多々良凛〜捌〜
「はい、お大事にして下さいね〜」
「はい…」
無事(?)に退院し、今日から学園に通える。
「(やっとあの地獄から抜けられた…)」
座学が終わり、座学。エンドレス座学。
「(でも…これで…やっと…響と話せる!)」
病室では静かに、という事や、
響の訓練時間などもありほぼ全く会えなかった。
「響どうしてっかな?」
ちゃんとご飯は食べているのだろうか。
寂しくて泣いては居ないだろうか。
…一番の心配は女に誑かされてないかなんだけど。
「(まぁ、杞憂か、響モテない筈だし)」
心配だ…。
「(そういや冷蔵庫の中何かあったっけ?)」
買い物位はしてってあげよう。
響結構ズボラだし。
「何買ってこうかな〜」
────────────────────────
買い物を終え帰路(響の家への道)に着く。
「ん?」
足音が聞こえる。
「何の様?」
「…お祖父様の命です。
速やかに御帰宅願います」
「聞く道理は?」
「命は絶対です」
「聞き方が悪かった?従う意味があるの?」
「…お祖父様の命は絶対です、従わないのなら」
「従わないのなら?」
「力尽くでも連れて行きます」
道端から歌舞伎に見られる黒子衣装に身を包んだ奴らが出てくる。
命は絶対?家の奴らか。
これだから家柄は嫌いだ。
「(抵抗できる様に構えときましょ)」
隠密の一人が呟く。
「申し訳ありません、『お嬢様』」
「は?」
瞬間、そいつの頭に穴が開く。
「えっ」
「申し訳ございません、『凛様』」
嫌な予感がする。
恐る恐る振り返る。
「げっ」
「人を見てげっ、とは酷いですね」
「いや〜その〜」
「ですが、お祖父様がお呼びなのは事実です。
其れも、『とても重要』と聞いております」
「知ったこっちゃ無いんだけど?」
「えぇ、存じております。
ですが」
隠密のリーダーが囁く。
「『ご学友』がどうなっても私は知りませんよ」
「!?」
「何でもお祖父様が『お話』かあると言っておりました」
お話?
「響に何かしたら『殺す』わよ」
「ええ、ですから彼が何かされる前に来ていただける
と此方としても助かります」
「分かったわ」
「ほら、貴方達も床に寝て無いで立ちなさい」
「うっ…うぅ」
「では『凛様』車は用意してあります」
用意周到ねコイツ…
「そうでもなければこの職に着けませんからね」
「あんた『それ』あんまりやらない方がいいわよ」
「おや、嫌でしたか?」
「プライバシーって物があるでしょうが」
「奥様にも同じ事を言われましたよ」
「…早く行くわよ」
「かしこまりました」
あぁ嫌だ。
あの『実家』に行くなんて。