北条光〜漆ノ壱〜
本日は二本投稿でございます。
朝。08.00時。
先輩を見失い、とぼとぼと一人寂しく歩く。
あの女性…とても綺麗だった。
高嶺の華って感じで、少なくとも『先輩』なんかじゃ絶対に釣り合わない様な。
(あれが…先輩の…)
多々良凛。ここ最近急に先輩との仲を良くしている先輩の『幼馴染』。
先輩の過去を色々と知っていて、女性不信の先輩が唯一しっかり話せる存在。
…そして先輩に一番『近い』存在。要注意。
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朝。08:30時。
途中、花と合流してたわいもない話をする。
「そういやさ」
花は突然舵を切った。
「私彼氏出来たんだー」
「へー」
誰だろう?私の知っている人かな?とか考えながら聞いていた。
でも、聞かなかった方が良かったかもしれない。
「それもね先輩なんだー」
「…へー」
胸の中に一抹の不安がよぎる。
『聞いたら後悔するかもしれない』なんて考える。
「写真もあるよ…これ」
「へー…へ!?」
そこに写って居たのは先輩だった。
恥ずかしそうに目線だけ此方を向く先輩。
「…」
「でさー…」
何も耳に入って来なかった。
花の言葉も、風の音も、車の走る音も
信号の音も。
何かが体に当たり、宙に浮く。
花の絶叫と共に意識は暗闇へと落ちていった。
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「全治三ヶ月です」
「そう…ですか」
医師から告げられたのは残酷な現状だった。
足、腕の骨折、靭帯損傷という物。
フィクションやテレビの中でしか無いものだと思っていた。
「そしてその三ヶ月ですが『絶対安静』です」
「はい…」
今の私は『学園に通えない事』より『先輩に会えない事』の方が辛く感じている。
「それで──」
(早く終わんないかなー)
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「光!?大丈夫だった!?」
いの一番に来た面会人は花だった。
『あんたのせいだけど?』なんて事は口が裂けても言えないので顔を『作って』話す。
「いやー、キツイね」
「ほんと?、なんかあったら頼ってね!」
頼る…ね。
「大丈夫、でも何かあったら頼りにさせてもらうね」
「うん!任せて!」
「早速だけど…さ」
「なぁに?」
「先輩といつから付き合ってるの?」
沈黙が流れる。
花は面食らった様に固まっている。
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やほー。あたし所沢花。青春を謳歌する神園学園一年生!
そんなあたしだけど今、人生最大のピンチに陥ってるの!
「ねぇ答えてよ」
こっちのベッドに寝てるのがあたしの友達の北条光。
入学式で知り合ってそっからって感じ。
「早く」
今現在私は光に詰められています。
空気が重っ苦しくて、息もままならない感じで。
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これまでの経緯を説明するとこんな感じ。
私彼氏できました。
↓
写真も見せました。
↓
何故かボーッとしてた光に車が追突。
↓
病院で目を覚ました光に詰められる。←イマココ!
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「いやあのですね…」
「うん」
怖いよ、齢16のして良い顔じゃ無いよ!
これあれだ蛇に睨まれた蛙ってやつだ。
「その…」
「…」
もはや沈黙が怖いよ!
何?この子ほんとに16なの?何かもう貫禄?的なものが凄いんだけど!
「えっと…」
「私、気長い方じゃ無いんだ〜」
要約、早く言え。
「見せる写真を間違えました!」
猛スピードで土下座する。
多分これで助かるはず。
「…」
「ひ、光?」
顔を上げ光の方を見る。
「…私何か勘違いしてたわ」
「へ?」
『はー恥ずかし』なんて言う光を横目に、私は朝見せた写真を探す。
…これだ。
ん?、待てよって事は?
ピキーン!
私の中に一つの解が浮かぶ。
それを口に出し、光に問いかける。
「光さぁ」
「何ー?」
「この人の事好きなの?」
お詫びと訂正。
話の数付けが間違っておりました。