■■の者
初めての感想を貰いました!
やっぱり今見ると序盤の話は短かったりしますね…。
「げほっ、おえっ」
「──先輩、水です、ゆっくり飲んで下さい」
未だに過呼吸気味の鳴渡クンを、空宮ちゃんは必死にみている。
鳴渡クンの口から飛び出した黒い粘体は、何処かへと消えたけど、その存在は結局分からない。
空宮ちゃんはあれを神と読んだけど、生憎私には分からない。
そも、“昔”は沢山の神が居たらしいが、今は“神崩れ”の妖共ばかり。
歴史を漁った事は幾度も会ったけど、神については何を見ても濁されている。
神ノ国最古の組織、“天照の燈”。
術はそこから始まったと様々な歴史書に刻まれている。
それ以前に術は無かったのか?そんな疑問を幾つも思った。
「…分かんないねぇ」
ソラを見ても、答えは無い。
流星群の予報は無いのに、星が降っていた。
夕焼けも西の空に消えかけた頃、漸く鳴渡クンが過呼吸から復帰した。
「…もうなんか、慣れてきました」
「聞いてるよ。色々あったらしいからね」
具体的な事は何一つとして知らないが、隠せる情報なんてたかがしれている。
何処からともなく情報とは漏れるもんだ。
「…で、空宮ちゃん。その…よるみのおおかみ?ってのはなんなの?」
この場、今意識がある者の中で唯1人押し黙っている空宮ちゃん。
先程アタシに教えたように、彼女だけがこの場であれの正体を知っている。
「──夜見ノ大神。…今現在、神ノ国にこの名前を知る人は余り居ません」
恐る恐るといった様子で、空宮ちゃんはその名前を口にする。
やはり聞き覚えがない名前で、そんな神なんて居ただろうかと考える。
「──簡単に言えば、夜見ノ大神は呪いの神です。今神ノ国に伝わる三神、それを産んだのも夜見ノ大神と聞かされています」
「…三神っていうと、あの…えっと」
「──真名は伝わって居ませんが、俗にいう“狐”、“鬼”、そして全く不明の一柱。その三神です」
──────────────────────
空宮ちゃんから聞いた話は、どこか浮ついて居たというか、固まっていないというか、まあ確かに神話なんてそんなもんか。
創世の話。
朝呼ノ大神と夜見ノ大神…そこから生まれた“太陽を総べる狐の神”、“闘いを司る鬼の神”、“夜、そして判らずを識る刀の神”。
はっきり言って、聞いたことが無い内容だった。
アタシが聞いた時は、最後の三柱目は不明とされていた。
「──というのが、神ノ国の創世期の内容です」
「へー、知らない事ばっかりだったわ!」
「で、なんでそんな畏れ多いのが鳴渡クンの中に?」
「…んなもん、俺が知りたいくらいですよ」
ぶっきらぼうに投げ吐く鳴渡クンは、確かに目の下に隈ができていた。
色々と検査させられているのか、疲れも見てとれる。
そも、又聞きにした話とはいえ、本当に彼の中にそんな物がいるのだろうか。
空宮ちゃんを疑う訳ではないし、言い方も悪くなるけど、彼の中にそんな大層な物があるとは思えない。
「…ちょっと抉っちゃうけどさ、鳴渡クン、あんまり強くないじゃん?そういうのが中に入ってるとは信じらんないんだけど?」
「…結構抉ってきますね」
「…そもそも、それに関しては俺も分かんないんですよ。色々と学長から言われましたけど、それこそ荒唐無稽っていうか」
鳴渡クンは困ったようにそう言う。
彼自身ですら、自らの内に居る物の正体を知らなかったんだろう。
そんな意味のわからない物の詳細なんて、知る由もないだろうし。
「そんなもんかぁ〜。アタシだって自分の術どこまで何が出来るかしらないし」
「──それとこれとは違う気もしますが。まぁ、良いでしょう」
空宮ちゃんが呆れたような目でこっちを、いや、あの目は完全に呆れている目だ。
やめて!そんな目で見ないで!せめて見られるなら尊敬の眼差しがよかった…後輩からの、それも空宮ちゃんからの視線が痛すぎる!
「…そう言えば、空宮…さんと七倣先輩が口が堅い事を信じて聞きますけど、今回の、その俺の変化なんですけど、髪の色とか変わってました?」
「いや?ちょっと長くなってたくらい?」
x始めました。
書き手のタコワサ でご検索ください。