表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖蔓延る世界のお話。  作者: 書き手のタコワサ
水泡霜霧ノ物語
122/236

水泡霜霧 其の壱

彼と初めて会った時、なんか、正直あまりいい印象は無かった。

弁財先生の推薦って事で十傑の合同訓練に参加したけれど、あまり強く無かったし。

室呂くんが何も言わないって事はまぁいいんだろうけど。


特に面白くも無かった。

いつも通りやる必要性を感じない事やって、術力等が落ちてないかの確認を済ませるだけだった。


室呂くんから何度も注意されたけど、全然効いてない。

うん、効いてない。

決して目尻に涙とか浮かべてない。


それから、件の推薦くんとやる事になった。

彼が扱うのは見た事の無い術ばかりだった。

空間に飛ぶ、振動の線。

威力はまだまだだったけど、やっててとても楽しかった。


その後、体良く神無月対推薦くんの一戦が始まった。

まぁ結果は皆まで言うなって感じだったけど。


話しは変わって、そこから約一ヶ月が経った。

彼は色々あったけど順調に妖を祓えている様で、私も鼻が高い。

術力の操作霊力の効率いい取り込み方…等教えた事は結構役に立ってると思う。


“形だけ”とは言え十傑第四席に座っているせいで、あまり会えないのが玉に瑕。

まぁ彼も結構時間を作るのが難しいらしいし、仕方ないかぁ、とも考えている。


私の術はと言えば、空中に泡沫を浮かす程度。

それ以下でもそれ以上でも無い。


こんな物のせいで、碌に前線には出れないし。

かといって何か医療に精通してるわけでも無い。

お飾りの十傑ってのはあながち間違ってないのかも。


────────────────────────


その日、いつもの様に街を歩いていた。

いつも通る駄菓子屋、少し騒がしい年下の屯する公園。

よく髪を切ってもらう整髪屋…学園への道には色んなものがある。

いろんな物があるって事は、色んなことが起こる。

ひったくり、強盗、挙句には殺人まで起こる事もある。


そんな現場に出会しても、術士は基本的に何もできない。

術を使う事も、犯罪を止める事も出来ない。

それはそう決まっているから。


でも、彼は違った。


あの時、私の中で何かが変わる音がした。


────────────────────────


朝方、人の往来も疎になり、婦人方の談笑満ちるその空間を、切り裂く様に声が響いた。


「ひったくりよ!誰か捕まえて!」


見れば、帽子を目深に被った男が女性の鞄を盗み走っている。

男の足は早く、また女性の着ている服が動きやすい物では無かった為ひったくり犯との距離はみるみる開いていく。


男は安堵していた。

どんなに人に見られようと逃げ切って仕舞えば勝ちだからだ。

恐ろしい術士は手を出せない。

男は、自らの足に相当な自信があった。

学生の頃は俊足と呼ばれ、そういう競技の神ノ国代表にまで選ばれた事があった自らの足に。


そんな中、耳を劈く高音が響いた。


男は堪らず耳を塞ぎ、辺りを見渡す。

拡声器の様な物は一切無く、甲高い声を挙げそうな人間も居ない。

自らの前方に、学生が一人立っているだけ。

それも、特に足が速そうには見えない。


男は意気揚々と駆け出した。

邪魔するものは無いと言わんばかりに。


学生の横を通り過ぎた瞬間、男の意識は闇へと落ちた。


────────────────────────


「ありがとう!お陰で助かったわ〜!」


そう感謝する婦人の顔は、何処か青ざめていた。

それもそうだ、ひったくり犯の次は世にも恐ろしい術士。

それも、街中で術を放つ無法な術士。


正直、側から見ていて面白かった。

婦人側は感謝を述べているのに青ざめて。

彼の方は感謝されているのに申し訳なさそうで。


私はひったくり犯を突き出した後、彼と合流した。


「んふ、鳴渡くんも災難だね」

「………そうっすね」


見られてたのかよ…なんて呟く彼を、この時は面白く思っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ