第02稿07話~トキトー領、到着1~
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森の入り口、なぎ倒された木々を見ている形容しがたき何か。
「流石にこれ以上の深追いは気付かれるか。トキトー領はアイツの領域。アイツの手駒を落したかったが」
そう呟く何かは少しづつ人間の身体に近く変形していく。金髪に紫の瞳。その顔は色が違うがパーツは双子の王子達によく似ていた。
「海……この世界には、まだクトゥルフは呼び出されていない。深きもの達はアイツを味方に引き入れたか。アイツの匂いを纏ったとても濃い人間。必ず殺して来いとあの方に頼まれたのに……む」
その人物はこちらを向き近くに歩いて来た。
「ふん、趣味の悪い覗き魔が……気付かないと思ったか」
ソレは朱殷色の丸い玉を持ち上げると手のひらに乗せ……握りつぶした
__遊び人|仮拠点B
んんんんんん、腹減った……あれ?朝?
凄いお腹が減っているんだが。
『昨日の昼から何も食ってないからな回復薬くらいか?』
何があったんだ……昨日、出発してからの記憶が曖昧だ。
『聖女がモンクだった』
「はぁ?」
最近、心の中だけでやり取りしてたけど思わず声に出してしまった。
『聖女が殴りプリだった』
あのPT脳筋率が高いって事でよろしいか?
『その認識で良い』
何か食おう。干し肉を魔法の鞄から取り出して齧る。あぁ、美味いな。
フィオは料理のスキルを持ってそうだな。
昨日はあれか、装甲馬車から落ちたんだったな。
『軽く言ってるけど行動不能時間が長い』
しょうがない。元々、回避職業で攻撃当たったら紙だしな。
あぁ、思い出した。森を抜けたらトキトー領に入るんだったな。
あの馬車で領内を走るのは止めて欲しいが。
『あんなので街中は走れないだろ。昨日の森の木が建物に代わると思う』
断固阻止だ。
さて、ちょっと腹満たしたら眠くなったな。大分、空が白けて来ているが、もうひと眠りしよう。
『寝るのか。まぁスタミナ回復はしといた方が良いな。また落されないとも限らない』
木材殴打はもうごめんだ。どっかの島で丸太は持ったかとか言って戦う民族でもあるまいし。
『丸太はお手軽な最強武器だぞ。人間だと適正筋力基本的に届かなくて持てないけどな』
そう言ってベッドに戻る。
「トキトー殿、まだ寝て居るでござるか?」
そう声をかけられ、意識が浮かんでいく。
「あー、カタナか?」
「おはようでござる。森を抜けたらトキトー領に着くでござるな?」
「それなんだが。あの馬車で領内走られるヤバいと思わないか?」
「……森に入る時に展開していた障壁を使わなければ大丈夫なのではないでござるか?森までは使ってなかったでござろう」
「あぁ、それもそうか」
「さて、朝に来たのは食料を取りに来たでござるよ」
「そうか、なら行こうか」
「拙者がエルメ殿と作るからトキトー殿はまだ寝てても良いでござるよ?昨日ので疲労が溜まってるでござろう」
「いや、腹も減ったし俺も一緒につまみ食い。じゃなかった。作る」
「拙者はつまみ食いする予定はござらんが」
「分かってる分かってる」
厨房に行くとエルメが待っていた。
「トキトー様も来たのですね」
「昨日の夕飯も食べてないから腹が減ってな」
「そうなのですね。では早く作ってしまいますか」
食材を取り出す傍からエルメがささっと下処理をしていく。
何出すか分かっている様だ。
「分かってませんよ?もう、作るのを決めていただけなので」
「心が読めるのか?」
「顔に出ていました」
「そうか」
「食材出したら、そこに座ってて下さい。1人分先に作ってしまいますね」
「ありがとう」
「おっと、居たっすね。部屋に居なかったから探してたっすよ」
「ノーライダーだったか?何の用だ?」
「ライダーっす!次の出発はお前は上じゃなく中に居る事。また落っこちられたら困るっすから」
「アレ狙ってやったんじゃないのか?」
「忍者も居るし落ちるとは思ってなかったっす。反省はする訳ないっす。だってアレは仕事っすから」
どっちだ。狙ってやったってことか?
『要注意だな』
「そもそも、木が直撃ってコントっすかぁ?笑っちゃうっすよ」
「ああするならもうちょっと早く言ってほしかった。それより街まで、なぎ倒されると困るんだが」
「大丈夫っすよ。ドリルモードにならなきゃ、なぎ倒さないっすから。上に木が撥ねない様に計算されてたはずなんすけどね。欠陥があったみたいっす」
「そうか。まぁ分かった。中に乗って良いんだな?」
「そうっす。頼むっすよ。馬車の中で落とされることは無いっすよね……?」
「なんでフラグを建てようとするんだ……」
「冗談っすよ」
「まぁ、上から見たがうちの領地まで森を抜けたら直ぐなんだろう?」
「そうっすね。ギルドから連絡行ってるんで迎えがある筈っすよ。コレの道作り自体は前々からの政策でカルク王子とカルラ王女のお二人が進めてたっすからね」
「へぇ、そうなのか」
「俺は戦闘だけじゃなく汎用性も高いっすから」
「器用貧乏?」
「酷いっす。どれも一流っすよ!兎に角、そう言う事っすからちゃんと中に居るんすよ!」
はい、始まりました07話。何故か知らないけど08話を書いてると思っていました。
補足です。朱殷色とは時間のたった血の様な暗い朱色です。読みは『しゅあん』
察しの良い方ですともう答えみたいなものですが、あくまでも色の説明です。
では、続きをどうぞお楽しみに。