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妖蔓延る世界のお話。  作者: 書き手のタコワサ
翠泉美玉ノ物語
109/210

翠泉美玉 其の壱

悉くやりたい事となろうの色々が噛み合わない。


「ふふ〜ん、この辺りは日陰だ、か、ら…あったぁ!鳥兜ぉ!」


野呂山の七合目、ひんやりとした空気が流れ、鬱蒼と木が繁る中、目的の物を発見し、相好を崩す。

なぜ毒草を探しているかは分からないし、分かりたくも無いが。


「…あ〜…ニリンソウも生えてますねぇ」


毒草を見つけて喜んでいるのに、何故毒の無い草を見てうんざりしているのか。


桃色の髪を翻し、彼女はまた毒草探しへ赴く。



「はぁ〜…、妖ってのは節操が無いんですねぇ。折角見逃してあげようと思ったのに…」


自らを叩き潰さんと迫る妖の攻撃を彼女はそう言ってのける。

四足歩行の豚の様な妖が、辺りの植物を食い荒らし、食うものが無くなったのか、こちらに向かって攻撃してくる。


「…あなたで試作品を試させてもらいますよ」


普段の様子とは真逆の、冷たい笑みを浮かべ、刀を抜く。

非道く紫に煌めくソレは、生命の根本たる恐怖を呼び起こす様。

が、すでに生命の範疇を超える妖には、理解できたか出来ずか。


「調合分が勿体ないんですけど、…見た所中妖ですし、これで充分ですね」


彼女が指を鳴らすと、足元の地面から六つの蔓状の植物が顔を出す。

先が少し膨らんでいるその植物は、彼女の言葉に追従する様に、妖の足元に絡みつく。

自らの主な攻撃方を封じられた妖は、なんとか振り払おうと暴れ、辺りを汚していく。


「…対人用、致死率十割の猛毒をぉ、対妖用に魔改造した物です」


彼女の掌の中に収まる、たった二つの瓶。

もし知識のない人間が見れば、“ただの液体”とすら思う程、水の様に透き通った液体は、だが知識を持つ物が一目見れば、それが禁忌と言われる程の物と気づくだろう。


たった一滴地に垂らせば、辺りの命が纏めて失われるであろうその液体を、惜しげもなく妖にぶち撒ける。


「混合薬液…確か百七…ここには私しかいませんし、良いですよね」


ぶつぶつと独り言が空に消えた時、妖に変化が現れ始める。

突然地面を揺らし始めたかと思うと、空に向かい雄叫びを上げる。

空に穴が開くほどの爆音が辺りに響き、空間ごとすらをも揺らし始める。


「…完了。薬合その八。“赤達磨”」


先程の透き通る液体は何処はやら、底広がりの瓶の中には、まるで溶岩の様に赤くグラグラと煮え沸っている様な液体で満たされていた。


「正直大分効率悪いんですけど、…理論上の破壊力は強いぞぉ」



十傑第七席、“翠泉美玉”。彼女の通る後は、草木一本残らない。


──────────────────────────


妖を毒殺…祓った後、私は一人町を歩く。

もう何年も前に“たった一の妖”によって、残骸に変えられた。

今はただ、瓦礫が辺りに散らばるただの街モドキだ。


ただ、実験には好都合なので、有難いと言えば有難いが。


「良いものが手に入りましたぁ〜…まさか完全消滅…祓われる前の妖の破片…!」


あぁ、これを使えばどんな薬が作れるか。

考えれば考える程胸が躍る。

これを使えば、妖を祓う事なく消滅させる事が出来る薬が作れるかもしれない。


瓦礫の散らばる街の中、たった一坪。

地下へと繋がる扉を開け、下へと降る。

石や鉄よりも何倍も丈夫な赤殻蔓を這わせて作った足場。


地下二百町程、下に降ると極秘の実験場が顔を出す。


誰も寄りつかない様な、そもそも気づかないこの場所で。

私は一人、最高の毒…薬を完成させるべく尽力しているのです!


…まぁ?学園の物を知らない連中にはやれ“毒の魔女”とか“薬師という名の人殺し”とか言われてますけど。


「はぁ…新種の植物も滞り無く育ってますし、そろそろここも廃棄…っ!?」


閉じた筈の、地上の扉が音を立てて開いた音がした。

いや確かにこんな所誰も調べないだろうしとか思ってたけどまさかこんなもう直ぐ引越しとか考えてバチが当たった?いやいやそもそもこの街に人がいない事は確認済みだし居たとしても霊力汚染で常人は入れないと考えると絶対同業者じゃん嫌だバレたら学園から追放どころじゃ済まない終わった色々非合法な薬とか作ってるしもうダメだおしまいだ──


かくなる上は…


私が指を鳴らすと、足元から一つの蔓状の植物が顔を出す。

ちなみに妖用に使ったのとは別物だ。

人の捕縛用に改造した植物を術で操り、扉の死角に配置する。


よし、さくせんはかんぺきだ。


──────────────────────────


俺は一人、“とある依頼”を受けて既に妖に破壊された街に来ていた。

本来三人でくる筈だったが、一人は…めんてなんす?だったかで、もう一人は釘の調達という結構普段にも影響ある物のせいで今回はひとりだ。

寂しくはない。…ないったらない。


「…正直こういうのなら俺より向いてる奴たっぷりいるだろ…」


虚空に愚痴をこぼし、街を歩く。

辺りは瓦礫に塗れてて、妖の気配は愚か、人の気配もない。

けど、“音”は別。


「…どっかから水の流れる音が聞こえてんだよな〜」


この街は破壊されて結構経つため、既に水道や電気なんかは止まっている。

つまり、この街でそんな音がするって事は、人か妖がいるって事。


「…怪しさ満点だな」


そして目の前には、地下へと繋がる扉。

誰かが油でも定期的に刺しているのか、すんなりと開く。

扉の奥には闇が広がっており、底が見えない。


今思えば、何故ここで俺は降りたのか。


──────────────────────────


「はぁっ、はぁっ」

「──」


ひとを、それもこうはいにきずをおわせてしまった。

た、確かに薬物は見られたし色々すれば麻薬みたいになる奴も見られた…あれ?私が悪いな?


「…ここは廃棄して、嫌でもいつこの子がばらすか分からないし…」


目の前に転がる下級生の頭には、私秘蔵の植物が巻き付いており、側から見たらそういう…コホン!

よくないよくない、髪が桜色だからって頭の中まで桜になる必要は無いわ。


こういう時は、誰かに助けを求め…無理ですね。こんなとこじゃ。


そうだわ!この子に言わせないため、口止めしておけば良いのよ!

そういう時は、…──


あった!


その名も〜?“試薬品第百三十五号”〜!


この薬は〜、趣向を変えた拷問用のお薬で〜、痛みを感じた時、脳には痛みを和らげようと脳内麻薬が出るんですよ〜。

その量をとても増やすってのがこの薬なんですよ〜。


この薬を打って、定期的に脅せば、この子はここの事を誰にも言わない!

後は二重術方陣を使って普段の術を阻害しない様に…


後は薬の依存性を使ってこの薬にボロッボロに依存させてやりますよ〜。


…まぁ、後薬品を試す用に……

──────────────────────────


かくして、私と後輩の奇妙な邂逅は終わった。

本来稲月鈴の後に投稿するつもりが投稿できないと怒られたので最新部になりました。

見ずらいのはなろうのせいです。

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