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妖蔓延る世界のお話。  作者: 書き手のタコワサ
妖蔓延る世界のお話。対校戦編
102/209

蛇対溟楽、秋元。

「貴方は如何です?秋元」

叉白は、ニコリと微笑みながら手を伸ばす。


「…断ったら?」

「その時はその時です。既に十分過ぎるほど戦力は整っていますが、盤石を敷くに越したことは無いでしょう?」


まるで、僕が仲間に加わるのが当然、みたいな口ぶりだと思った。

そもそも、この叉白って子は思考からして少し僕とズレがある。

それは、生物学的なズレもあるけど、何より“根本”から何かが違う、という物を感じた。


「…一体、君が何万年生きたのかは分からないけど、悪いけど僕は君の味方にはなれないよ」

「…………残念です」


心底残念そうに、叉白は俯く。


ああ、分かった。この子の歪な所が。

この子はまるで、録画した物を繰り返している様に、“それ”に対して、対応した“一つの”反応しかしていない。


「…では、最終手段に持っていきましょう」


叉白が手を振り上げると共に、空間に穴が空く。

三人ほどの、恐らく蛇の構成員と思わしき人物がその穴から歩き出でる。


「切嗣、咫烏、凰涙。時間を稼ぎなさい」

「「「御意」」」


其々が、持つ武器は、僕が自前の刀、楠さんが所謂青龍刀を腰に携えている。

お相手さんは、ノッポくんが鎖鎌、僕と同じくらいの子がその身に合わぬ大剣を背負い、女性が、何かを拳に嵌めている。


「…あ〜、やりたく無いなぁ」

「四の五の言わんと準備せぇ!向こうは本気じゃぞ!」


…遠くの方で、弾ける音が木霊する。

それに、天へと昇る紫色の雷。


「…やるか」


褌締め直さきゃね。


──────────────────────────


前方、十二時。鎖鎌が飛んでくる。

それを刀で弾き、鎖の伸びる方に肉薄する。

頭上を掠める鉄球に心臓が早鐘を鳴らすが、止まるわけにはいかない。


「っ!」


逆袈裟一閃。

体を捻り、飛んでくる術を交わし、鎖鎌使いの首を飛ばす。

飛んできた術は八時の方だった。

眼球を忙しなく動かし、敵を捜す。


ゴト…、という音を皮切りに、恐らく標的とは別の子がこちらに突貫する。

大剣を地に滑らせながら、思い切り振り上げる。

体を九十度動かして躱し、離れる。


「…やっぱり、ね」


大剣に彫られた、術の印。

あのままあの場に立っていれば恐らく僕の上半身は吹き飛んでいた。

印からして恐らく炎だろうか?


大剣を肩に担ぎ、大地を蹴り、こちらに向かってくる。

袈裟、振り抜きざまの逆袈裟、その後に横薙ぎ、途中、突きや振り下ろし。


どうにかして好機を捜す。

微塵の隙も無く振り抜かれる大剣は、擦れば御の字、当たれば即死。

まるで嵐の中にいる様な、風圧すらも台風に及ぶと感じさせる程、威圧的な雰囲気を放つ。


「…っし!危ないねぇ!」


横薙ぎに振り抜かれた大剣が、地に深く刺さる。

その瞬間、大剣が刺さった地が爆ぜる。


「うぉっ!」


幾つもの土片が体に降りかかる。

目を開けた時、大剣使いはそこには居なかった。


周りを飛び回る、何かの音。

状況的証拠からして、あの大剣使いである事は想像に難く無い。

たが、大剣に振られていた様な奴が、あんなに重いであろう大剣を背負い、高速で移動できるか?


「楠さん!そっちに大剣が行ったかもしれない!」


三十米ほどの距離の先、鉄と鉄がぶつかる音が響く。

恐らく大剣使いは楠さんの方に切り替えた。

ならば、こっちに居るのは…!


──────────────────────────


「…蛇よ、お主らは臆病者の集まりじゃなぁ?」


青龍刀を未だ抜かず、儂は立つ。

目の前にて、儂の相手をしているのは先程呼ばれた女。

腕には何か鉄の板を付けている。


その様な木端で対応出来ると思われるとは…儂を舐めておるな。

女の癖に、とは言わん。

戦場に、男も女も何も無いじゃろう。


「…いいじゃろう。一撃、当ててみせよ」


ワシの言葉を聞き、女が拳を儂めがけて振り抜く。

が、その拳は儂には届かず、目の前で、女の拳が止まる。

当然じゃ、何の対策も無く当たるほど、儂は優しく無いのじゃよ。


「…なんじゃ?その拳は。当たる気がせんのう」


ワシの目の前で止まった拳に触ってみせる。

恐らく、何かの術が掛けられ、触れるだけで体が燃えるとかの類じゃろう。


女は未だ、“何故か”動けなくなった自分の体を動かそうと身動ぎを繰り返す。

原理は簡単で、屈折率を弄った木を相手に巻き付けているだけなのじゃが、これが意外に気付かれにくい。


周りの木々が集まり、龍を形どる。

面倒臭い。食ろうてしまおうと術を使った時──


女が木を砕き、大剣の一振りが、龍を斬り殺す。

大剣の男が、秋元の居る方向を指し、女がその方向に消えていく。


「!充!女が其方に行った!気をつけい!」


忠告を飛ばし、目の前の更なる脅威に目を向け直す。

大剣を担ぎ、こちらを睨むその男は、地が砕ける程の踏み込みで大剣を縦に振るう。


儂の青龍刀は鋭いのよ。


抜いた青龍刀は、大剣“ごと”相手を斬り、その男の首を飛ばす。

身体を廻し、敵の背から真二つに斬り伏せる。


頭蓋を踏み砕き、二度と生き返らぬ様。

前殺した蛇の連中は、首を刎ねた程度では死ななかった。


凡そ二十五米ほどの距離で、秋元が戦うのが分かる。


「…儂の術も、衰えた物じゃ……」


斯様な連中に砕かれ、斬られるなど、百年前の儂は無かった。

今一度、術を鍛え直した方がいいのかもしれん。

ワシの勘が当たっておれば、恐らく後二年ほどであいつらは戦争を仕掛けてくるはず。

その二年の間に、出来ることを済ませておかなければ。

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