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妖蔓延る世界のお話。  作者: 書き手のタコワサ
妖蔓延る世界のお話。対校戦準備編
150/209

神対■

 それは、何千年にも渡って続いた、一つの歴史の転換点だった。

“神”対“鬼”。

高天原は真っ二つに分たれた。

一つは、天津狗ノ大神率いる総勢八百万を超える天津神。

片や、夜見ノ大神が創りし、五千の“禍津日神”。


 この物語は、主に三つに別れ語られている。

一つ、天照大神とヒノミノカミの戦い。

一つ、素戔嗚尊とオオタケノミコトの戦い。

一つ、大国主神とクニクイノカミの国取り戦。


一説では夫婦喧嘩とも言われているこれは、ことの発端は“地上に沸き出た一滴の闇”からだった。


ある日、一柱の神が二柱に具申した。

“何処からか、この国に暗雲が届いている”。

日頃その神は嘘をつく事は無かったが、二柱の神は笑っていた。

曰く、“自らが作った国に闇があるものか”。

曰く、“そんな迷い言をぬかすな”。


その時より、現在時間換算で二百年ほど立った時。

夜見ノ大神は黄泉の国に引き摺り込まれ、闇と同化し、天津狗ノ大神はそれを救いに行こうとするも、後一歩届かず片腕を喪った。

その片腕と黄泉の力を媒介に、夜見ノ大神は何千ものカミを作った。


天照大神に対抗できる様に、太陽すら呑み込むカミを。

素戔嗚尊に対抗できる様に、硬く力強いカミを。

大国主神に対抗できる様に、国を乗っ取れる強大なカミを。

それ以外は、怖くない。


私を黄泉に堕としたあの(オトコ)を、殺す為に。


──────────────────────


 総数万を超える神と、百を超える龍の衝突。

それは天を割り、地を裂く衝撃となった。


始めに、神の方に死が訪れた。

人を媒介に広がる疫病の様に、死が神を包んでいた。

死を払える神はおらず、天津狗ノ大神神が一息に死を吸ってみせた。

カミはそれを知ると、さらに死を撒いた。


本来、神は死なない。

“死”という概念が、そもそも存在しない為だ。

が、唯一死と言っても良いものがある。

それは、“消える”こと。

記憶から、体験から、何もかもから“消える”。

忘れられ、信仰も無くなり、“存在していた”という証拠すら消える。

それに防ぎ用は無く、故に、天津狗ノ大神は消え掛かっていた。


 そして、この好機をカミ達が逃すわけもない。


天津狗ノ大神が弱っている。

その報が夜見ノ大神神の耳に入ると、夜見ノ大神神は力を振り絞り、三つのカミを創った。


ヒトハシラ()は、後にヒノミノカミと呼ばれるモノ。

フタハシラ目は、後にオオタケノミコトと呼ばれるモノ。

ミハシラ目は、後に ■ ■ ■ ■と呼ばれるモノ。


この三つを持って、天津狗ノ大神神を殺さんと、夜見ノ大神は嗤った。

蛆に塗れた体を起こし、この体(わたし)を見て青褪めた天津狗ノ大神(あいつ)を嗤ってやろうと。


──────────────────────


 高天原は地獄と化していた。

太陽は飲み込まれ、辺り一面が闇に包まれている。

月すら無い夜の闇では、月読神も真価を発揮できず、ただソラを見上げていた。


 素戔嗚尊は苛立ち、所構わず暴れ回った。

辺り一帯にその暴力(ちから)を振るい、神もカミも関係無く潰し回っていた。


 天照大神は困惑していた。

何千年と続いた安寧が、音を立てて崩れて行くのを、目の当たりにしているからだ。

自らを天岩戸から引っ張り出してくれた天細女命も、天手力雄命も、皆闇に飲み込まれてしまった。


 “キリがない”。

闇から現れる存在に、辺り一面真っ暗なのだ。

延々と湯水の様に湧き出る存在に、神たちは疲弊していた。


 やがて、八百万を超える神が八百程になった時、突然、ピタリとカミ達は消えた。

高天原より天上で、天津狗ノ大神尊と夜見ノ大神の一騎打ちが行われたからだ。

夜見ノ大神命は天津狗ノ大神を殺さんと、解き放った闇をその身に取り込み、自らを巨きな闇と化した。


──が、それが敗因だった。

大きく膨れ上がり、最早夜見ノ大神命とはとれない程に変わったそれは、万物を闇で濡らし、時すらも闇に引き摺り込む■。


ヒノミノカミは太陽を飲み、オオタケノミコトは素戔嗚尊を抑えている。

 ■ ■ ■ ■は今、もう少しでこの世を支配出来る状態にある。


 現代で言うところの、鈴虫が鳴く夏の夜、神ノ国を創りし二柱の神が、全霊(うつしよ)をかけ、唯殺しあう。


片や、堕ちた妻を救う為。

片や、見捨てた夫を殺す為。


神ノ国最古の殺し愛。

神ノ国最新の呪い愛。


一柱の神と、一■の■。

歴史の中には残されない、“■■された”歴史。

真っ黒に塗り潰された、まさに“黒歴史”。


今の神ノ国の者は知る由もない、大昔のお話。

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