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妖蔓延る世界のお話。  作者: 書き手のタコワサ
水泡霜霧ノ物語
127/208

水泡霜霧 其の陸

わるい、ゆめをみた。

わたしはなにもわるくないのに、おおぜいのにんげんがわたしにむかっていしをなげるんだ。


そのうちいたみすらもかんじなくなって、このまま死ぬのかなっておもったんだ。

そうしたら、ひとりのおとこがやってきて。


“おまえをかいほうしてやろう”って。


───────────────────────


「…」


暗い、暗い部屋。

照明の一つでもつければいいのに、この雰囲気がいいのか誰もつけようとしない部屋。


十傑が一堂に介し、その日起きた報告や、一週間の内に起きた事を報告するだけの会。


けれど、開口一番に話し始めた室呂くんの言葉で


      この場は戦慄に包まれた


「…腕が持ち去られた」


十傑の内の数人が、目を剥く。

“腕”に関しては、それそのものに価値がある訳でもなく、“誰の腕”というのが大まかな価値を決める。


つい先日入ったあの妖が居なければ、私はここに来ていなかっただろう。


「…持ち去られたっちゅうのは、彼のか?」

「そうだ。“音使い”の腕が持ち去られた」


炎使いとか、岩使いとか、そいつらは変えが効く代用品として扱われることが多い。

が、音使いは別。


彼らの術士発動の引き金となるのは、大体が腕。

腕がなければ術を使う事はおろか、戦う事も儘ならない。

そして最悪なのは、“音の力は腕に滞留する”という事。


ここから分かるのは、普段ならば流す様な腕の持ち去りも、“音使い”のとなれば話が変わるという事。

そして、明らかにおかしい“人型”の妖の出現。

狙った様に音使いの腕だけを切り落とし、持ち去った事。


「…報告は以上だが、くれぐれも人型の妖、若しくは武器の様なものを提げた妖には注意してくれ」

「…一つ、言っておく事がある」


普段は口を開かない十傑第一席様が口を開く。

必然的に、十傑ほぼ全員の意識が第一席に向かう。


「少しの間、諸外国に遠出する事になった」


二位はつまらなそうに、稲月、室呂は頭を抱えて。

風間は興味津々に、白園、翠泉は興味なさげに。

越中はいつものか…と言葉を溢しながら、天童は心底どうでも良さげなのを隠しながら。


「…神ノ国は任せた」


十傑の半数がため息をどっと吐く。

そんなことを意にも介さずに、神無月は部屋を出る。

彼女が部屋から出たと同時に、また半数がため息を吐いた。


越中が言った通り、何もこんな事は珍しくない。

しょっちゅう学園を空けるし、国内の妖を討祓する方が珍しいくらいだ。


そんな彼女が第一席に座れているのはひとえに強さのお陰だが…これは関係ないか。


「…そういや、響くんはどっかにいんの〜?」

「…療局に入っとる。面会は出来んけどな」


まぁ確かに、今までの生命線とも言える腕を失ったんだ。

他人に会える心持ちでもないだろう。


「ふ〜ん…」


それだけ聞いたら十分とばかりに、天童は背もたれに寄りかかった。

他の面子はというと、興味がないのか薄情なのか、彼に関しては静観を決め込む様だ。


彼には秘密に、会いに行こう。

病室で、二人っきり。

恋愛漫画の花役みたいに、看病なんかしようと画策しながら。

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