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妖蔓延る世界のお話。  作者: 書き手のタコワサ
妖蔓延る世界のお話。対校戦準備編
164/209

開幕、真対校戦。

 釘刺と空見と開催地の下見に行き、何日か経過した後の日、訓練疲れで夢すら見れないほどにぐっすりと寝ていた。


 深夜、日付が変わり、三十分程たった頃。

ドンドン、という戸を叩く音で目が覚めた。

寝ぼけ目を擦っていると、鍵が開く音がやけに鮮明に聞こえた。


「…鳴渡、響様ですね」

「……」


 弁財先生に教わった事で、術士間、若しくはそれに準ずる人達には、安易に本名を答えてはいけないらしい。

それ(名前)を悪用され、何か呪いを掛けられる可能性があるらしい。


「──あ、そうでしたね。…表の表札に書いてありますから、貴方を“鳴渡響”と仮定して話します」


すぅ、とその人は息を整えた後、捲し立てるように話し始めた。


「お迎えに上がりました。鳴渡響様。本日午前四時より開始となります、“対校戦”の準備が整いましたので、開催地へとご案内いたします」


さ、どうぞ。とその人は部屋の外に指を刺す。

よく見れば、何か車の様なものが止まっているのが見える。


 え、てかこんな深夜に出発するの?

開催時刻とか全く聞いて無かった俺に落ち度があるのか…?

なんかこう…もうちょっと遅くというか、せめて五時とかだったら楽だったのにな。


「…あの、どうされました?」

「うぇ!?あ、あの、き、着替えるので…」


俺がそう言うと、その人はハッと口を抑え、慌ただしく部屋を出ていく。


時計に少し目をやると、針は三と五を指している。

この間釘刺達と下見に行ったあそこで、他の校の奴らと戦う。

…恐らく。

ま、普通に戦闘でしょ、突然きのこ狩りと言われても分かんないし。


制服に足と腕を通し、顔を叩く。

気合いを入れるのと、未だ寝ぼけている自らを文字通り叩き起こす為に。


「…よし」


琥珀腕もいつもより輝きが増して見える。

動きのズレも少ない。

これなら、戦える。


ふう、と息を吐き、意を決して扉を開ける。

殺される事は無いにしろ、瀕死の重傷を負ったり負わせたりするかも知れない。

なのに。

なのに、不思議と恐怖はない。


「お待たせしました、行けます」

「…はい。ではこちらへ」


案内されるまま車に乗り、走り出す。

辺りの景色が横に流れるのを見ながら、色々と思考を巡らせる。


まず、何故こんな夜間なんだ。

いまだに少し眠いぞ。


「…会場に着いたら起こしますので、寝てもらっても構いませんよ」

「…だ、大丈夫です」


──────────────────────


 片町約二時間の走行を終え、例の森に着く。

森はあの日来た時には無かったような、何か別の悍ましさの様なものを出していた。


「…夜に来るとより一層暗いな」

「せやね。こっからここで戦うんか」


後ろを見ると、片手をあげてケラケラと笑う水曲先輩が居た。

もう少し後ろを見ると、何やら和気藹々とした葛原さん、空宮さん、七倣先輩が居た。


「あんな、“女子会に男は御禁制じゃ!”って言われて爪弾きもんなんや」

「それは、お気の毒に?」


泣き真似を披露する水曲先輩に、少し慰めようと一瞬考えたが、これでいいのだろうかと踏み止まる。


「──鳴渡先輩」


呼ばれた方に顔をやると、そこには空宮さんが居た。

やっぱり名家の人は和服に似た制服が似あう──っ!?


突如、体を謎の悪寒が襲う。

辺りを見渡しても、俺たち五人以外の影すらない。

全身が寒気立つ。


「──先輩?」


返答が無いのを心配に思ったのか、空宮さんが俺の顔を覗き込む。

それに比例するように、又悪寒が俺を襲う。


「…ご、ごめん。ちょっと後にして…」

「──…はい」


そういうと、空宮さんは俺から離れていく。

すると、謎の悪寒も綺麗さっぱり引いていく。


この悪寒の正体は、とか考えているうちに、どうやら他校の人達も揃ったらしい。


情報とかは無いのだろうか。


──────────────────────


「──居た。見つけた」

「…樹咲。何かお目にかかるもんでも合ったか?」


──────────────────────


「彼が、鳴渡」

「咲巳!早くこっち来なさい!」


──────────────────────


「…」

「どした?九郎」


──────────────────────


のちに、この夜のことはこう伝わる。


『四学園、その最大の失態』

『蛇の夜』と。

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