多々良凛〜拾伍〜
「…」
静寂が場を支配する。
1分、1時間にも感じる時間が過ぎる。
「俺は」
「!」
「あんま強く無いし、甲斐性もあんまり無いし、我が身が一番可愛いし、…ちゃんとお前を愛せるか分からないけど」
響は一息置き、整えた後
「こんな俺で良いなら宜しくお願いします」
ああ、やっと…
「グスッ…うぐっ…えぐっ…」
「な、何か駄目な事言ったか!?」
全く、鈍感なのかわざとなのか分からないじゃない。
「五月蝿い、ばか」
でも、
「やべぇ、何か地雷とか踏んだか!?」
慌てるコイツを見るのは楽しいから良いか。
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-物陰-
「しゃあ!告ったぁ!」
「はしたないですよ、雀蜂」
まぁ気持ちは分からないでも無いですが。
「だって風丘様!やっとですよ!」
「えぇ、そうね」
でも何か嫌な予感がするのよね。
「まぁ良いか」
「何か言いましたー?風丘様ー?」
「いいえー」
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「…落ち着いたか?」
「グスッ…ありがと」
コイツの前で泣いちゃ駄目じゃない。
可愛い『多々良凛』で居なきゃ。
「にしても」
「?何よ」
「涙脆いのは昔と変わんねぇな」
「そ、そんなに脆かったかしら?」
身に覚えが無いわ…
「昔、まだ餓鬼だった頃『捨てられた』ってガン泣きしてた
じゃねぇか」
「そ、そんな昔の事なんで覚えてないわ!」
「そうか?」
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『まもなく当園は閉園となります、忘れ物等ご確認下さい』
何事にも終わりは来るものだ。
この楽しい時間も終わる。
「それじゃあな」
嫌だ。
「待って!」
声が先に出た。
「ん?」
「その…さ、最後なんだし、その…」
覚悟を決めろ私!
「ハ、ハグ位はしてくれても良いじゃない!」
「はぁ?」
あいつは『何でそんな事を?』という顔をしている。
「そ、そんなだから「はい」ぴっ!?」
い、いいいいきなり!?
「い、いきなりするんじゃないわよ!」
「俺にどうしろと?」
し、心臓バックバクよ。
「改めて、またな」
「え、ええ。またね」
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-物陰-
「あー!!凛様日和った!」
「こらこら」
お口が悪いですよ…ん?
「雀蜂」
「はい?」
「誰か来ます、隠れますよ」
「御意!」
私達に気づく?相当な手練ですかね?
「この辺で声がした筈なんだけど…」
「「!!」」
これは、響様ですかね?
「…気の所為かなぁ?」
ふぅ…バレませんでしたね。
「雀蜂」
「はい」
「引き上げますよ」
「御意!」
これは報告しないといけませんね。