北条光〜拾壱〜
「何ですか…天童先輩」
「んー?いや、つまみが無くなったから買いに来ただけ」
「本当ですか?」
あまわらべ…?天童!?
聞き覚えのある苗字、そして余り「良い」噂を聞かない人。
「せ、先輩!天童ってあの天童先輩ですか!?」
「ん?まぁ多分な」
「超大物じゃないですか!?」
先輩とこんな悪い意味での有名人にどんな繋がりがあるかは知らないが
忠告しておかないといけない。
「先輩、ちょっとこっちに」
「ん?なんだよ、てか引っ張るな」
先輩に近づき、小さな声で話す。
「先輩、悪い事言わないですから、あの十傑と弛むのやめた方が良いですよ」
「…色々事情があってな」
「何でも人を食べるとか聞きましたよ?」
「いやー?あんま美味しくないんだよねー」
「!?」
ほ、本当なんですね…あの噂って…
学園の問題児、『十傑』。
その中でも『特に』問題児なのがこの人、天童さん。
「いや、近しい物は食ったことあるけど、もう良いかな」
「あ、あはは」
「そういやつまみ買いに来たんじゃ無いんですか?」
「ん、あと伝言」
伝言?先輩何かやらかしたんですかね?
まぁ、私は余りそういう問題行動等は起こしてないので怖くないですね!
「響」
「…はい」
「"お嬢"からの命令、話を聞き次第来い、とさ」
お嬢?確か三年生にそう呼ばれてる人が居るとは聞きましたが…
その人?が先輩に何か様ですかね?
「用事が終わってからでも良いですか?」
「知らん、俺お嬢じゃ無いし」
「知らんって貴方ね…」
良かった先輩はそのお嬢?よりも私の用事を優先してくれるんだ。
…何か嬉しいな,。
「…まぁ、あんまり遅れんなよ?」
「はい」
「そういえば…」
「んー?」
「学園の、三年生ですよね?」
「おう」
「"つまみ"ってのは、何ですか?」
そう、『つまみ』。
学園三年生…まぁつまる所の高校三年生の年齢。
お酒とは無縁…の筈。
「あ?あー親父の酒のつまみって事」
「親父さんの?」
「そーそー、『赤い月』で活躍しただかなんだか知らんけどさ、自分の子供パシリに使い始めたら終わりだよねー」
先輩と私は苦笑い。
心の中で「早く帰ってくれないかなぁ」とか考えていると、不意に
「然ー!」
男の人が怒鳴り、此方にやって来る。
歳は凡そ四十半ば、発言からして誰かを探して居るらしい。
「ヤベェ親父だ!」
「へ?」
「悪い、またな!」
そう言って、天童先輩は走り去って行った。
「何というか、嵐みたいな人でしたね…」
「もう慣れっこだけどね…」
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気を取り直して先輩と帰路に着く。
「…」
「…」
車椅子の動く音と靴音が辺りに響く。
私も先輩も、何も話さない。
「…」
「先輩」
話を切り出したのは、私だった。
「来週迄にはお金、返してくださいね」
「…分かった」
あの後、仕方ないので私のお金を出して買い物を済ませた。
結構痛い出費だけど、まぁお金は『結構』あるしまだ平気だ。
…流石に何千万とかとなれば話は別だけど。
「先輩」
「ん?」
「今日はありがとうございました」
「…」
「自分の不注意で車に跳ねられて、病院送りになって、一方的に先輩を恨んで、妬んで、嫉んで。
私が全て悪い癖に、『本当に才能のある』先輩を羨んで、勝手に目の敵にして、結果こんな様ですよ」
先輩は全く悪く無いのに、ほぼ嫌味と取れる様に口が動く。
感謝はしているが、何分人からの『そういう物』を余り受けた事が無いから…何てのは言い訳か。
「…何つうの?」
「?」
「俺も、周りには『天才』ばっかでさ、『何でこんな時に生まれたんだろうなぁ』ってよく考えんのよ」
嘘だ、先輩で落ちこぼれなら私は…
「先輩」
「んー?」
私は"何故か"不安に駆られ、『そんな事ある筈無いのに』口が動いた。
「私を置いて行かないで下さいね」
もう、私は先輩に依存しかけていた。




