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北条光〜拾参〜

「先輩…」


寂しい、とても。

近くに思い人が居ないだけで、こんなにも気持ちが落ちる。

何というか、こう、不安というか何というか…


.「はぁ…」


どうしても、心配してしまう。

私より遥かに強いのに危なっかしいとこがあるし、自ら危険な所に首突っ込むし。


「先輩…」


ここ数日、鍛錬…まぁ実戦式の授業にも全く身が入っていない。

組みのみんなも『倦怠期とかですか?』とか揶揄ってくるが、正直大分助かっている。


「はは…」


何でこんな『結婚してすぐの夫の長期出張を体験した妻』みたいな気分になっているのだろう?

もし木曜のお昼時ら辺にやってるドロドロしたドラマとかだとその間に夫に浮気相手が出来てたりする物だが、そんなにポンポンと浮気とか出来るのか?なんか節操が無いというか、まぁ『あの』先輩だし?そんな簡単に出来る訳ないし!


「ふへっ…えへへ…」


確かに?先輩は?ヘタレな癖にいざという時は男らしいし、背中おっきいし、優しいし、頓珍漢だけど私の気持ち分かってくれようとするし?まぁ逆にそんな所が愛おしいと言うか?何か、先輩は犬に近いんですよね。


「えへへへへへへ…」


あーあ、早く今日が終わらないかなぁ。

終わったら、何しようか…?

そういや、趣味とも言える趣味も無いし、大っぴらに会える友達もいない。

花は…彼氏居るしなぁ。


「はぁ…」


──────────────────────────


「…と言う訳で、この事件では村人を迫害していた人が怨みを買い、その怨みが募り、大妖が誕生した事から『妖の発生源は人の負の感情』であると言われています」

わわ

ゴーン…ゴーン…


「お?…はい、今日はこれでお終い!荷物を纏めてとっとと帰れ!」


…仮にも教師でしょうに、生徒にとっとと帰れって…

まぁ早く帰りたいし、言う事聞いときますか。


「ん、あぁそうそう光は残れよー」

「せんせー、もう光さん居ないですー」

「うっそーん…」


──────────────────────────


「後、十分で…よし」


普段なら全く使わないバスを待つ。

『今日は早く終わったし、少し遠回りして帰ろう』というコト。


「ん、んん〜っ…」


退屈なのか知らずの内に伸びをし、これからの日程を考える。

今が大体…16時ら辺か。


「買い食いとか禁止だしな〜」


商店街も行けない…理由は察して下さい…

結局、先輩が居ないと私はどこに行くかも決められないのだ。

あそこに行く?…いや、行った所で、という様な思考が浮かんでは消えていく。


「はぁ…」


何て思考とも呼べない思考をしていると


バスが到着し、ガコッという音と共に扉が開く。

バスの中は誰も居らず、空いている。

運転手さんに一瞥し、一番奥の席に座る。


「…」


バスの後方の進行方向から見て右側、横に長い椅子に座り、耽る。


花や教師陣から指摘のあった『やる気の欠如』。

理由は大方分かっているつもりだ。

しかし、『私』にはどうすることもできない…という『建前』を作り言い訳する。


そりゃ友達や教師達に『思い人が居ないからやる気が起きません』、何て大見得を切る度胸は私には無い。


『次は〜戌達(いぬずれ)戌達(いぬずれ)〜、お降りの際はお手元にあります、ボタンをお押し下さい』


自宅付近に着いたので、ボタンを押しバスから降りる。

結局、先輩が帰って来るまで、私は何も出来ないんだ、『将来為になる』や『いつか役に立つ』など自分を鼓舞しようとしても、どうしても身が入らない。


「ふわぁ〜…」


今日もこうして、1日が終わる。

無駄に学園へ通い、授業を聞き流し、時間を浪費する。


「あーあ、先輩明日とか急に帰ってきてくれないかな」


淡い期待を持ち、私は帰路につく。

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