赤く、黒いお話。
実験結果No.486
実験体α、θ、■を構成する物質について。
■■研究員の発言、報告書によれば、αは肉、それも人肉に近い物質をチグハグに繋ぎ合わせたよう。
θは泥の様な炭が意思を持ち、それが絶え間なく溢れ出しているようだと。
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実験報告書No.52
実験体αに混髄するエッセンスについて。
実験体αを発見し、その肉体を調べていくうち、興味深い事象が見受けられたので、ここに記す。
■■所属 ■■博士
■■研究員:■■博士、ありもしない空想を報告書に書きこむのは楽しいでしょうが、他の人員の迷惑になります。お辞めください。
■■博士:あれが嘘であるものか。私の方こそあれが嘘であってほしいと願っているよ。
以下、研究員と博士の口論の記録。
実験結果No.523
あれは、完成された生命だ。
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黄色蛍光灯の部屋群を探索中、ずっと何かに見られている様な視線を感じる。
酷く粘ついた、近い表現が思い浮かばないが、偶に凛から感じる雰囲気に似ている。
辺りを見渡しても、人っ子一人居ない。
当然だ、なんでもここは二十年以上前に人が居なくなっているらしいからな。
それから出入りがないのはめちゃくちゃ開きづらかったあの扉が物語ってるだろ。
「…音も、止んだな」
やはりあの機械箱の音だったのだろうか。
酷く嫌な予感を纏いながら、俺は螺旋階段へと足を向ける。
螺旋階段に向かい、足を踏み出した瞬間、俺は、俺の首が飛ぶ景色を見た。
酷い悪寒が背中をつたい、酷く息苦しく、肺に酸素が入って行かない。
なんの心音も聞こえないのに、“確かにそこに居る”。
絡繰のような駆動音も無ければ、生物特有の筋肉が動く音も無い。
なにが、何が居る?
思考を止めずに考え続ける。
術は効くだろうか、そも今俺は術を使えるのだろうか。
効いたとして豆鉄砲でないという保証は無い。
効いたとして、それが更に何かを煽る結果になるかもしれない。
そも、全速力で逃げれば追い付かれないんじゃなかろうか?
一か八か、賭けてみようか。
俺の、今出せる最高の全速力で、この予感を振り切ってやろう。
「…“音乗り、早駆け”」
自ら周囲一寸にも満たない距離に、音の膜を張り、俺自らを音とする術。
音速は限られた場所でのみ時速三百粁を超えるらしい。
つまり、奴さんがどれだけ速かろうと、音より速い訳がない。
そんな物、俺は雷くらいしか知らん。
とっ、と。
一歩目を踏みしめる。
螺旋階段までの距離は約四百米程。
それなら
「──ほっ」
二歩で行ける。
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悪寒とを引き離し、螺旋階段を降る。
十分ほど降ると、壁に大穴が開いていた。
そして、更に下へと続く螺旋階段に、生肉を引き摺ったような跡がこびりついている。
「…俺、ここ入るの?」
恐怖という言葉が軽く思えてしまうほど、俺の心臓が早鐘を打っている。
今すぐにでも引き返したい。
できる事なら全速力でここを抜けて家に帰って寝たい。
そもこんな所に一人で行けとか狂ってるだろ。
愚痴をどれだけ言おうと、悪態をどれだけ吐こうと、時間がただ無常に過ぎ去るのみで何も起きる事はない。
大穴が開いている場所。
その真上に、赤い蛍光灯がその危険度を示すように煌々と輝いていた。
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ずる…ずる…
「──“ruberino”jhgzrtmcz,」
「“nigurana”ijtbtijcvsj」
「…vzszrghszshgzjzhatstmzmcz.hlzrzqznrnhmczxn」
「──」
「──tpsfefnp.わubしibljobuublbsb」
──────────────────────
※実験結果523は改竄された形跡があります。
修復には以下のクリアランスを──