で殺す程の力だってねぇんだ!だったら速い連撃を叩き込める様一発を抑えろ!無駄に力を払うな!」
…地獄か?
十傑は毎回これをやってんのか?化け物の集まりかよ…
合宿所(仮)の側にある、開けた場所。
物の伍分で、弁財先生が木が生い茂る鬱蒼とした景色からそこらの公園と…は見間違わないが、草木の一本も無い広場へ変えてしまった。
「…せ、先生、キツい…」
「こんくらいで根ぇあげんな」
こんくらい?何処が?
朝から三時間、死に物狂いでの鬼ごっこと称した逃亡劇。
『捕まったら終わり』では無く、追いかけながら攻撃と称した拳や脚が飛んでくる。
…マジで怪我人に対する仕打ちじゃねぇだろ。
「先生…一つ良いですか…?」
「おう」
突飛な思いつき。
『試してみたい』。それだけ。
「一つ、俺が先生に隠している技があるとしたら、もしそれが、先生、あんたをギャフンと言わせる事が出来たら?」
「出来たら?」
「…出来た後考えます!」
「…はぁ」
あの時思いついた技。
全身の骨が折れ、尚可笑しな思考が頭を支配していたあの時。
無音で起きた土砂崩れ。
奇しくもあの怪奇現象が、新たな技を閃くきっかけとなった。
音を扱う中、考えた事がある。
『音から音を抜くと何が残るのだろう?』と。
本来、『音』というのは一定の波形を用いて『音』となる。
が、『聞こえずらい音』の様に、謂わば『感知しにくい音』がある。
ならば、『感知しにくい』では無く、『感知"出来ない"』音があったら?
「…ふぅ〜」
脱力し、今使わない力を他に回す。
腕が重く、鉛の様に感じる。
目標以外を遮断する為、瞳孔が開く。
指の先に力を込め力を集中させる。
伍指の力を一点に集め、凝縮する。
伍を壱に。
…代償は重いけど、なんとかなるだろう。
「…避けないで下さいよ?」
「ったりめぇだろ?誰が避けるか」
よし、ひとまず『これ』の最悪の弱点は無くなった。
呼吸を整え、一気に放つ。
焦るな。焦ると弱くなる。
「『音砲!一点突破ぁ!』」
「!」
伍指の先に溜めた音の力を思い切り吐き出す。
放出された音は、地を抉り、弁財先生の後ろの木をも薙ぎ倒す。
骨の軋む音がする。
肉の避ける音がする。
練った霊力を、ありったけ放つ。
目の前の人間を破壊する事を全とした攻撃。
歯を食い縛り、足の指が地面に食い込む。
片腕で抑えないといけない程の反動。
『感知出来ない』音では無く、脳が『感知しない』音。
音とは呼べない音。
様は、
ただの衝撃波だ。
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「はぁ…はぁ…」
全ての霊力を放出しきり、眼前の景色はぼやけ、回っている。
ここまでやったんだ。流石の弁財先生でも片膝位…
纏っていた煙が晴れ、弁財先生が姿を表す。
腕を交差し、『立っている』。
「…はは」
乾いた笑いしか出なかった。
まさか、こんなに分厚いとは思っても居なかった。
「……はは」
こんなに…遠いなんて…




