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妖蔓延る世界のお話。  作者: 書き手のタコワサ
妖蔓延る世界のお話。対校戦編
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実験 良好

「…駄目だなァ、こうも持たねぇか〜」


 各学長の戦闘の最中、それを俯瞰し、男は呟く。

身の丈の倍ほどの大斧を携え、中折れ帽を被ったまるで少年の様な男。

昏い瞳を輝かせ、赤と黒の入り混じる髪を棚引かせる。


「…未だ実験段階とはいえよ、こんなに脆いと実戦投入出来るか心配になるなァ…」


男は右手を握りしめ、悔しさを露わにする。

その目線の先には、首を切られ、塵となり、叩き潰された六つの死体。


ため息を吐き、男は呟く。


「…だけどよ、収穫はあったぞォ?」


男は笑みを浮かべ、“実験結果”に舌鼓を打つ。

とても満足そうに、親に褒められた子供の様に、男は眼を細める。


「…外骨格はありだな。秋元の足を受けきれるなら導入しない手は無ぇ」


空中に文字を書く様に、男は指を這わせる。


「…絶縁体は無しに近ぇな。美戸みてぇなやつはそこまで居ないが、用心に越した事は無ぇ」


不機嫌そうに、されど表情の奥には嬉しさが垣間見える。

白い歯を剥き、片方の口角を釣り上げる。


「…体全てを堅くするのも推奨されねぇな。かかる時間と労力に合わねぇな。鉄くらい堅いのにそれを叩き潰されちゃ世話ねぇな」


頭を掻きむしり、男は一人改善点を口で挙げていく。

その口からは時折、文句の様なものも溢れる。


「…良し。纏まったな」


「帰るぞー!真似ー!」


──────────────────────────


遠くから響く、男の声。

いや、その声は男というには若い様な、少年を思わせる様な若い声だった。


一拍を置き、目の前の、“蛇の頭領”の体が徐々に変わる。

パキパキ、メキメキと音を立て、一人の“男”の姿が変わる。


「aあ、モう少四、遊b多カっ多、デスね?」


余りにも、歪な声。

目の前の何かは、舌が何枚もある様な、“人ならざる物”が人の似姿を真似た様な。


それは、突然の思考だった。


踵を地に打ち付け、飛び上がる。

足を前方に振り上げ、思い切り叩きつける。

“人なら”、骨すらも砕くと自負する僕の踵落とし。


“何か堅いもの”に当たった音が辺りに響き、“ソレ”はこちらを見やる。


「あは、i体、いtaイ、痛い。…痛い、ですね」


「!」


まるで三日月と見紛う眼光が、笑みが、こちらを射抜く。

重力に逆らう様に、髪は垂れず、血は空で止まる。


「下がれ!!」


その声とほぼ同時に、自分の体が後ろに“跳ねる”。

危機を察知した自前の勘か、はたまた声のお陰か。

幸い、傷を負う事はなかった。


ぶわりと、汗が噴き出る。

それは安堵か、それともこれから起こるであろう戦闘への緊張の表れか。


ふと、先程迄自分が立っていた場所を見る。

“何かで抉った”ような、半円状に抉れた地面は、“ソレ”が放った一撃の重さ、鋭さをありありと物語る。


「arえ、殺したと思いmaシたがね?」

「…残念、こう見えても僕はしぶといんだよ」

「…まaいiです!」


“ソレ”は、両手を広げ、満面の笑みで続ける。


「目的の者は手に入りましたしね」


「さ、撤退と行きましょー!」


先程の様子とは打って変わり、明朗に楽しそうに話す“ソレ”。

冷や汗が止まらぬこちらを差し置き、“ソレ”は支度を整えていく。


「…帰るって?」

「ええ!帰ります!」


歪な満面の笑みでそう言う“ソレ”は、やはり人ではなく、精々人に近い。が及第点だろう。

まるで“作り物の”様な金髪を翻し、“ソレ”は続ける。

まるで子供の様に、お気に入りの玩具をやっと買ってもらえた時の様に、無邪気で、どこか恐ろしい笑みを崩さない。


「…私たちの目的は達成されました。“彼”とも会い、その血族である事は確認が取れました。故に、我々の目的は達成されました」

「…解せないね。その“彼”ってのも分からないけど、だったら僕らを襲う理由も、ましてや蛇の頭領に化ける理由もないだろう?」


未だ警戒を怠らず、秋元は問う。

目の前の何かもわからぬ、生物かも怪しいナニカに。


「…いえ、まだ話すべきではありませんね」


「それに、頭は来ませんよ。当たり前じゃ無いですか。この様な所に、あのお方は態々足を運びませんよ」


先程まで、優しげな雰囲気だったソレは、途端に鋭い殺気を放つ。

まるで当然と言わんばかりに、自らが偽物である事を寧ろ誇る様に。


「…なら何故、蛇の頭に化けてここに来たんだい?」

「おや?余り聞きすぎてもつまらないでしょう?結果は神のみぞしる…なんて」


「…何喋ってやがる。早く帰るぞ」


背に襲う、途轍もない殺気。

足音も、気配すらも先程迄は微塵も感じられず、突然背後に現れた、塊の様な殺気。


「…叉白が早く帰ってこいと。実験結果も良好だった」


まるで少年の様な子が、そこには立っていた。

背に似合わぬ大斧を背負い、昏い瞳を携えて。


──────────────────────────


男は後悔していた。

あの男を看取った事実を。


男は後悔していた。

あの男をみすみす見逃したことを。


おとこはこうかいしていた。

あのひ、じぶんがおかしたあやまちに。

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