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妖蔓延る世界のお話。  作者: 書き手のタコワサ
妖蔓延る世界のお話。対校戦準備編
188/236

見送り式

 鳴渡が療局の絶対安静から復帰した後、学長の招集により五人は一堂に集められた。

五人とは先の対校戦を戦った者たちであるが、その大半が浮かない顔をしていた。

それもそうではあるのだが。


「…どーしよ、こうなったらええ噂聞かへんしなぁ〜」

「いい加減、アタシも腹括るかぁ…」


三年生の二人は頭を抱え。


「ど、どうしよ空宮さん!わ、私死んじゃうのかな!?」

「──さぁ、分かりません」


一年生の二人は互いに不安を打ち消し合うように話し続ける。


そんな中、対校戦を荒らしに荒らした張本人である、鳴渡響はというと。


「…」

あったまいてぇ〜。


狭い室内に反響する声からくる頭痛に悩まされていた。

元より人より何倍も耳のいい傾向にある音使い、その中でも一際耳がいいとされる鳴渡にとって、この空間はまさに地獄と言って差し支えないのだ。


「…てか」


どうにかこの地獄を終わらせようと、鳴渡が話題を作る。


「全員生きてたんですね」


…それは話のつかみとしては最悪のものだった。

鳴渡が発したその一言は、確かに鳴渡の思惑通りその地獄を終わらせた。


だが、鳴渡が想像にしていなかった、さらなる地獄が大口を開けて待っていたのだ。

鳴渡は自ら其処に身を投じたのだが。


「──ええ、大変楽でしたよ。“鳴渡先輩”」


錆びついたブリキ人形のように首を動かしながら鳴渡を見る空宮。

室内温度を二度は下げる言葉と、冷たい雰囲気に鳴渡は勿論他三人も静かになった。


「──そ、そういやさ!鳴渡クンのあの姿詳しく知らないんだけどさ、何かあるの?」

「え?い、いや…なんと言うか…」


興味深々な顔で鳴渡を見つめる葛原と七倣(ふたり)

葛原は“先輩を助けたんだから教えてくれますよね?”と。

七倣は“先輩の言う事聞けないわけないよね?”と。


それぞれが相応の思惑を持って、鳴渡ににじり寄る。

鳴渡が咄嗟に二人から顔を逸らすが、視線の先に居る人物は既に他所を向いていて、こちらには興味もなさげだった。


「…おー怖。鳴渡もかーわいそー」

「──…一度、馬にでも蹴られればいいんじゃないんですかね」


我関せずを貫き通す二人と、聞くまで帰らない、聞くまで離さないを体現する二人。

鳴渡が壁際に追い詰められ、遂に逃げ場がなくなった時、学長室の扉が開いた。


「いやーごめんごめん、先月の電気代払って無くてお金払いにいってたらすっか…り…?」


学長室の扉を開けたのは他でもない学長の秋元充だった。

が、その秋元の目に飛び込んできたのは、耳と目を塞いだ水曲と空宮。

先の四学園学長会談でも渦中の人間だった鳴渡に詰め寄る七倣と葛原。

そして、学長室の隅にて頭を抱えてうずくまっている鳴渡。


「…ごめん、どういう状況?」


──────────────────────


 「葬式?」

「そう」


 先ほどの鳴渡に詰め寄っていた二人をどうにか仲裁した後、早速秋元は椅子に座り、本題を話し始めた。


煙草を吹かしながら話す秋元に、二人は顔を顰め、一人は慣れているとばかりに余裕そうに、残り二人は反応を示さずに聞き入っていた。


「…先の対校戦、沢山の死者が出た。その全てに対して、一対一で送り出す事は難しい」


そういう秋元の目はいつものようなおちゃらけた雰囲気は一切無く、まさに真剣、という表現がぴったりだろう。


「だから、その全ての遺骨や遺品を集めて、せめて安らかに彼彼女らが眠れるように、弔ってあげるのさ」


そういうと、秋元は五人に書類を渡す。

各五枚ほど配られたその書類には、亡くなったであろう人の名前が書いてあった。


五人がそれぞれの書類に目を通す中、見ながらでいいから聞いて欲しい、と秋元が話し始める。


「…対校戦で敗北した君らには辛い事かも知れないけど、言っておくよ」


襟を直し、椅子に座り直す秋元のその行動に、学長室の雰囲気がどこか張り詰める。


「──君たち、葛原十音(くずはらとね)空宮空形(そらみやからなり)鳴渡響(なりわたりひびき)水曲源足(みずくるみなたり)七倣真(ななならまこと)。その処分を伝える」


書類を見ながらも、内容が頭に入る訳もなく。

十音は戦々恐々とし、空宮はどこか達観したように。

鳴渡は平静を装ってこそいるものの、書類を持つ手が震えている。

水曲は書類から目を外して項垂れ、七倣は普通に書類に目を通していた。


各者各様の反応を見せる中、秋元が口火を切ろうとした時。

ものすごい音を立て、学長室の扉が思い切り蹴破られた。


扉は綺麗な弧を描き、鳴渡の後頭部に直撃すると、その直線上に座っていた秋元に飛んでいき、秋元は躱しきれずに掠る。


「──秋元てめぇ!私の可愛いせい、とに…?」

「弁財先生落ち着いて!あの秋元さんに限ってそんなわけないでしょう!」


扉があった場所に現れたのは、恐らく扉を蹴破ったであろう張本人弁財紫煙と、恐らくは弁財を止めるために行動していた佐久間先生が居た。


「──ってぇ…」

「──すごいねぇ、星が見えるってのは比喩じゃなかったんだ…ねぇ」


秋元、鳴渡の両者が気絶し、その場はうやむやとなり、お流れとなったが、その後一週間ほど鳴渡は来るはずもない殺し屋に怯えていた。

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