多々良凛〜捌ノ裏話〜
今回は響視点。
今日は凛が退院する日。
何時も何かと理屈屁理屈つけて罵ってくる奴だが、
今回は素直に祝ってやろう。
「さて」
何からするか何も考えて無かった。
料理…は凛の方が上手いしなぁ。
「あれ…?」
ふと気付く。
俺何もして無いんじゃね?
「(不味い…!)」
このままじゃヒモまっしぐらだ…
何か出来ないと…
「何かプレゼントでも買って…」
駄目だ…財布も握られてる。
八方塞がりだ。
「そもそも何買ったら女性は喜ぶんだ?」
分からん。
『そういう人』なんて母親しか知らんし、
あの人は『色々』可笑しいし。
「釘刺に聞くか?あいつなら色々分かるだろうし」
困ったら親友を頼れ。
これ教訓な。
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そんなこんなで外。
ん?電話があるだろって?
携帯、まぁ所謂スマホだが、凛から
『あんたげーむ?に課金?するでしょ?
お金の無駄だから没収よ!』
というよく分からん理由で取られた。
連絡は?と聞いたら、
『私が作った絡繰があるわ。
それを使って連絡しなさい』
という斜め上の回答をいただきました。
凛以外との連絡はどうするんですかね?
聞けて無いんだけどね。
「確か釘刺の家は…」
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「此処何処だ…?」
道に迷った。
おっかしいな。
「ん?」
人の気配。
紫煙先生との『鬼ごっこ』で鍛えられた洞察力をとくとみるがいい!
「…対象を発見。連行します」
「対象?」
ヒュンッ
「危ねぇ!」
ありゃあ当っちゃいけない。
勘が警報を鳴らす。
「何しやがる!」
「…増援を要請します」
嘘だろ、増えんのかよ。
…こうなりゃヤケだ。
「三十六計逃げるに如かずぅ!」
逃げよう。
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「此処まで来たらもう平気だろ」
肩で息をする。
ちゃんと鍛えよう、そう思った。
「にしても…」
俺は何なんでしょうね。
「此処何処だよ…」
目の前に広がる一面の向日葵。
そして、
「あら?」
麦わら帽子を被った女性。
どことなく凛に似ている。
「あなたが『響くん』ね?」
「!?」
この人いつの間に後ろに!?
「ふふっ、捕まえたわぁ…」
「ぐぅっ…」
この人強えぇ。
「さぁ、頼んだわよ」
「御意」
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「んぁ!?」
「あら、お早いお目覚めね?」
車の中か?暗い。
てか、腕が動かない、縄でぐるぐる巻きだ。
「何処に連れてかれるんですか?」
「私の家よ〜」
…何か緊張感無いなぁ。
「何で連れてかれるんですか?」
「私の旦那様が貴方を呼んでるのよ〜」
旦那様?
「さぁ着いたわよ〜」
「はぁ…」
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…嘘だろ。
其処には、筆の様な字体で
『多々良』
とあった。